そして陛下本人が言及「“両親の思い”受け継いで」

日程終盤、幸いにも記者が陛下に直接話を聞く機会に恵まれた。私はこの場を逃したらもう聞けないと思い、次のように尋ねた。
ーー陛下はオランダで戦没者記念碑に黙とうを捧げられました。(中略)あの時どのようなお気持ちで碑の前に立たれていたんでしょうか。
陛下は少し間を置いて言葉を探したあと、こう述べられた。

天皇陛下
「オランダとの間にどのようなことがあったか。過去の歴史は決して忘れるべきではないと思います。過去の歴史を直視して、過去の歴史から謙虚に学ぶ姿勢が私は非常に大切だと思いますし、そのようなことを行った上で、未来の良い関係が築けていく。あの慰霊碑の前に立った時、私たちは本当に心を込めて亡くなった方々への気持ちを表した次第です」

また、拝礼の姿は平成の上皇ご夫妻の時と重なるものだった。それを伝え、天皇の立場での思いを聞くと、次のように答えられた。
天皇陛下
「かつて上皇上皇后両陛下はベアトリクス女王陛下から色々なご理解をいただき、ご一緒に“将来に向けての融和”について大変よくお考えになって、色んな行動をされたんだと思います。そのことは私も両親から色々聞いております。両親の思いを受け継ぐような形で、心を込めて拝礼をした次第であります」
上皇さまの気持ちを継ぐ立場を明確にして、拝礼を振り返られた。側近によると、陛下は訪問に向けてオランダとの歴史について改めて熱心に学び、準備を重ねられたという。昭和、平成から続く「天皇による向き合い」は、“戦後生まれ”の陛下にも受け継がれている。

今回の陛下のなさりようや、歴史への向き合いをどう捉えるか。もちろん日本人記者の私が単純に美談とすることはできないし、いまだ残る禍根や否定的な声にも耳を傾けるべきだ。一方で、驚くほどに多くの遺族やオランダ国民、現地報道が好意的だったこともまた事実。現場では、過去の天皇と今の陛下とを切り分ける考えが目立った。かつてと空気感が変わったのはこうした背景もあるのかもしれない。
「過去は忘れない」「でも未来に向かって関係を築いていく」この2つの要素は、陛下の発言からも、元収容者・遺族の言葉からも、意識されていたように思う。苦難の歴史を背負いながらそれでも前に進んでいく。この真摯な姿勢こそが、日本とオランダの強い関係の礎になっているのだと感じた。
(TBSテレビ報道局・宮内庁担当 岩永優樹)