(ブルームバーグ):トランプ米大統領と側近らは、中央銀行である連邦準備制度の体制見直しに向けた動きを再び強めている。連邦最高裁が今週、政権側の申し立てを退け、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事の即時解任を差し止める判断を下したことを受けた形だ。
事情に詳しい複数の関係者によると、政権幹部や政権に近いトランプ氏の盟友は、現職のFRB理事を解任し、大統領自身が指名する人物をより多く送り込めるようにする方法を積極的に模索している。
最高裁が当面はクック理事の職務継続を認めた後も、トランプ政権は引き続き同理事の解任を目指しているほか、FRB議長としての任期満了後も理事としてとどまっているパウエル氏も、同様に解任のターゲットとなっていると関係者は匿名で述べた。
最高裁の判断は、ホワイトハウスからの連邦準備制度の独立性をあらためて確認する内容となった。だが、FRBウオッチャーの一部は、判断内容が限定的だった点を指摘し、将来的な政治的圧力から連邦準備制度を完全に守るものではないと警告している。
事情に詳しい関係者によれば、トランプ氏に近い関係者は今回の最高裁判断について、クック理事の解任を実現するための手続き上の道筋を示したものと受け止め、解任に向けた取り組みを強化している。
トランプ氏は2日、経済専門局CNBCのインタビューで、最高裁の判断は本案ではなく手続きに基づくものだったと述べ、政権としてクック理事を解任する手続きに着手し、「完璧な手続きと完璧な手順で進める」と話した。
事情に詳しい関係者の話では、トランプ政権は、アトランタ連銀の総裁ポストの空席についても、連邦準備制度への影響力を強める機会と捉え、ベッセント財務長官は自身の人脈を活用して候補者の選定に関与しようとしている。
関係者によると、トランプ政権の経済政策チームは、アトランタ連銀が経済成長などに関する注目度の高い分析を公表していることから、同連銀の総裁職を重要なポストと位置付けている。
アトランタ連銀総裁は、2027年には連邦公開市場委員会(FOMC)で金利決定の投票権も持つ。
トランプ氏は昨年の政権2期目発足後、連邦準備制度への批判を一段と強め、パウエル前FRB議長が十分なペースで利下げしていないとして繰り返し非難してきた。
トランプ氏はパウエル氏を解任したい考えを公然と表明し、自身の経済政策の考え方に近い後任を選ぶ意向を明確にしていた。5月に就任したウォーシュFRB議長は、トランプ氏による指名に先立ち、政策金利は一段と低い水準であるべきだとする大統領の見方に同調する姿勢を示していた。
しかし、インフレ圧力が再び強まる中、連邦準備制度が今年利下げに踏み切る可能性は後退しつつある。6月に公表された金融当局者の金利予測分布図(ドット・プロット)によると、当局者のおよそ半数は年内利上げを実施する必要が生じる可能性があると見込んでいる。地区連銀総裁の何人かも、インフレ見通しを特に懸念している。
ホワイトハウスのデサイ報道官は、この記事で取り上げられた個別の内容について直接のコメントは避けた。
デサイ氏は「トランプ大統領と政権当局者は一貫して同じことを述べている。誰もがウォーシュ議長を信頼しており、エネルギー市場の一時的な混乱はあるものの、トランプ政権の供給力強化策はインフレを抑制し、利下げに向けた環境を整えている」と述べた。財務省にコメントを要請したものの、返答は得られなかった。
パウエル氏留任
トランプ氏は、パウエル氏が議長任期満了後も理事としてとどまっていることに強い不満を抱いている。大統領に近い複数の関係者が明らかにした。
関係者の説明では、パウエル氏が5月31日、連邦準備制度の運営を評価され、ボストンのジョン・F・ケネディ大統領図書館で「勇気ある人物賞」を受賞した際、「金融政策の決定を政治的圧力から切り離す」ことを議会が賢明に選択したと述べたことに、トランプ氏は特に憤りを感じていた。
ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は1日、FOXビジネスの番組で、「ジェイ・パウエル氏がとどまっていることを懸念している」とコメント。「連邦準備制度には愛国心からではなく、トランプ大統領に対抗したいという理由で投票しようとしている人が多数いる。私たちはその動向を注視していく必要がある」と発言した。
