サッカーの男子ワールドカップ(W杯)は、一部のオフィスワーカーに思わぬ恩恵をもたらしている。それは「在宅勤務の許可」だ。

開催都市の雇用主たちは、予想される交通渋滞や遅延を避けるため、試合開催日は従業員に在宅勤務を推奨しており、従業員をオフィスに呼び戻そうとする米企業の長年にわたる取り組みが一時的に中断されている。

ウォール街のバンカーや政府職員、教員らが北米各地で自宅から仕事をしている。在宅勤務に特に批判的な一人であるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)でさえ、従業員に一定の柔軟性を認めている。連邦政府機関も寛容な姿勢を示している。ニューヨークやシアトル、ロサンゼルス、トロント、メキシコ市などの都市は、試合観戦のため数万人のファンが道路や公共交通機関に押し寄せることで、深刻な交通渋滞が発生する恐れがあると警告している。

ITAMビジネススクールとスタンフォード大学の経済学者による月次調査によると、米国の労働者は有給勤務日の4分の1超を自宅で過ごしている。新型コロナウイルス禍は在宅勤務革命をもたらしたわけではないかもしれないが、必要に応じてそれを実践しやすいよう、労働者と職場の環境を整えた。

在宅勤務を研究するバージニア大学の経済学者エマ・ハリントン氏は「W杯による交通渋滞を避けることは、在宅勤務の理想的な活用例です」と述べ、「渋滞にはまり込むことは、誰にとっても有意義な時間の使い方ではない」と指摘した。

6月13日、イーストラザフォードで行われたW杯グループCの試合会場へ向かうため、NJトランジットの駅に到着したファン

ブルームバーグが確認した社内文書によると、S&Pグローバルは、ニュージャージー州イーストラザフォードにあるNYNJスタジアムで試合が予定されている5営業日について、ニューヨーク本社の従業員に在宅勤務を検討するよう求めた。同社は従業員向けメールで、「困難な通勤を避けるため」として、週2日の出社義務を一時的に免除すると説明した。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ゴールドマン・サックスを含むウォール街の金融機関も出社方針を一時的に緩和している。S&Pグローバルはコメントを控えた。ゴールドマン・サックスはコメント要請に応じなかった。

ただ、すべての雇用主が従業員に在宅勤務を指示したわけではない。アマゾン・ドット・コムは従業員にメールを送り、試合開催日は時間通り出社できるよう早めに家を出ることを助言するとともに、交通渋滞を避けるための公共交通機関の利用方法を案内した。

接客業や医療、製造業などで働く多くの労働者は出勤を続けるしかない。ギャラップの調査によると、米国の労働者のうち、在宅勤務が可能な職に就いているのは半数にとどまる。

アトランタで南部料理レストランチェーン「T’s・ブランチ・バー」を経営するテネシャ・マレー氏は、試合開催日に4店舗の営業時間を2時間延長するため、4月から追加スタッフの採用を始めた。マレー氏によると、先週アトランタで8試合のうち最初の試合が開催された際、本人と従業員は通勤時間が3倍になることを覚悟していた。

しかし、多くのオフィスワーカーが在宅勤務となったことで、道路は予想外に空いていた。

マレー氏は「驚くことに、交通渋滞は全くなかった」と語り、「みんな大ごとになると騒いでいたが、実際には何事もなかった。道路は、かつてないほど空いていた」とも話した。

原題:Work From Home? For World Cup, Even JPMorgan Says Yes (1)(抜粋)

--取材協力:Spencer Soper.

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