(ブルームバーグ):台湾の駐米代表は、トランプ米大統領が最終的に台湾への追加武器売却を承認するとの確信を示した。台湾は140億ドル(約2兆2000億円)規模の武器売却を実行するトランプ氏の承認を待っている。
駐米台北経済文化代表処の兪大㵢代表は「ブルームバーグ・ディス・ウイーク」で、「もちろん、もう少し速やかに進めることは可能だろうが、米国はわれわれが直面している脅威を非常によく理解している。必要な装備を提供してくれると確信している」と述べた。米国との正式な外交関係がない台湾にとって、兪氏は事実上の駐米大使。
トランプ氏が中国の習近平国家主席との関係強化を図る中、米国の台湾関与を巡り不透明感が広がり、今回の武器売却の重要性は一段と高まっている。事情に詳しい複数の関係者によると、計画されている売却では防空装備が相当な割合を占める。
米国は「台湾に対する米国の政策に変更はないという点を非常に明確にしている」と兪氏は指摘し、台湾独立に反対するよう求めた習氏の要求に対し、米国は「同意も応答もしていない」と語った。
米政府は台湾独立を「支持しない」というスタンスを長年維持しており、仮に習氏の求めに応じて「反対する」と表明すれば、習氏にとって大きな成果となる。
米政府高官は政権内部の協議だとして匿名を条件に、トランプ氏が武器売却案件について比較的短期間で判断を下すと述べたが、具体的な時期には言及しなかった。
トランプ氏はワシントンで習氏を9月に迎えた際、この問題の重要性を大きく見せないような発言をしており、決定を「近く」下すと以前から述べている。
トランプ氏は台湾への武器売却について、中国との交渉で「非常に有効な交渉材料」だと先に表現。また、台湾を巡る中国側とのやり取りでは、米国が長年続けていた慣行とは異なる対応を取っている。
トランプ氏と習氏は今年、国際会議の場でさらに2回会談する見通しだ。兪氏はその際の目標について、「台湾が議題に載らないようにすること」だと話した。
サンフランシスコ平和条約
台湾を巡る緊張は、習氏訪米時に両首脳がワシントンの国立公文書館を訪問した際にも表面化した。事情に詳しい関係者によれば、中国の外交官は直前になって、1951年のサンフランシスコ平和条約が展示されないよう働きかけた。
第2次世界大戦に敗れた日本の主権回復を認めたサンフランシスコ平和条約に中国は署名していない。この条約は日本に台湾に関する全ての権利を放棄させたが、台湾の主権をどの政府が引き継ぐかは明記しなかった。
米公共ラジオ(NPR)が最初に報じた中国外交官の動きは、台湾に対する中国側の敏感さを浮き彫りにした。中国は台湾を自国領土の一部と見なし、必要であれば武力で掌握する可能性を排除していない。
米政府高官は、トランプ氏が昨年12月に過去最大となる110億ドル規模の台湾向け武器売却を承認したことに触れ、台湾支援を巡る懸念の払拭に努めた。
共和党のジョンソン下院議長は最近、トランプ氏の台湾を巡る実績に言及し、台湾政府は引き続き「非常に重要なパートナーであり、友人であり、同盟相手だ」とFOXビジネスに語った。新たな武器売却案件の承認が遅れているのは「中東で起きているあらゆる事態や、それに伴うさまざまな対応」が関係していると説明した。
しかしその後、米国のパーデュー駐中国大使が、トランプ氏は習氏に米国製兵器を購入したいか尋ねたと発言したことで、不透明感はさらに強まった。トランプ氏はこれを否定した後、中国への武器売却は良い考えかもしれないとの見方を示した。
米国務省の報道官は、米国の法律が中国への武器売却を禁じており、中国に武器を売却する提案や計画はないと述べた。
この問題の影響は台湾そのものにとどまらない。米国による台湾支援は長年、アジアにおける米国の信頼性を測る尺度となってきた。日本や韓国を含む米同盟国は、米国の安全保障上のコミットメントに依存している。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の地経学担当チーフアナリスト、ジェニファー・ウェルチ氏によると、危機の際に米国が台湾支援に乗り出さなければ、中国にとって大きな地政学的利益となる公算が大きい。
AI半導体
台湾は最先端半導体の大半を生産しており、AIブームや、米企業がデータセンターと先端コンピューティングに投じる数十億ドル規模の投資にとって不可欠な存在となっている。ウェルチ氏は「台湾、そして台湾が製造する半導体なしには、そのいずれも実現しない」と語った。
台湾にとって、より差し迫った懸念は、中国による攻撃から自らを防衛するために必要な軍事装備を米政府が今後も供給するかどうかだ。米上院の超党派議員グループは5月、承認待ちの武器売却案件について議会に正式通知するようトランプ氏に求めた。
米国家安全保障会議(NSC)の元幹部で、現在はシンクタンクのブルッキングズ研究所に所属するライアン・ハス氏は、トランプ政権下で追加の武器売却が行われると予想している。
中国で11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と、米マイアミでの12月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に伴う米中首脳の相互訪問が終了した後、小規模な案件に分けて実施される可能性があるという。
それでも、トランプ氏による承認の遅れと米国から発せられる相反するメッセージは影響を及ぼしている。
トランプ氏が「米国の揺るぎない姿勢を巡り、これほど大きな不確実性を生み出すこと」によって、中国が台湾側に対し「自分たちは孤立しており、中国に単独で立ち向かわなければならない」と信じ込ませようとする取り組みに「追い風を与えている」というのがハス氏の分析だ。
原題:Taiwan’s Envoy Prods Trump Administration on Stalled Arms Sale(抜粋)
--取材協力:David Gura、Christina Ruffini.
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