原油価格の下落による物色の広がりが株式市場の中心テーマ
6月24日の米国株式市場は、AI・半導体関連株が軟調である一方、消費関連株や景気敏感株が堅調という流れが続いた。ナスダック指数は前日比▲0.43%と続落した一方、ダウ平均は同+0.35%と反発した。このところ、①原油価格の下落による米国の内需改善期待と物色の広がり、②FRBのタカ派化懸念(金利上昇)がAI・半導体関連株の調整を促している可能性が指摘されていた。この日は利上げ観測が後退し、実質金利が低下した。それでもAI・半導体関連株の調整が続いたということは、①原油価格の下落による物色の広がりが重要なのであろう。原油価格は一段と下落し、WTI原油先物価格は一時70ドルを下回った。高値警戒感のあるAI・半導体関連株よりも、消費関連株の方が安全であるという見方が生じることに違和感はない。
再び供給ショックが生じて、「インフレ懸念(債券売り)+景気悪化懸念(消費関連株・景気敏感株売り)⇒AI・半導体関連株への資金集中」となる展開にならなければ、市場の焦点はFRBの対応にシフトするだろう。このまま原油価格の低迷が続く場合、次の展開として重要なのはFRBがハト派化するかどうかである。原油価格の下落によってインフレ懸念が沈静化するのであれば、FRBが利上げをする必要性は低下する。また、AI・半導体関連株の上昇が一巡すればAI投資ブームがバブルにつながるという中長期のリスクも低下する(FRBが相場の過熱をけん制する必要性が低下する)。このような展開となれば、株価の下落余地は大きくないだろう。
債券市場はBEIの低下が実質金利の低下を促す展開にシフト
6月24日の米国債券市場は、インフレ予想(BEI)の低下が続いただけでなく、これまで上昇していた実質金利も低下し、堅調な推移となった。長期金利は前日差▲10.5bp、2年金利は同▲5.7bpとなった。10年実質金利は前日差▲7.9bp、10年BEIは同▲1.7bpであった。これまでは、(1)利上げ観測の高まりによって実質金利が上昇し、(2)その影響もあってBEIが低下するという流れだったが、この流れが変化してきた可能性がある。すなわち、(3)BEIが低下したことで利上げ観測が弱まってきた可能性がある。FF金利先物市場では26年中に約1.4回の利上げが織り込まれているが、1.5回を下回ったのは6月16-17日のFOMC以来である。
むろん、BEIが下がったからといって、すぐにFRBが利上げを撤回するとは思えない。FRBの利上げが意識されてドル高が進み、そのことがインフレ懸念を抑制しているという構図はFRBにとって望ましい流れと言える。労働市場を中心に、米経済が堅調であるという見方が続く間は、できるだけタカ派の状態を維持するインセンティブがある。もっとも、このところのBEIの低下は急ピッチである。すでに10年BEIは2.19%まで低下しており、25年4月10日につけた直近の下限(2.17%)を下回る可能性もある。この水準を下回ると、24年9月以来の低水準ということになる。25年4月は関税ショックによってリセッションが懸念されたタイミングであり、24年9月は雇用統計の大幅悪化によってリセッションが懸念されたタイミングである。そのような水準までBEIが低下していることを、FRBは無視し続けることはできるだろうか。少なくとも、次の一手が利下げになる可能性も残しておきたいというフリーハンドを意識したコミュニケーションにシフトするだろう。現在の市場の予想と比べてハト派的なコミュニケーションが増えていく公算である。