国別見聞録

実際北欧諸国を見て回ると、ジェンダーギャップが小さいせいか、日本とはずいぶん異なる「夫婦の姿」が目についた。

【デンマーク(コペンハーゲン)】

土曜日だったこともあり、市内の中心にある噴水広場で多くのカップルや親子が遊んでいた。

とにかく気になったのは、地元の女性が1人で子どもを連れてうろうろするという姿を見かけなかったことだった。その一方で、父親とみられる男性たちは、子どもを前車輪の前につけた大きな「箱」にのせて(1人~4人乗車可能)ぶんぶんと走り去っていく。

デンマークには「ママチャリ」という言葉(文化)は恐らくないだろう。

あまりにも「パパチャリ」ばかりが行き交う姿は、男性の体格が体格だけに子どもたちが小さく見え、かわいらしいオーラを放っていた。そして、男女と子ども連れの場合は、100%、男性がベビーカーを押していた。

中でも面白かったのは、2組の家族(男性と女性が2名ずつ、こどもが4名)の姿であった。前輪に大きな箱のついた(車いすマークもついていた)2台の自転車を男性2人が押しており、男性の1人が子ども2人を乗せたところ、残る2人の子どもも一緒がいいとばかりに乗り込んで4人乗車となってしまった。では、もう一人の男性は空の箱を輸送するのかと思っていたその時だった。当然のようにママらしき女性が2人、もう1台の箱に乗り込んだ。男性は少しばかり発進時によろけたが、そのまま平時のような何食わぬ顔をして、走り去っていった。

【ノルウェー(オスロ、ベルゲンなど)】

こちらは平日の周遊だったが、目に映る風景はコペンハーゲンと大差がなかった。ショッピングモールでは男女がセットで動いており、いわゆる「ママと赤ちゃん」的な姿がみられなかった。そして日本と大きく異なるのは、モール内で夫婦が別々に行動していないことだった。パパが子どもを見ている間にママが買い物をする、ということではないのである。

また、この時期の北欧は日没が22時近いため、仕事後に街でレジャータイムをエンジョイする人々が少なからずといった様子であった。食事をする際は、男性が赤ちゃんを抱っこ、もしくは小学生くらいまでの子どもたちの相手をしており、女性にまずは食事をさせる、というのが当たり前となっていた。北欧の女性たちは日本の男性の平均もしくはそれ以上の身長があり、日本人男性以上の体格を誇っている方が大半だったが、それでもさらに男性は平均身長が190センチあたりにあるため、男女の体格差がしっかりある。体格の立派な方が子どもの相手をしている姿は、ほほえましいというよりも極めて合理的に筆者の目には映った。

【スウェーデン(ストックホルム)】

大きな都市であり歴史ある建物が並ぶ美しい観光地ということもあって、現地のカップルが目立つという感じではなかったものの、やはり日本のように現地女性が子どもを連れて歩く「母子一体」的な姿は見られなかった。また、郊外の王室が住居としている宮殿付近では、夫婦が小さい子どもを連れてのんびり遊ばせている姿を見かけたが、やはり男性の方が手のかかる子をしっかりと見ている姿が目立っていた。勿論、ベビーカーを押しているのは男性であった。日本とは異なり地震がない国々のため、古い町並みが保存されている北欧では、中世を彷彿とさせる道路も少なくない。これは北欧以外の欧州でも似たような話であるが、石畳を走行するベビーカーは非常に車輪がしっかりしており、重量もあるため、それに子どもが乗るとなると(乗らなくても、であるが)当然、男性の方がらくらく走行させることが出来る。

ここで「なんだ、そういう事情なら仕方がないかな・・・」と思った読者は、よほど「育児は何が何でもまずは女性がするもの」アンコンシャスバイアスが強いことを自覚されたい。子育ては実際にやってみればわかるが、かなりの肉体労働である。そのため、男性が前に出て取り組んでいる北欧の景色は、育児経験者の筆者にとっては、どこまでもナチュラルな姿に感じられた。

余談であるが、スウェーデンには北欧最大の騎士団が存在することもあり、王城周辺を警備する兵士の姿が心に残っている。徴兵制は男女関係なく応募可能であり(応募制であり、皆兵制ではないとのこと)、しっかり女性の騎士が存在し、活動している姿が印象に残った。ちなみに、他の3国も城を守る兵隊に女性の姿が必ず見られた。

【フィンランド(ヘルシンキ)】

フィンランドの現地男性ガイドの話によると、現在のヘルシンキ市議会は7割が女性議員とのことで、北欧の中でも極めて女性の発言権が強いエリアであるとのことだった。女性の発言力が強いこともあり、離婚は5割との話だが、そこに付随するコメントが北欧ならではで、「妻に離婚されないように気を付けたい」とのことであった。そこまで離婚が多いと子を持つママたちは悲惨なのではないか、というのは男女の賃金格差がOECD38ヵ国でワースト2位の日本の話で、国民総番号制の歴史が長い北欧では、養育費が支払われない(逃げられる)ということがないとのことである。父母関係なくどこにいても、給与が日本でいうところのマイナンバーに紐づいているため、そこからしっかり払われるという。

フィンランドが同様の制度かはわからないが、スウェーデンでは子どもがいる夫婦は協議離婚が認められていない。裁判によって離婚後の子どもの養育が決定されることも含めて、離婚後の子どもの生活が不安定にならないための経済環境(男女の均等雇用)の整備が進んでいる、真の「こども真ん中」社会を感じる機会であった。

知識としていくら北欧のジェンダーギャップを知っていたとしても、現地で目にした「夫婦の姿」に衝撃を受ける日本人はきっと少なくないだろう。

筆者が研究しているテーマの1つである「東京一極集中」において、大災害をきっかけに県外就職した若者の転出超過が、災害とは無関係にその後ずっと止まらなくなる理由として「若者が外の雇用の風を知ること」がある。これへの対策に通じるものがあるが、まずは「その先へ」、自らが出向いてみることが大切である。

いずれにせよ「百聞は一見に如かず」、“Every wall is a door.” 「すべての壁は扉である」であり、極東の「日の出る国」である島国に暮らす日本人が、地続きの激しい戦争の長い歴史をもつ遠い他国の現状に触れてみることは、とても重要なことではないかと強く思ったところである。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子)