(ブルームバーグ):日本株市場における人工知能(AI)相場の第2章は、これまでのリード役だった半導体フラッシュメモリーのキオクシアホールディングス、AI企業に投資するソフトバンクグループに頼らない分散型に変貌しそうだ。2社のボラティリティの高さを敬遠し、多額の資金を動かす機関投資家の動きが慎重になりつつある。
ハイパースケーラーと呼ばれる大型クラウドサービス企業の設備投資意欲に陰りが見えず、世界的なAI相場が続いている。特に4月以降は特定銘柄への集中度合いが強まり、日本でもキオクシアHD株が年初来約8倍、ソフトバンクGが約60%高とテクノロジー企業の影響が大きい日経平均株価の約30%高を圧倒。両社の時価総額は今月に入り、長年トップのトヨタ自動車を一時逆転した。
ただ、ここへきて2社の株価に過熱感や割高感が強まった結果、一時的に急落するなど値動きが激しくなっている。オプション価格を基に算出する予想変動率も急上昇し、ソフトバンクGの3カ月物アットザマネーは100%超と異例の高水準だ。市場では、将来の成長期待からAI銘柄への投資配分は維持しつつ、短期的には価格変動に強いポートフォリオへの移行が予測され始めた。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、AI相場の中期的なモメンタムは崩れていないが、最近ボラティリティーが高まっている点には警戒が必要と分析。「プロの機関投資家ほど、AI銘柄からそれ以外の銘柄、AIの中でもボラティリティーが低いものに一時的な選別が進む可能性はある」とみる。
大和証券デリバティブ・トレーディング部の塩住真吾担当部長も、ソフトバンクGやキオクシアHDの個別株オプションのプレミアム上昇が足元で顕著だとし、「株価が実際に動いているので、それに応じて買われている面もあるが、ここまで急激に予想変動率が上昇することはなかなかない」と言う。
AI関連株を保有し続ける上で、主要銘柄が不安定化したリスクをどのようにヘッジするかは投資家にとって喫緊の課題だ。
日本株ロングショート戦略のヘッジファンド、RFMの西村光彦最高経営責任者(CEO)はリスクとリターンのバランスを示すシャープレシオを機関投資家は重視しており、「いくらリターンを出せても、ボラティリティーが高まれば望ましくない」と指摘。変動が大きくなればその分ポジションを落とし、ボラティリティーの低い業界に投資するマンデート(指示)が顧客から来やすいと話す。
西村氏は今後の展開について、電線や積層セラミックコンデンサー(MLCC)、電子材料などのAI関連銘柄から医薬品や自動車、食料品など他の業種に資金が移っていくと予測。一方、モルガン・スタンレーMUFG証券の中沢翔ストラテジストは、中長期的な上昇が見込まれるAI関連銘柄の中でも今は選別が必要だと強調した。
中沢氏は、これまでも半導体製造装置から電線、光学、パワー半導体、熱処理と「ボトルネックを評価しながら順繰りにローテーションしている」とし、当面は総合化学やパワー半導体・熱処理関連に注目すると言う。総合化学など前工程の素材関連は中東情勢の影響でアンダーパフォームしてきたが、中東が落ち着けば「原材料高騰のインパクトも和らぎ、戻しが期待できる」と読む。
AI関連銘柄に対する世界的な投資人気は根強く、今週も米国の半導体関連株の反発が日本や韓国、台湾などアジア市場に波及している。
もっとも中沢氏は、短期的にAI関連銘柄は一部銘柄への集中度が高まっているほか、景気の循環に敏感なシクリカル株のディフェンシブ株に対する割高感が歴史的な高水準に達しており、下落リスクを内包する相場環境だとも話した。
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