東京電力ホールディングスは25日に定時株主総会を開き、横尾敬介新会長が率いる新体制を承認した。同社は国の監督下にあり、巨額の財務負担や廃炉作業の長期化リスクを抱えながら外部資本を募る異例のディールを進めている。横尾氏らは、就任後早くも手腕を問われることになる。

関係者によると、資本提携先の候補はソフトバンクなど国内外の5陣営が軸となる方向だ。ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏は24日に、ソフトバンクが重要な候補として残っていると明らかにしていた。

顔ぶれが見えてきた一方で、交渉は簡単に進みそうにない。東電HDは福島第一原子力発電所の廃炉や被災者への賠償費用として年間約5000億円の資金確保を目標にしている。

Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

巨額の財務負担の扱いが出資交渉を左右する要素になるが、完全に切り離すことは現実的ではなさそうだ。東電HDが1月に公表した再建計画では、アライアンスの基本認識として電力事業から福島原発の廃炉や賠償に資金の供出や人材の配置がなされることと説明している。

政府の意向も無視はできない。東電HDは福島原発事故を受けて実質国有化され、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が株式の54.75%を持つ。同機構の所管官庁の一つである経済産業省の赤沢亮正大臣は16日の閣議後会見で、提携する企業にはこの費用負担と「整合的な事業計画をお示しいただく必要がある」と述べていた。

ただ入札側の関係者からは、東電HDが抱える廃炉などの費用負担はどう整理されているか不透明との声も上がる。

エネルギーアナリストの大場紀章氏は、財務負担を抱えた部門を切り離すことは経営再建の定石だと指摘する。ただ、分離論は東日本大震災の発生直後からあり、事故責任の実質的な免責になるとの理由から受け入れられずにきた。切り分けるとなれば政府の方針転換となり、提携交渉の条件を超えて大きな意味を持つという。

東電HDの広報担当者は、同社はパートナー候補と協議しており、アライアンスの目的に関する基本認識などを踏まえ、着実に検討を進めるコメントとした。

行き詰まり

柏崎刈羽原発6号機の再稼働にはこぎ着けたものの、東電HDを取り巻く環境は厳しいままだ。提携先探しは、成長投資の余力がない同社の苦境を示している。

福島原発の廃炉や賠償、除染、中間貯蔵施設にかかる費用は23兆4000億円とされ、今後も膨らむ懸念がある。2025年4-6月期には、約880トンの冷え固まった溶融燃料(デブリ)を取り出す準備のために新たに9030億円の特別損失を計上した。51年の廃炉完了を目指しているが、デブリの取り出しだけで約70年かかるとの指摘もある。

柏崎刈羽原発は、7号機の再稼働も控え、震災で工事が中断した東通原発の建設再開にも道筋をつけたい考えだ。福島原発以外でも出費がかさむが、業績はさえない。

16年に電力小売りが全面自由され、顧客が新規参入組に流れて収入が減少。物価上昇でデータセンター新設に伴う送配電への設備投資などのコストもかさんでいる。事業で得た現金から投資支出を差し引き、自由に使える資金として手元に残るフリーキャッシュフローは19年3月期から赤字が続く。

苦境の背景にあるのは「デフレ下で設計された電力制度」だと、エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は語る。コスト削減を前提にして持ち込まれた競争がインフレ局面でも続いており、「自由化の制度設計のひずみが来るところまで来た」との見方を示した。

投資の呼び込み

AIの活用拡大や、それに伴うデータセンターの設置計画を受けて、電力需要の増加が見込まれている。海外に目を向けるとエネルギー企業への投資は活発だ。

米国の電力大手では、ネクステラがドミニオンを約670億ドル(約10兆8000億円)相当の株式交換で買収することを5月に発表し、規模拡大によるコスト削減で価格競争力を高めるとした。同国ではAESも3月、米ブラックロックらの連合が同社を負債を含めて107億ドル(約1兆7000億円)で買収すると明らかにした。

非営利団体の米パワーラインズの調査によれば、民間の電力・ガス会社は30年までの5年間で発電所や送電線などに少なくとも1兆4000億ドル(約226兆円)の投資を計画している。

東電HDはこうした追い風に乗れていない。松尾氏は「もうかっておらず、原子力のリスクも大きい状況で、投資は呼び込めない」と話す。同社株は柏崎刈羽原発の再稼働に向けた地元の同意に期待が集まった昨年11月に934.1円まで上がったが、足元では半値近くまで下落した。

21年に就任し、東電HDの再建を率いてきた小林喜光氏からバトンを引き継ぐ横尾氏は、1974年に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。2019年からは産業革新投資機構(JIC)の社長を務めてきた金融畑出身者だ。2日に開かれた就任前の会見では、外部環境が変化する中で福島への責任を果たし、持続的に成長するには「大胆な事業構造改革が喫緊の課題」だと述べていた。

資本提携の要件には、データセンター需要の取り込みや40年に電力の6割超を脱炭素電源で賄うことも含まれる。横尾氏が難しい交渉をいかに進めるかが注目される。

(株主総会の結果を踏まえて第一段落の情報を更新しました)

--取材協力:石橋茉莉、鈴木英樹.

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