ソフトバンクグループは、保有する米OpenAI株式を担保とした60億ドル(約9600億円)のマージンローン(証券担保ローン)による資金調達計画について、融資候補先との協議が停滞していることが分かった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

非公開情報のため、匿名を条件に語った複数の関係者によると、ソフトバンクGは他の調達手段を模索している。一方で、将来的に同ローンによる調達計画を再開する可能性も残されているという。同社は数週間前には調達目標額を当初の100億ドルから60億ドルへ引き下げていた。協議が停滞している理由は明らかになっていない。

Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg

資金調達を巡る協議はいったん中断された後に再開されることもあるが、今回の計画についてソフトバンクGは現時点で具体的な見通しを示していないと関係者は話した。協議が停滞する前の段階で同社は約50億ドル分の融資を確保していたが、それが口頭によるものか書面によるコミットメントだったかは不明だという。

ソフトバンクGの広報担当者はブルームバーグ・ニュースの取材に対し、コメントを控えるとしている。同社株は10日の取引で一時前日比10%下落した。

今回の協議停滞は、対話型人工知能(AI)「ChatGPT」を手がけるOpenAIが新規株式公開(IPO)に向けた手続きを進める中で、一部の融資候補先が同社株を担保とするローンへの評価を前向きなものへと変えつつあったタイミングで明らかになった。

OpenAIは9日、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)のための申請書類を非公開で提出したと発表。同社はゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレーと連携し、早ければ今秋にも上場する可能性がある。

巨額投資に市場の視線

市場では、ソフトバンクGがOpenAIに対し総額600億ドル超の資金拠出を確約していることへの注目が高まっている。競合のアンソロピックが技術的成果を相次ぎ公表したことでOpenAIの競争力や収益化見通しを巡り投資家の見方が分かれており、関係者によるとソフトバンクG内部でも一部幹部から投資規模を懸念する声が上がっていた。

これまで非上場企業のOpenAIの評価額算定の難しさを理由に、一部の貸し手が慎重な姿勢を見せていた。関係者によると、こうした反応を受けソフトバンクGは融資規模の縮小を余儀なくされていた経緯がある。

アライアンス・バーンスタインのアジア・クレジット調査責任者、フア・チェン氏は「このマージンローンははるかに大きな全体像の一部分に過ぎず、資金調達能力の明確な悪化が見られない限り、それ自体を警戒シグナルとはみていない」と言う。

また、最良のシナリオは「OpenAIが上場し、ソフトバンクGが保有株の一部を売却して債務返済に充てること。それがクレジット投資家が望む展開と一致する」とも語った。

ソフトバンクGは、OpenAIへの出資について400億ドルのブリッジファシリティ契約を結んでいる。2027年3月までの返済が必要で、保有資産や各種調達の活用により順次返済する方針を示している。

もっとも、ソフトバンクGには追加の社債発行や他の保有株式を活用した借り入れの選択肢も残されている。

同社はAI戦略の拡大も進めており、先月末にはフランスでの大規模なAI向けデータセンターの構築に、最大750億ユーロ(約14兆円)を投じる計画を発表。同国が欧州を代表するAIインフラの拠点になるとの見方を示した。

同社の保有資産には半導体設計子会社の英アーム・ホールディングスや米インテルが含まれ、株価はAIブームに乗り今年の上昇率はそれぞれ197%、192%となっている。10日のソフトバンクG株は下落しているものの、年初来では約45%上昇し、OpenAI投資に伴う評価益を背景とした利益拡大期待から上昇基調にある。1日には時価総額がトヨタ自動車を上回り、国内首位となった。

信用市場でも投資家心理の改善がうかがえる。ソフトバンクGの信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、4日時点で約307bp(1bp=0.01%)と5月20日に付けた直近のピークから約61bp縮小した。

(4段落以降に株価情報やアナリストの見解を追記)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.