ニューヨーク在住のアルマーニ・ケイティさん(24)は、アニメ「僕のヒーローアカデミア」の悪役、死柄木弔(しがらき・とむら)のライセンス商品を日本から取り寄せるたびに、割高な買い物を強いられている。

「いつも価格設定には納得がいかない」と、10年以上にわたりアニメグッズやゲームを買い続けているケイティさんは話す。不満は価格だけではない。多くの商品は、さまざまな障壁によって入手しにくいままで、「実際に手元に届くのは、商品のごく一部に過ぎないと思う」と言う。

アジア以外でもアニメファンの裾野は広がっており、日本の出版社は、現在130億ドル(約2兆1000億円)規模に成長したアニメ・漫画関連商品市場で商社との連携を強めている。狙いは米国のオタク層が長年不満を訴えてきた問題の解決だ。ぬいぐるみ、衣料品、フィギュア、ポスターなど公式グッズが地元の小売店では十分に手に入らない状況が続いている。

7月3日から6日にかけてロサンゼルスで開かれる「アニメ・エキスポ」は過去最多の来場者が見込まれており、欧米のオタク需要の拡大を背景に、日本の大手商社はアニメグッズ市場に商機を見いだしている。三菱商事はセガやタカラトミーと組み、米国で商品販売を支援している。これに対し、住友商事は集英社の関連会社に出資した。

丸紅は今年、小学館と提携し「らんま1/2」や「葬送のフリーレン」の公式グッズを、ホット・トピック傘下のボックスランチの店舗向けに輸出を開始。5月には、伊藤忠商事がサンフランシスコを拠点とするキャラクター・ライセンシングのスタートアップに出資し、足場固めに動いた。

総合商社は商品取引にとどまらず、物流、金融、投資などを世界規模で手がける。幅広い事業網を背景に、海外流通にも強みを持つ。丸紅の次世代事業探索・開発室長、中村誠氏は「われわれの大きな強みは商品をしっかり流通させ、販売するということ」と話す。

丸紅の中村誠氏

出版社側は、新たなパートナーとなる商社が、作品をめぐる複雑な権利関係を整理してくれると期待している。日本では、放送局、出版社、おもちゃメーカー、制作スタジオなど複数の企業が共同で資金拠出し、リスクを分散しながら1本のアニメを制作する。ただ、この仕組みでは、関連商品の開発でもすべての関係者が参加する会議で全会一致の承認が必要となり、企画から商品化までの各工程で遅れが出やすい。

アニメは、「鬼滅の刃」や「ONE PIECE」などのヒット作に支えられ、数百億ドル規模の世界産業へと急成長した。ネットフリックスも、アニメのライセンス取得や制作に数億ドルを投じており、同社の加入者の50%超がアニメを視聴している。

グランド・ビュー・リサーチは、米国市場の急成長も追い風となり、アニメ関連グッズの売上高が2033年までに240億ドルに達すると予測する。市場拡大が見込まれる一方で、小売業者は、日本企業が海外での新商品投入になお慎重だと指摘する。

ホット・トピックで商品・マーケティングを担当するエド・ラベイ氏によると、同社は新作アニメの公開に合わせて、アパレル、アクセサリー、コレクターズアイテム、家庭用品など約100種類の商品を販売する計画を頻繁に立てている。しかし、実際に期限内に確保できる商品はわずか数点にとどまることが多いという。

正規品の不足が、模倣品の氾濫を助長している。中村氏は、クリエイターたちは自身の作品が世界中の人々に届くことを喜ぶ一方で、キャラクターが歪曲(わいきょく)される現状には「ある種の悲しみ」も感じているという。海外のアニメイベントでグッズコーナーを見た際には、「これ原作者さんが知ったら怒るだろうなというものが結構ある」と話す。

中村氏によると、丸紅と小学館の合弁会社MAG.NETは中東向けの輸出を拡大し、今年後半には現地の小売業者と提携する計画だ。小学館が権利を持たない漫画も含め、アジアや南米での商品販売に向けた同様の協議が十数件進んでいるという。公式ライセンス商品を供給し、海賊版の数を抑えることが目標だ。

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海外のアニメグッズ市場は複雑さを増し、出版社が単独で対応するのは難しくなっている。かつては、「ドラゴンボール」や「ポケットモンスター」といった一部の定番作品が世界需要の大半を占めていた。現在は、加入者の多様な好みに応える動画配信サービスの普及により、アニメの嗜好(しこう)は細分化している。

「ポケットモンスター」や「NARUTO -ナルト-」を見て育ったニューヨーク在住のアンソニー・グリマンドさん(29)は、京都アニメーションの「CITY」シリーズなどのキャラクターをあしらったトートバッグやカップ麺のふた留めを見つけるのは難しいと話す。

グリマンドさんは「米国の店にグッズを買いに行くと、品質がイマイチだったり、欧米向けに作られていたりすることが多い」と語る。「本当に気に入ったものがあってグッズを買いたい時は、日本の個人販売業者を通じて購入している」。地元の紀伊國屋書店に足を運ぶことも多いという。

アメリカ紀伊國屋書店・東海岸エリア統括の渡邉成一氏は「特に新商品、限定品、プレミアム商品やコレクター向けの商品では、依然として需要と供給の間に大きなギャップがある」と話す。需要は拡大しているだけでなく、ファンが求める水準も上がっており、「本物らしさや限定性、原作者やクリエイターとのより深いつながりをますます求めるようになっている」と分析する。

丸紅は、グッズ制作の大きなボトルネックとなっている商品監修プロセスの迅速化に向け、AIの活用を試験的に進めている。中村氏によると、いまは人間がキャラクターの色味や目の角度の違いを確認している。AIが事前に商品をチェックできれば、通常月1回開かれる正式な商品監修会議で問題になる点を減らせる可能性がある。

中村氏は、AIを活用すれば商品化までの時間が短縮され、アニメの放送開始日に近い時期にグッズを発売できるようになるとみる。小学館もこの案に前向きだとの見方を示した。

ケイティさんは、ニューヨーク市内の専門店でグッズを探したり、メルカリの代理購入サービスも頻繁に利用している。目標は、アニメキャラクターの缶バッジやグッズでびっしり飾った「痛バッグ」を作ることだ。ケイティさんは「バッグを完成させるには、まだたくさんのバッジが足りない」と肩を落とす。

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