日本銀行が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は5四半期連続で改善し、約8年ぶりの高水準となった。市場で高まる年内利上げ観測を支えそうだ。

大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス22と3月調査のプラス17を上回り、2018年3月以来の水準。市場予想を上回った。加工業種では生産用機械や業務用機械、電気機械などの改善が目立った。日銀では、AI・半導体の関連需要や価格転嫁の進展などが改善の要因としている。先行きはプラス17と悪化を見込む。

一方、大企業非製造業の業況判断DIはプラス37と5四半期ぶりに改善し、1991年8月以来の高水準となった。市場予想(プラス36)を上回った。宿泊・飲食サービスや小売り、通信などが改善した。先行きはプラス28と悪化の見通し。

日本銀行本店

今回の短観では、長期化する中東情勢の緊張とそれを受けた原油価格の上昇などが企業の景況感や事業計画に及ぼす影響が注目された。日銀によると、回収基準日の11日までに7割が回答した。米国とイランの和平合意が十分に反映されていない中での景況感の改善は、日銀の利上げ継続路線を支える内容と言える。

マーケットコンシェルジュの上野泰也代表はリポートで、「AI景気とでも呼ぶべき要素が大企業・製造業の業況判断DIを押し上げた」と指摘。雇用人員判断DIから改めて確認された人手不足感の強さや企業の物価見通しの上昇なども支えとなり、「さらなる利上げを目指す日銀にとって、明らかに有利な材料である」とみている。

価格転嫁の進展を背景に、企業のインフレ期待も上昇が続いており、企業が想定する消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は、平均で1年後が2.7%、3年後が2.6%、5年後が2.6%と全期間で前回調査を上回った。中東情勢を受けた原油価格上昇などを背景に、販売価格判断DIと仕入価格判断DIも上昇超幅を大きく拡大した。

2026年度の大企業全産業の設備投資計画は前年比11.5%増。前回調査(3.3%増)から上方修正され、市場予想(11.0%増)も上回った。

1日の東京市場では日経平均株価が一時1900円上昇。日銀短観での景況感の改善も相場の支えとなっている。円は対ドルで下落し、一時162円77銭と1986年12月以来の安値を更新した。堅調な米経済指標や日米金利差を意識した円売り・ドル買いが優勢だ。

日銀は16日の金融政策決定会合で、政策金利を31年ぶりの高水準となる1.0%程度に引き上げた。今後も利上げ継続方針を維持するとともに、基調的な物価上昇率が目標の2%から上振れるリスクに言及し、インフレへ高進への警戒感を一段と強めた。

利上げの影響を点検する観点で日銀が注目している資金繰り判断DIや金融機関の貸し出し態度判断DIに目立った変化は見られなかった。今回の短観には16日の利上げの影響は織り込まれていないが、これまでの利上げでも緩和的な金融環境は維持されているとする日銀の判断を裏付ける結果となった。

みずほ証券の片木亮介マーケットエコノミストはリポートで、日銀はイラン情勢悪化により経済が大きく下振れるリスクは低下したと判断して、6月会合で利上げに踏み切ったが、「今回の短観はそうした日銀の見方をサポートする結果だった」と指摘した。

利上げを受けてブルームバーグが6月会合後に実施した緊急のエコノミスト調査では、次の利上げ時期について最多の12月予想が52%となり、次いで10月が36%となった。9月の2%と合わせ、年内利上げの予想が90%を占めた。

足元の金利スワップ市場が織り込む日銀の1.25%程度への利上げ確率は9月会合までが約23%、10月会合までが約59%、12月会合までが約93%となっている。

日銀の説明

  • 業況判断、製造業はコスト上昇や原材料の調達難、設備投資需要の減少など中東情勢悪化の影響を指摘する声
    • 一方、堅調なAI、半導体関連需要や価格転換の進展、仕入れ価格の上昇や原材料の調達難を見越した前倒し需要を指摘する声も
    • 先行きは中東情勢悪化の影響が幅広い業種で聞かれたほか、前倒し需要の反動減などの指摘も
  • 非製造業は価格転嫁の進ちょくや堅調なインバウンド需要、先行きの仕入価格の上昇や原材料の調達難を見越した前倒し需要の指摘
    • 一方、中東情勢の影響を含めたコスト上昇による収益悪化や物価高による需要の減少、人手不足の悪影響の声も
    • 先行きは中東情勢の影響による原材料価格の上昇や人件費の上昇、値上げや物価高による需要の減少、人手不足の懸念などが聞かれた
  • 米国とイランの和平合意にかけて、多くの企業が回答済み。合意による中東情勢の影響緩和期待などはあまり織り込まれていない
  • 設備投資計画、半導体関連やインフラ関連のほか、建設コスト上昇などがプラスに効いている。中東情勢の影響は強くは聞かれていない

(詳細やエコノミストコメント、日銀の説明を追加して更新しました)

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