米国がイラン産原油の販売を認めたことで、イランがアジアの主要な原油購入国への働きかけを急いでいる。和平協議が続く中で60日間のライセンス(許可)となるが、イランは原油輸出の再開と海上に滞留する積み荷の解消を進められる見通しだ。

協議に関与したトレーダーらによると、仲介業者やイラン国営石油会社(NIOC)の関係者は、正式に販売許可が出る前から、インド、日本、韓国などの製油会社と接触していた。匿名で語った関係者らによると、こうした動きはその後さらに活発化しているという。

制裁下にあったイランは長年にわたり、主に中国向けに原油を販売してきた。そのため購入先の多様化と、タンカーに積載された原油の処理を急いでいる。分析会社ボルテクサのデータとブルームバーグの試算によると、6月22日時点で約6800万バレルの原油およびコンデンセートが海上にあった。このうち少なくとも80%は明確な仕向け先が確認されておらず、購入可能な状態にあるとみられる。

トレーダーらによると、イランが輸出拡大を目指す中で、長期契約に向けた協議も進められているという。

ただし、アジアの買い手側は慎重な姿勢を崩していない。多くの企業は既に十分な供給を確保しており、ホルムズ海峡の長期封鎖に対応するため代替調達先を手当て済みだ。トランプ政権の政策変更が繰り返されることへの懸念も残るほか、欧州連合(EU)と英国の制裁措置も継続しており、資金調達や保険手配は複雑になっている。また、イラン産原油を運搬する、いわゆるダークフリートのタンカーを受け入れない港もある。

日本の太陽石油の広報担当者は、現時点でイラン産原油の購入は検討しておらず、原油調達については引き続き政府と連携していく方針だと述べた。

「米国の制裁政策が揺れ動き、地政学的状況も極めて流動的な中では、アジアがイラン産原油の輸入に踏み切る可能性は低い」と、データ分析会社ケプラーのアナリスト、スミット・リトリア氏は指摘した。「最も重要なのは、中国を除くアジアの製油会社が、既にエネルギー需要を満たすための原油調達量を増やしていることだ」とも述べた。

またリトリア氏によると、大規模な原油輸入国であるインドの製油会社は8月までの原油到着分を既に確保しているという。

インドの製油会社は一般に制裁対象原油を敬遠するが、地理的にイランに近いため迅速な受け入れが可能だ。イランが販路確保を急ぎ、今回の制裁猶予も短期間に限られる中、インド側は交渉で有利な立場に立つ可能性がある。輸送によっては2-3日でインドの製油所に到着できるため、60日間でも十分な余裕を持って受け入れられる。

リトリア氏は、「より現実的な協力分野はLPG(液化石油ガス)、石油化学製品、肥料、さらに広範なエネルギー協力だろう。しかし制裁緩和の先行きやワシントンの政策姿勢を巡る不透明感を考えれば、具体的な成果を期待するには慎重であるべきだ」と述べた。

しかしイランにとって、より大きな課題は供給面かもしれない。混乱が数カ月続いた後でも、アジア市場では現時点で原油不足は生じておらず、製油会社がリスクを取る動機は乏しい。大幅な値引きが提示されない限り、積極的な購入は見込みにくい。中東指標油種であるドバイ原油やアブダビ産マーバン原油は、期近物価格が期先物価格を下回るコンタンゴ(順ざや)となっている。これは短期的な供給過剰を示唆している。

「今回の販売許可によって、イランはほぼ中国のみに依存する状況から脱し、アジア市場で販売先を広げる道が開かれる」と、INGグループのコモディティ戦略責任者、ウォーレン・パターソン氏は指摘する。

その上で、「イランの原油供給がより意味のある形で増加するには、制裁緩和がより恒久的なものになる必要がある」と語った。

原題:Iran Rushes to Woo Asia’s Top Oil Importers After US Waiver (2)(抜粋)

(第6段落に太陽石油のコメントを加えて更新します)

--取材協力:Rong Wei Neo、稲島剛史、Nicholas Lua.

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