英国で近く次期首相に就任すると見込まれるバーナム議員は、優柔不断や党内対立にまみれた労働党政権に嫌気が差した有権者の支持を取り戻すため、大胆な新政策を相次ぎ打ち出そうとしている。その一つが「戦時国債」の発行だ。

この構想は6月初め、退任するスターマー首相が下院で戦時国債も「借り入れの一形態に過ぎない」と述べ、退けていた。しかし、今後3週間以内に首相に就任する見通しのバーナム氏は、より前向きな姿勢を示す可能性がある。同氏の主要顧問の1人で、イングランド銀行(英中央銀行)元チーフエコノミストのアンディ・ホールデン氏は、以前からこの構想を支持してきた。

戦時国債は実質的には英国債であり、一般向けに販売し、調達資金を老朽化が進む英防衛分野に直接充てる仕組みだ。英国の家計は数千億ポンド規模の預金を保有しており、愛国心に加え、税制優遇や国債としての安全性を背景に、国防に役立つ金融商品へ資金を振り向ける人が少なくないとの考え方に基づく。英国では個人貯蓄口座(ISA)への年間拠出額が約700億ポンド(約15兆円)に上る。非課税枠は最大2万ポンドで、多くは金利の低い現金型ISAで運用されている。

この構想は議会でも一定の支持を集めている。中道野党の自由民主党は年初以降、戦時国債の発行を25回にわたり提唱してきた。ロンドンの金融街シティーの有力金融機関幹部もこれを支持し、リーブス財務相に提案している。

英国では軍事費の財源確保が難題となっている。政府が計画する国防費増額では国を守るには不十分だとして、6月に入りヒーリー国防相がカーンズ国防担当閣外相と共に辞任した。

Photographer: Ryan Jenkinson/Getty Images

長らく公表が延期されていた投資計画は7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に公表される予定で、政府は国防費増額を135億ポンド超へ引き上げる方策をなお検討している。戦時国債の支持者の中には、さらに200億ポンドを調達できるとみる向きもある。

ロンドン金融街のエコノミストらが示した案では、戦時国債は40%の相続税を免除する。また、英国債はキャピタルゲイン税も非課税であるため、この制度により初年度だけで少なくとも100億ポンド、その後はさらに多くの資金を呼び込めると、スタンダード・ライフのニコラス・ライオンズ会長は見込む。

ライオンズ氏と、昨年12月にこの構想を提唱したパンミュア・リベラムのチーフエコノミスト、サイモン・フレンチ氏は、この仕組みにより政府は低コストで資金調達できるようになり、約3分の1を海外投資家が保有する英国債市場の安定性向上にもつながると述べた。

フレンチ氏は、政府が通常の英10年国債より約0.5ポイント低い利回りで、税制優遇付きの10年物戦時国債を発行しても、個人投資家から十分な需要を集められるとの見方を示した。この制度は、多額の貯蓄を持つ高齢世代にとり特に魅力的になる可能性がある。労働党政権は年金資産への相続税導入や高額住宅への課税強化を実施したためだ。一方、この政策は将来的に相続税収の減少につながる。

英紙ガーディアンによると、首相官邸当局者は、バーナム氏にこの構想の採用を働き掛ける見通しだ。ただ、同氏の顧問団の意見は分かれている可能性がある。

原題:Burnham’s Rise Revives Talk of War Bonds to Fund the UK Military(抜粋)

--取材協力:Joe Mayes、Alice Gledhill.

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