利上げ観測の高まりがオーバーキルの懸念につながった

6月17日の米国株式市場は、FOMCがタカ派的だという解釈が広がる中、軟調な展開となった。この日に公表された5月の小売売上高は好調な結果となったが、FRBが利上げを実施した場合のオーバーキルのリスクが意識された模様である。短期的に、FRBのタカ派化が株式市場のリスクになる可能性がある。株式市場には高値警戒感があるとみられ、FRBのタカ派化をきっかけに調整する場合、資産効果による消費の下支え効果も減退するという不安が広がるだろう。

もっとも、後述するように、FRBは長期的に利上げを進めていくスタンスは示していない。仮に景気やインフレをオーバーキルしてしまうリスクが高まったと解釈すれば、すぐにハト派化するだろう。今回のFRBの(短期的な)タカ派化は、①AI投資ブームを加速させないため、②インフレ高進には対応をしていくという姿勢を示すため、という2つを目的としたパフォーマンスだろうと、筆者はみている。言い換えれば、ビハインドザカーブのリスクを最小化させるために必要なポーズである。したがって、利上げを実施する前に市場が警戒感を強めれば、実際に利上げを実施する必要はないだろう。仮に、株式市場が調整したとしても、それは短期的なものにとどまる可能性が高い。

なお、株式市場にとってのペイントレードは、金融政策によるオーバーキル不安といった人為的なものへの懸念ではなく、実際に経済指標に悪化の兆候が見られることによるリスクオフだろう。雇用統計が大幅に悪化するようなことがあれば、株式市場はある程度まとまった幅で調整するだろうと、筆者はみている。

インフレ予想が一段と低下し、利上げの必要性は低下

6月17日の米国債券市場は、タカ派的なドットチャートに反応し、イールドカーブが大幅にフラット化した。長期金利は前日差+4.7bp、2年金利は同+13.3bpとなった。FRBが26年中の利上げを実施する可能性が高まったことで、インフレ予想がまとまった幅で低下した。10年インフレ予想(BEI)は前日差▲3.5bpとなり、イラン情勢が悪化する前(2月末)の水準まで低下した。10年実質金利は利上げ観測の高まりによって同+8.5bpと上昇したものの、5年実質金利が同+14.5bpと大幅に上昇したことなどを考慮すると、景気の先行き見通しが改善した(長期の政策金利パスが高まった)とは言えない。
超長期金利(30年)が同▲1.2bpと、小幅に低下したことも、利上げ観測の高まりを起点に景気やインフレのオーバーキルが意識されたことの証左だろう。株価が下落したように、債券市場でもオーバーキルの懸念が意識された。
FF金利先物市場では、9月FOMCまでに約80.4%、10月FOMCまでには約105.9%の確率で利上げが織り込まれた。26年中の織り込みについては、約1.53回となった。タカ派的なドットチャートを反映して利上げ観測が大きく高まったが、26年のドットチャートの中央値は1回利上げであり、利上げなしや利下げは合計で9票もある。市場の利上げ観測はやや高まり過ぎてしまった可能性がある。

今後を展望すると、米国のイールドカーブは(1)利上げ観測が落ち着いてブルスティープ化するか、(2)利上げ観測が高まってベアフラット化するか、のいずれかの動きを続けることになるだろう。長期金利は大きく動きにくい展開となりそうである。その後、(おそらく夏から秋ごろにかけて)(3)経済指標の結果が弱めとなり、イールドカーブがパラレルに低下していくだろうと、筆者は予想している。