“シン・小泉劇場”がもたらす「危うさ」の側面

小泉氏が防衛省・自衛隊にもたらした変化について、こんな声があがっている。

「もはや“シン・小泉劇場”だ。この勢いのおかげで難しい政策も国民に理解をしてもらえるだろう」(防衛省幹部)

「小泉劇場」とは、小泉氏の父である小泉純一郎氏が総理在任中に1日2回、記者からのぶら下がり会見に応じ、キャッチーなフレーズとともに持論を展開したことで幅広い注目を集めた事象のことである。

SNSを通じた国民へのダイレクトな発信は、確かに“シン・小泉劇場”と揶揄されるかもしれないが、リスクもはらんでいるともいえる。

今年4月に現役の陸上自衛隊員が自民党の党大会で歌唱した問題では、当該の隊員との写真を添えて一時は称賛する文章を個人のSNSへ投稿したが、のちに「出席をするといったことについての報告がなかった」として投稿を削除している。また、中東情勢の悪化を受けて準備されていた自衛隊派遣について、正式な準備依頼がなされる前に“フライング投稿”してしまったことも記憶に新しい。

今回の名大祭に関連する防衛省公式SNSでの投稿については、大学の自治への介入という批判も一部あがっていて、国家権力である防衛省が「看過できない」と圧力をかける構図に見えるリスクもはらんでいる。

小泉氏の持つ「わかりやすさ」や「発信力」、前のめりな姿勢は、一歩間違えれば「強権的な印象」を与えかねない両刃の剣であるとも言えるだろう。防衛省の情報発信力の向上はこれからの安全保障環境において国民の理解を得るために必要不可欠であることは事実でもある。

主義・主張・見解・認識・事実関係の公表は国民の理解を必要とする安全保障政策において欠かせない。その一方で、わかりやすさが表面的なものだけであってはならないし、「エモーショナルな世論誘導」や「批判勢力へのカウンター」へ変質することがないよう、注視しなければいけない。

殻を破って積極的な情報発信に努めることは重要だが、自らに都合が悪い時に殻に閉じこもることがないよう、厳しい見方も必要だ。

現場で勤務にあたるある自衛隊員の冷静な言葉が印象に残っている。
「いくら組織の発信が変わっても、世間の常識にちょっと近づいただけですよ。」

“シン・小泉劇場”はどのような展開を迎えるのだろうかー。

TBS報道局政治部・防衛省担当 渡部将伍