米国は、イラン産原油の国際市場での販売を60日間認めると発表した。対イラン制裁政策の大きな転換であり、両国が恒久的な和平合意に向けた協議を続けるなか、イランに経済的な命綱を与える措置となる。

米財務省は22日、イランによるエネルギー製品の販売を8月21日まで認める包括的な60日間のライセンス(許可)を発給した。米ドル建て決済も認められる。イラン産エネルギー製品の対米輸出が数十年ぶりに再開される道が開かれた。

スイスで21日から22日にかけて開かれた第1回和平協議について、出席したバンス米副大統領は「非常に良かった」と評価し、イランが国際原子力機関(IAEA)の核査察受け入れに合意したと明らかにした。その後、トランプ大統領も同様の見解を示した。

一方、イラン当局者は、協議に進展があったことは認めたものの、この主張に異議を唱え、バンス氏の発言について「事実ではなく、現実を反映していない」と反論した。

こうした食い違いは、両国が先週署名した覚書の履行に向け、なお大きな課題が残っていることを浮き彫りにしている。同覚書は戦闘の停止と、長期的な合意への道筋を付けることを目的としているが、重要な問題の多くは未解決のままとなっている。一方で、イランに即時の経済的利益を与える内容も盛り込まれており、この点はトランプ氏の共和党内の支持者から強い批判を招いている。

難しい協議に影を落としているのが、ホルムズ海峡の扱いと、親イラン派武装組織ヒズボラに対してイスラエルが軍事作戦を続けるレバノン情勢だ。

イランは、長年にわたる制裁の緩和につながるエネルギー輸出の容認措置や、復興・開発基金の創設方針を歓迎した。ただ、イスラエルがレバノンでの軍事作戦を続ける場合には、ホルムズ海峡を巡る圧力を維持する構えも示した。

トランプ氏は22日、記者団からイラン産原油の販売を認める制裁適用除外措置について質問を受けた際、この問題と海外で凍結されているイラン資産の将来的な解除を混同したような発言を行った。

さらに、イランが原油販売による収入を軍備再建に利用しないことをどう保証するのかと問われると「イランはそうするべきではない」と指摘。「イランはその資金を国民のための食料購入に使うべきだ。イランの国民は今、非常に飢えている」と述べた。

市場は米国とイランの協議進展を示す兆候に強い関心を寄せている。国際指標の北海ブレント原油は22日に1バレル=77ドル近辺で取引された。イラン産原油の供給増加観測を背景に、短期的な供給過剰への期待が高まった。

米国がこれまでイラン経済を圧迫していた海上封鎖を解除したことで、イランはここ数日で石油輸出を拡大している。

左からバンス米副大統領、スティーブ・ウィトコフ氏、ジャレッド・クシュナー氏(21日)

トランプ政権は、暫定合意に対する批判に反論している。エネルギー価格の低下を通じて米国民の負担軽減につながるほか、政権の重要目標であるイランの核兵器開発阻止に向けた安全策も確保されると訴えている。

トランプ大統領は22日、「将来にわたって『核の透明性』を確保するため、イランが大規模な兵器査察を受け入れることについては、誰もが十分に理解している」とSNSに投稿した。

ただ、核査察を巡る大きな前進があったとの主張には懐疑的な見方も出ている。

国営イラン放送(IRIB)が外務省報道官の話として伝えたところによると、イラン側は核問題についてはこれまで協議していないとしており、国際原子力機関(IAEA)への対応についても既存の手続きに基づいて進めるとしている。

バンス氏はまた、イランが凍結解除された資金を使い、米国産の大豆や小麦などを購入することも合意の一環だと述べた。ただ、イラン側からこうした購入に応じる意向を示す発言は出ていない。

両国が先週署名した覚書では、凍結解除された資金の受益者をイラン中央銀行が指定できると定められている。

両国の実務者協議は、今週もスイスの保養地ビュルゲンシュトックで続けられる予定だ。

バンス氏にはトランプ氏の娘婿クシュナー氏とウィトコフ特使が同行した。技術的な問題を協議するため実務者レベルの代表団は現地に残り、バンス氏とイランのガリバフ国会議長は会場を離れる予定となっている。

バンス氏は22日遅く、交渉担当者らがホルムズ海峡の航行維持を確実にするための「メカニズムを構築した」と述べた。これに先立ち、記者団に対応した際には、米国がイスラエルに対しレバノン南部からの部隊撤退を求めているのかとの質問には直接答えなかった。

イランのアラグチ外相は22日、仲介国がレバノンを巡る緊張の一部を緩和することに成功したと述べた。また、イランは先週の合意による経済的利益を受け始めていると説明した。

一部のイラン産原油および石油製品に対する米財務省の制裁適用除外措置は覚書の条件の一つとなっていた。

イランのアラグチ外相(6月21日)

仲介役を務めるパキスタンとカタールは、イランと米国が協議を監督するための「ハイレベル委員会」と、核問題および制裁問題を扱う作業部会を設置することで合意したと発表した。

また、レバノンでの軍事作戦終結を支援するため、軍事衝突回避を担う調整機関も設置される。

さらに米国とイランは、ホルムズ海峡を通過する海上交通に関する「事案を回避」するための連絡窓口も開設した。

原題:Iran Oil Waiver Offers Lifeline to Tehran as Talks Proceed (2)(抜粋)

(第8段落以降のトランプ氏の発言などを追加して更新します)

--取材協力:Carla Canivete、Paul Wallace.

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