(ブルームバーグ):1日の米株式相場は反落したものの、S&P500種株価指数の構成銘柄は大半が上昇して終えた。景気の底堅さと物価上昇圧力の緩和を示す経済指標に加え、インフレリスクは後退したというウォーシュ連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言が材料視された。
景気動向に敏感な銘柄の値上がりが目立った。米供給管理協会(ISM)が発表した6月の製造業総合景況指数は、6カ月連続で活動拡大を示した。戦争を背景に高騰していた仕入れコストの上昇は和らいだ。
一方、フィラデルフィア半導体株指数は反落し、6.3%安。
ウォーシュ議長はポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで、「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」と述べた。
エバコアのクリシュナ・グーハ氏は「少なくともウォーシュ議長の発言は、7月にも利上げが実施されるとの観測を強めることにはならなかった」と指摘。「われわれの見方では、ウォーシュ氏は会合ごとにあらゆる選択肢を保持しながらも、現時点では直ちに利上げに踏み切る必要性を感じていない」と分析した。
6月のISM製造業指数は小幅に低下したが、約4年ぶりの高水準近辺を維持。仕入れ価格指数は9.1ポイント低下の73と、2022年7月以来の大幅な低下となった。米国とイランの暫定合意を受けて原油価格が急落したことが背景にある。
キャピタル・エコノミクスのアリアン・カーティス氏は「原油価格はイラン戦争前の水準近辺に戻っており、6月に低下した仕入れ価格指数には、恐らくさらなる低下余地がある」と述べた。
米雇用統計を翌日に控え、この日はADP民間雇用者数が発表された。6月は前月比9万8000人増と、堅調に増加。過去3カ月間の伸びとしては、1年余りで最大となった。
2日に発表される6月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比11万5000人増が予想されている。
セブンズ・リポートのトム・エッセイ氏は「雇用者数の伸びが10万人を少し上回り、失業率が安定している状況は、現在の市場にとって最も望ましいシナリオだ。米経済の底堅い成長を裏付ける一方で、利上げ観測を強める材料とはならないからだ」と述べた。
外為
外国為替市場ではドル指数が続伸。ウォーシュ議長の発言後に上げを大幅に縮小する場面があったが、その後はやや持ち直した。
円はニューヨーク時間の朝方に1ドル=162円70銭台で軟調に推移していたが、ウォーシュ氏の発言後に上昇に転じ、162円30銭近辺を付けた。その後は上げ幅を徐々に縮小して162円台後半と、ニューヨーク前日終値比で小幅安での推移となった。
ウォーシュ氏はECB年次フォーラムで、FRBのバランスシート縮小が望ましいとの考えをあらためて表明。ただ、将来的な変更は連邦公開市場委員会(FOMC)で決定する事項であり、「公の場で十分に議論を重ねた上で」判断することになろうと述べた。
ラガルドECB総裁は同じフォーラムで、ユーロ圏のインフレと経済成長を巡るリスクは、以前ほど大きくなくなったとの認識を示した。
ECB政策委員会メンバーのコッハー・オーストリア中銀総裁は、次回以降の金融政策決定は追加利上げを実施するか、現行の政策を維持するかのいずれかになりそうだと述べた。
米国債
米国債相場は下落(利回り上昇)。2年債利回りはウォーシュ議長の発言を受けて一時低下していたが、取引終盤になって再び小幅上昇に転じた。
ウォーシュFRB議長はECB年次フォーラムで、将来的な金利政策に関して「フォワードガイダンス」を示さない考えをあらためて示した。
金融政策の影響を受けやすい米2年債利回りは、同議長のこの発言後に日中の最低水準である4.13%を付ける場面があった。
TDセキュリティーズのストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏とモリー・ブルックス氏は1日付リポートで、「市場がフォワードガイダンスに依存してきたことで、不確実性は総じて低下し、トレーディングのポジションは比較的集中していた」と指摘。
「フォワードガイダンスがなくなれば市場のボラティリティーは高まり、タームプレミアムも上昇するだろう」と記した。
原油
原油相場は続落。ホルムズ海峡の通航が回復し、イランとの戦争による影響も薄れつつある中、供給過剰への懸念が強まっている。
北海ブレント原油は1バレル=72ドル近辺で終え、米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は69ドルを下回った。 トランプ米大統領はイランとの間接協議が進展したと主張した。戦闘再開が回避されれば、ホルムズ海峡を通る原油輸送が維持され、原油価格の一段安につながる可能性が高い。
米エネルギー省の統計を受けて、原油先物は一段安となった。原油在庫は減少したものの、その減少幅は米石油協会(API)が見込んでいた水準を約200万バレル下回った。一方で、全体の在庫水準は依然として平年を大きく下回っている。米国の原油輸出が、中東から失われた供給を補うために急増したことを受け、原油在庫は2018年9月以来の低水準となった。
もっとも、市場では弱気ムードがなお優勢となっている。ブレント原油の期近2限月間のタイムスプレッドは、供給過剰を示すコンタンゴ(順ざや)状態が続いた。WTIのスプレッドも2025年11月以来で初めて供給過剰を示唆する水準に近づいている。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「在庫は依然として歴史的な低水準にあるが、市場は足元の在庫水準よりも、在庫取り崩し局面がピークを過ぎた可能性に注目し始めている」と指摘。「市場は在庫取り崩し局面のピークから、供給余剰への緩やかな回帰という転換点を織り込み始めている」と述べた。