歴代FRB議長は退任時に理事職も離れるのが通例だが、パウエル氏は28年1月末まで任期が残る理事職にとどまっている。パウエル氏は、理事として残る間は目立った活動を控える考えを示す一方、連邦準備制度に対する政権の法的圧力を留任の決断の理由に挙げた。
司法省は先に、首都ワシントンのFRB本部改修工事費用が当初見込みを大幅に上回る25億ドル(約4040億円)規模に膨らんだことを巡り、パウエル氏に対する刑事捜査に踏み切った。
パウエル氏はこの捜査について、連邦準備制度がトランプ氏の意向通りに金利を設定することを拒んだ結果だとの認識を示した。改修プロジェクトに関するFRB監察総監の報告書は、7月中に公表される見通しだ。
一方、ワシントンの連邦地検のピロ検事正は4月、この捜査を打ち切ると表明したものの、監察総監の調査結果を精査する考えも示し、捜査が再開される可能性があることを明確にしている。
事情に詳しい関係者によると、トランプ政権当局者や政権に近い関係者は、監察総監の報告書を利用するか、あるいは別の手段によって、ホワイトハウスがパウエル氏を退任に追い込むための手掛かりを見いだそうとしている。
クック理事は引き続き標的
トランプ政権は、バイデン前大統領が指名したクック理事も引き続き解任しようとしている。
トランプ氏は昨年8月、住宅ローン契約の詐欺疑惑を理由にクック理事を解任すると表明した。FRB理事の解任を試みるという前例のない措置に対し、クック氏が解任の差し止めを求めて提訴したことで、この問題は最高裁に持ち込まれた。最高裁は6月29日、訴訟の審理が続く間、クック理事が職務を続行することを認める判断を5対4で下した。
ロバーツ最高裁長官は意見書で、トランプ氏が疑惑に適切に反論するための手続きをクック理事に与えなかったことから、最高裁は「限定的な根拠」に基づいて判断を下したと記した。
最高裁の判断が示された直後から、トランプ氏と側近らは、クック氏の解任に向けた取り組みを継続する意向を示した。
一方で最高裁は、クック理事に対する疑惑が事実だった場合、それが理事解任のための十分な法的根拠となるかどうかについては判断を示さなかった。このため、今後トランプ氏があらためてクック理事の解任を試みた場合、その適法性が再び争われる可能性がある。
アトランタ連銀総裁選び
トランプ政権は、アトランタ連銀の総裁ポストの空席を含め、全米12地区連銀への関与を一段と強めている。事情に詳しい関係者によれば、トランプ氏に近い関係者の一部は、この空席を大統領と理念を共有する人物を送り込む好機と捉えている。
ベッセント長官をはじめとする政権の主要な経済政策担当者は、新総裁の選考手続きの進展を注視している。
地区連銀総裁は、金融機関関係者を除く地域の企業経営者や実業界の代表らで構成される各地区連銀の理事会が選出し、その後、ワシントンのFRBが承認する。地区連銀総裁は持ち回りで政策金利決定の投票権を行使する。
事情に詳しい関係者の話では、アトランタ連銀では5月時点で次期総裁の選考がかなり進んでいた。しかし、ウォーシュ氏のFRB議長就任が目前となると、いずれもトランプ氏が指名したボウマンFRB副議長(銀行監督担当)とマイラン前理事が、ウォーシュ氏の就任後に人選について一定の発言権を持てるよう、選考手続きの一時停止を関係者に求めた。
選考手続きは最近再開され、事情に詳しい関係者2人によると、ウォーシュ議長は民間セクターでのリーダーシップの経験を持つ候補者を求めている。
インフレ高止まりのリスクについてたびたび発言していたアトランタ連銀のボスティック前総裁は2月に退任した。
アトランタ連銀はコメント要請に対し、6月に公表した声明にあらためて言及。同連銀の理事会議長で総裁選考委員会の委員長を務めるグレッグ・ヘイル氏はその中で、「われわれは選考手続きの公正性を守りながら、第6地区にとって最適な候補者の選定に引き続き注力している。適切な時期に、この重要な指導者ポストに関する最新情報を公表する」と説明した。
原題:Trump Allies Double Down on Efforts to Reshape Federal Reserve(抜粋)
--取材協力:Enda Curran、Jonnelle Marte、高野 遼.
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