米アルファベット傘下のグーグルは、アンソロピック向けデータセンターを支える資金調達で信用補完役としての存在感を強めている。アンソロピックに早い段階から出資しており、その後も投資を重ねてきた。AIに巨額資金を投じる大手テクノロジー数社の間で複雑な事業関係が広がっている構図が浮き彫りになっている。

対話型AI「Claude(クロード)」を手掛けるアンソロピックは、大手テック企業グーグルの支援を受け、5カ所のデータセンターで高性能コンピューターチップをリースしている。

AIアシスタント「Gemini(ジェミニ)」などのAIサービスを展開するグーグルは、各データセンター拠点でアンソロピックによるリース料支払いを保証することで合意し、アンソロピックが350億ドル(約5兆6100億円)規模の融資に相当する資金を得るのを後押しした。今回の大型資金調達を通じ、アンソロピックがこれら5カ所のデータセンターと結び付いている構図は、これまで報じられていなかった。

シリコンバレーがAIインフラ整備を急ぐ中、主要企業はアクセス確保を狙い、複雑でしばしば循環的な取引を互いに結んでいる。グーグルは巨大なバランスシートを活用してデータセンター整備に資金を供給しているが、その支援はアンソロピックに利益をもたらすだけにはとどまらない。グーグルは、アンソロピックが最終的にデータセンターで利用するチップの供給元でもあるため、AI業界の将来を大きく支える存在とされるアンソロピック向けに、ハードウエア供給を拡大する機会を得ることになる。

今回の案件には米半導体設計会社のブロードコムが関与している。同社は影響力と最高水準の信用格付けを生かし、グーグルが独自開発のAI半導体「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」をAIモデル開発会社アンソロピックに提供するための資金調達をまとめるのを支援した。グーグルとアンソロピックは以前から提携関係にある。両社は2025年にTPUを巡る長期提携を結び、2カ月前にはグーグルがアンソロピックに100億ドルを投資することで合意した。

テクノロジー企業の連携

大手テクノロジー企業同士を結び付ける案件が相次いで明らかになっている。スペースXは先週、26年10月から29年6月までコンピューティング能力をグーグルに提供し、その対価として月額9億2000万ドルを受け取る契約を結んだと発表した。

マリナー・インベストメント・グループ傘下のブライト・メドウで証券化クレジット戦略責任者を務めるジョー・アレン氏は「1年前には、これだけのインフラ支出を支える十分な需要が本当にあるのかと考える向きもあった」と指摘。ただ、「実際には、利用可能なインフラの量が今でも制約要因となっており、各社はアクセス確保のためにあらゆる手を尽くしている」と述べた。グーグルとアンソロピックの関係について具体的には言及しなかった。

アンソロピックはコメントを控えた。ブロードコムとグーグル親会社アルファベットの担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。

同じ業界の大企業がビジネス関係を結ぶのは珍しくない。それでも、AI業界における集中は監視の目を集めている。過去の一部案件では、企業同士が互いに支え合う、循環的な構図への懸念が生じた。問題が起きれば提携先に連鎖し、悪影響が拡大する可能性があるためだ。24年、米連邦取引委員会(FTC)は「AIプロバイダーとの企業提携と投資を精査する」ための調査を開始した。

ブロードコム本社(カリフォルニア州サンノゼ)

今回の350億ドル規模の案件では、ブロードコムが半導体を設計し、グーグルがそれを開発。アンソロピックが米国内5カ所のデータセンターで利用する構図だ。米投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントとブラックストーンが資金を提供している。

暗号資産(仮想通貨)マイニング会社からデータセンター運営会社に転じたテラウルフは、ニューヨーク州バファロー近郊のレーク・マリナー・キャンパスと、テキサス州アバーナシーに二つの施設を開発している。非公開情報だとして匿名を条件に、事情に詳しい関係者が明らかにした。

同じく暗号資産マイニングからデータセンター運営に事業転換したサイファー・デジタルは、テキサス州コロラドシティー近郊で1カ所を開発。暗号資産マイニングとデータセンター運営を手掛けるハット8は、ルイジアナ州セント・フランシスビルでデータセンターを準備している。

米ヘッジファンド運営会社コーチュー・マネジメントのテクノロジー特化投資会社ネクスト・フロンティアと、英スタートアップのフルイドスタックによる合弁会社は、インディアナ州サリバン郡で施設開発を進めている。

「グーグルによる保証」

これら企業は過去9カ月の案件ラッシュで、データセンター建設費を賄うため150億ドル超の債券を発行した。いずれの案件にも、AIクラウドプラットフォームのフルイドスタックによるリース契約が含まれている。

各債券案件には、いわゆる「グーグルによる保証」が付いている。フルイドスタックが債務不履行に陥るか破綻した場合、この信用補完により、グーグルが債券保有者への返済を肩代わりする。グーグルの支援が発動するのは、データセンターが稼働し、フルイドスタックがリースを開始した後となる。

アンソロピックはフルイドスタックと重要な契約を結んでおり、この契約が一連のデータセンター案件をつなぐ役割を果たしている。昨年11月、アンソロピックは米国のコンピューティングインフラに500億ドルを投資すると発表した。同社はその際、アンソロピック向けに専用設計されたデータセンターを巡り、フルイドスタックと協力していることを明らかにした。

メットライフ・インベストメント・マネジメントのレバレッジドファイナンス共同責任者、ジョン・ヨバノヴィッチ氏は「投資適格未満の債券市場では、われわれは基本的に、『つるはしとシャベル』、つまりインフラ設備一式に資金を出している」と説明。「ただ、案件はかなり分かりやすい。ほとんどの発行体について、われわれは実質的にマグニフィセント・セブンの信用リスクを取っている」と述べた。

マグニフィセント・セブンとは、アルファベットやエヌビディアを含む米主要テクノロジー企業7社を指す。

ゴールドマン・サックスのクリスティーナ・ミニス氏

優良テクノロジー企業が案件成立のために資金面の支援を約束するのは珍しくない。AIインフラ案件にはスタートアップや金融機関が慎重姿勢を示しやすい企業が関わる場合が多く、友好的なテクノロジー大手による支援は懸念を和らげる。

ブルームバーグ開催の「グローバル・クレジット・フォーラム」で、ゴールドマン・サックス・グループのオルタナティブ・オリジネーション部門グローバル責任者、クリスティーナ・ミニス氏は、少数企業がAIインフラ分野に集中するリスクが一部にあると警告した。一方で、聞いたこともないような小規模企業が、同氏の部門の案件パイプラインに次々と入ってきているとも述べた。

同氏は「確かに、ある程度の集中はある。ただ、経済全体に広がっており、建設的だと考えている」と発言。「われわれが今、関係構築を進めようとしている企業の数は驚くほど多い」と語った。

原題:Google’s Backstops Underpin $35 Billion Chip Deal for Anthropic(抜粋)

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