一方、現物市場は引き続き軟調だった。ホルムズ海峡を通過する原油貨物の供給拡大が製油所の需要を上回る中、西アフリカ産から北海産までの現物原油は前日、数年ぶりの安値水準で提示された。
原油相場はここ数日、軟調に推移している。交戦当事者が恒久的な合意に向けた協議を続ける一方、ホルムズ海峡周辺で最近発生した攻撃が交渉の妨げとなっている。タンカーの運航は回復の兆しを見せており、週末に米国とイランが相互に攻撃を行った後、通航量は増加した。ただ、船舶の往来はなお戦争前の水準を下回っている。
ゴールドマン・サックス・グループのグローバル商品調査部門の共同責任者、サマンサ・ダート氏は紛争について、「7月末までには終結すると見込んでいる」と述べた。その上で、「ホルムズ海峡を通過する物流が正常化すれば、供給過剰局面に入るとみている」と語った。
ゴールドマンは、イランとの戦争後の戦略石油備蓄(SPR)の世界的な積み増しを織り込んでも、来年の供給余剰は日量約200万バレルに達すると見込んでいる。モルガン・スタンレーも、ホルムズ海峡を通過する物流の回復が想定より早く進み、供給過剰が迫っていると警告。原油価格見通しを引き下げた。同社の予想下方修正は約2週間で2度目。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比92セント(1.3%)安の1バレル=68.58ドルで終了。北海ブレント先物9月限は1.9%下落して71.57ドルで取引を終えた。

金
金相場は上昇。ウォーシュ議長の発言を受け、ドルが伸び悩み、米国債利回りが上げ幅を縮小したため、金買いが優勢になった。金スポットは一時2.7%上昇した。
TDセキュリティーズの商品戦略グローバル責任者、バート・メレク氏は「ウォーシュ議長は従来のメッセージを維持しており、それが金相場を支えている。金市場では、議長がややタカ派寄りの姿勢を示すのではないかとの懸念があった」と述べた。
1月に過去最高値を付けた後、金相場は軟調な展開が続いている。米国とイランの暫定的な和平合意を受けてエネルギー価格は下落したものの、根強いインフレに対応するためFRBが年内に利上げに踏み切るとの見方が重しとなっている。利回りを生まない金にとって、借り入れコストの上昇は逆風となる。

金スポット価格はニューヨーク時間午後1時36分現在、前日比62.53ドル(1.6%)高の1オンス=4070.55ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は43.90ドル(1.1%)高の4082.40ドルで引けた。
欧州
1日の欧州債券市場は、短期債が買われてドイツ債のイールドカーブがツイスト・スティープ化した。ポルトガル・シントラで開催中の欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムに出席した政策当局者らが利上げを急がない姿勢を示したことで、利上げ観測が若干後退したためだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は、ECB年次フォーラムで、米国のインフレリスクは低下したと語った。6月の米ISM製造業景況指数は市場予想を下回った。ECBのラガルド総裁も、ユーロ圏のインフレと経済成長を巡るリスクが、以前ほど大きくないとの認識を示した。
金利スワップ市場では、ECBの9月までの利上げ幅は14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、年末までを21bpと織り込んでいる。前日時点では、それぞれ16bp、24bpだった。
英国債は前日の下落分を戻し、イールドカーブがツイスト・スティープ化した。市場ではイングランド銀行(英中央銀行)の年内利上げ幅を19bpと予想しており、前日の22bpからは縮小した。
欧州株は、一時は0.7%安まで下げたものの、ECBの利上げ観測の後退を受け反発した。ストックス欧州600指数は0.4%安で取引を終えた。
業種別では、自動車株とメディア株が最も堅調だった一方、公益事業株、テクノロジー株、エネルギー株は軟調だった。エネルギー株は、原油価格が一時1バレル=71ドル近くまで下落したことが重しとなった。
7月1日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Most Stocks Rise as Warsh Says Price Risks Fading: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Rises, 2-Year Yields Fall After Warsh Talk: Inside G10
Wall Street Worries Less Fed Talk Will Spur Market Volatility
Oil Falls on Growing Signs of Oversupply, Progress in Iran Talks
Gold Rises as Traders Weigh Fed Rate Path After Warsh Remarks
Bunds Pare Drop on Fed Warsh’s CPI Remarks: End-of-Day Curves
European Stocks Edge Lower as Traders Weigh Policy Signals
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