年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)には現行の基本ポートフォリオを維持したままでも約12兆3000億円の国債を追加購入できる余地があると、仏銀のソシエテ・ジェネラルは試算した。日本銀行が国債買い入れを減額する中、市場では政府債務の新たな買い手への関心が高まっている。

GPIFの看板

ソシエテでストラテジストを務めるスティーブン・スプラット氏らはリポートで、GPIFが国内債券の保有比率を3月末時点の26.9%から現行の許容レンジ上限まで引き上げた場合、約12兆3000億円の国債の買い需要が生じると分析した。ロイター通信は13日、日本政府はGPIFの基本ポートフォリオを変更する計画はない一方、既存の運用枠組みの中で国内投資を促す方策を検討していると、関係者の話として報じた。

潜在的な買い需要に市場の関心が高まっているのは、日銀が国債買い入れを段階的に減額する半面、高市政権の成長戦略などで国債発行の増加が見込まれ、市場で新たな買い手を巡る議論が強まっているからだ。

片山さつき財務相は先週、GPIFを含む国内の年金基金に対し、日本の金融資産への投資拡大を後押しする考えを表明。市場では、政府が機関投資家の資金を国内市場へ呼び戻す狙いがあるとの見方が広がった。 片山氏は14日にも、GPIFの運用について「必要があれば修正が行われる」との認識を示した。

ソシエテは、実際に債券市場や為替市場へ与える影響はポートフォリオ調整の規模やペース次第だとも指摘。現行ルールの範囲内で実施できるため、理論上はいつでも調整を始めることは可能だとみている。

ただ、実際に大規模な資産配分の変更が短期間で実現するとの見方は限定的だ。GPIFは2025年3月に実施した最新の基本ポートフォリオ見直しで、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式をそれぞれ25%とする配分を維持した。各資産の乖離(かいり)許容幅は外国債券がプラス・マイナス5%、それ以外の資産はプラス・マイナス6%となっている。

ドイツ銀行は、より広範な国内資産シフトを前提とした場合には一段と大きな資金流入余地があるとの見方を示す。ティム・ベーカー氏は、GPIFと他の公的年金基金が国内の債券と株式の保有比率を許容レンジ上限まで引き上げれば、追加需要はそれぞれ900億ドル(14兆6000億円相当)超、1600億ドル超になると試算した。

生命保険会社や個人投資家も含めた国内回帰が進めば、資金再配分は最大4400億ドルと国内総生産(GDP)の約10%に達する可能性があるとベーカー氏はみる。もっとも、同行では、こうした見方について「今後数年間における上限シナリオ」と位置付けている。

一方、英銀バークレイズはGPIFの基本ポートフォリオ自体を変更する別のシナリオを試算している。国内債券の目標配分を25%から30%へ引き上げた場合、約15兆円の国債の追加購入につながると見積もった。

市場の関心は、GPIFに買い増し余地があるかどうかではなく、その余地を実際に活用するのか、買い入れがどの程度の期間で進むのかに移りつつある。理論上の買い余地が実際の需給改善につながるかどうかが次の焦点となる。

(9段落にバークレイズの試算を追記します)

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