米マイクロソフトのゲーム部門Xboxはこの約10年間で約800億ドル(約13兆円)を投じ、「コール・オブ・デューティ(Call of Duty=CoD)」や「スカイリム」などの人気ゲームを擁する企業を相次いで買収してきた。動画配信サービス「ネットフリックス」のように、多数のゲームを定額で遊べるサブスクリプション(定額制)サービスに利用者を呼び込む狙いだった。

しかしマイクロソフトは6日、この戦略が奏功しなかったことを認めた。事業の立て直しに向け、Xboxは全社員の約2割に当たる3200人を削減するほか、傘下の5つのゲームスタジオを手放す方針を明らかにした。

ソニーグループの「プレイステーション(PS)」や任天堂の「スイッチ」に後れを取る家庭用ゲーム機市場で巻き返しを目指した結果、過大な投資に陥った。スタジオや人員のほか、利用者が遊ばないゲームまで抱え込み、組織は肥大化した。

Xboxのアシャ・シャルマ新最高経営責任者(CEO)は社員向け文書で、テレビゲーム事業は「健全な状態ではない」と指摘した。中核戦略への集中を欠き、本来の方向性を見失っていたと認め、「Xbox史上最も深刻なハードウエア危機」に直面しているとの認識を示した。

Xboxのアシャ・シャルマCEO

Xboxが2017年にサブスクリプションサービス「Game Pass(ゲームパス)」を始めた際、経営陣は26年6月期までの加入者数目標を7700万人としていた。これは、マイクロソフトによる23年のアクティビジョン・ブリザード買収を巡る訴訟で公表された資料に基づく。

事情に詳しい関係者によると、現在の加入者数は約3000万人にとどまる。24年にマイクロソフトが最後に公表した数字より400万人少ないという。加入者数については米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。

元社員2人によると、社内ではGame Passの加入者数が頭打ちになったのではないかとの懸念が広がっていた。その後、Game Passが昨年10月に料金を50%引き上げると発表すると、数百万人が解約した。

複数の関係者によると、Game Passには構造的な課題があった。消費者は数千本の映画・ドラマを配信するネットフリックスには毎月料金を支払うことに抵抗が少ない一方、ゲームでは少数のお気に入りで繰り返し遊ぶ傾向がある。

市場調査会社サカーナの調査では、米国のゲーム利用者の大半は年間購入本数が2本以下で、市場全体の約3分の1は年間1本もゲームを購入していない。

旧経営陣

シャルマ氏はインスタカートやメタ・プラットフォームズを経て、今年2月にXboxのCEOに就任した。消費者向け事業の経験を評価したマイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、家庭用ゲーム機市場で大きく水をあけられたXboxの再建を託した。

前任のフィル・スペンサー氏は長年Xboxを率いた後、Xbox部門プレジデントだったサラ・ボンド氏とともに退社した。ボンド氏は年間10億ドルを投じて他社製ゲームをGame Passに取り込む戦略を主導していた。

Xbox経営陣は、当時月額20ドルだった「Game Pass Ultimate」が利用者を自社のコンテンツ基盤へ引き込み、最終的に売り上げ拡大につながると期待した。もっとも、Game Pass Ultimateの料金は昨年10月に30ドルへ引き上げられたが、今年4月には23ドルへ引き下げられている。

Xboxを10年以上率いたスペンサー氏は、自社の家庭用ゲーム機だけでなく、ゲーム会社の買収を通じて、パソコンやスマートフォン向け市場にも事業を広げた。

21年には「フォールアウト」や「ジ・エルダー・スクロールズ」を展開するゼニマックス・メディアを75億ドルで、23年にはCoDや「キャンディークラッシュ」を手がけるアクティビジョン・ブリザードを690億ドルで買収した。

Game Pass加入者は、これらのスタジオの新作を発売初日から追加料金なしで遊べるようになった。

ただ、人気が高く、開発費も巨額の作品を発売初日からGame Passで提供すれば、作品の価値を損ない、高価格の単体販売版の売り上げを奪いかねないと複数の社員が警告した。5人の元社員によると、この方針は社内でも議論を呼んだ。

Game Passは当初、埋もれていた旧作ゲームを新たな利用者に届けることが目的だった。人気ゲームを割安に提供することを想定したものではなかった。

例えばCoDはGame Passに加わる前は70ドルで販売されていたが、利用者はその半額以下でCoDを含む数百本のゲームを遊べるようになった。

事情に詳しい関係者が昨年、ブルームバーグに語ったところによると、Xboxは24年にCoDのXbox版とパソコン版の売り上げで3億ドル超を失った。一方、同年の「Call of Duty: Black Ops 6」販売の82%はPS版だった。

関係者によると、アクティビジョン買収が発表から約2年後に完了した時点で、Game Passはすでに加入者獲得に苦戦していたという。

シャルマ氏は今年2月に示した再建方針で、新作CoDを発売初日からGame Passで提供する方針をやめると表明した。

ゲーム機事業に重点

新たな経営陣には、「マインクラフト」を開発するMojangの元トップ、ヘレン・チアン氏や、アジュールAIの元副社長スコット・バン・ブリート氏、メタバース研究者のマシュー・ボール氏らが加わり、Xboxのゲーム機事業に再び重点を置く方針だ。

大規模なオンライン対戦ゲームは引き続き主要プラットフォームで提供する一方、自社の有力タイトルについてXbox専用とする作品を増やし、ゲーム機の販売につなげる。

シャルマ氏は6月のブルームバーグとのインタビューで、「Game Passは8カ月にわたる下降局面を立て直した」と説明し、加入者数は「再び増加に転じ」、契約継続率も改善したと述べた。

7月6日には新たな目標として、複数のプラットフォームで毎日10億人超のゲーム利用者にサービスを届けることを掲げた。

原題:Behind Xbox’s Big Layoffs, a Streaming Strategy That Failed(抜粋)

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