(ブルームバーグ):韓国株を巡る楽観論の波に陰りが見え始めている。上昇相場があまりにも急速に進み過ぎたとの懸念から、一部の投資家はポジションのヘッジや、過度に集中した取引の縮小に動いている。
ヘッジファンドのゴールデン・ホース・ファンド・マネジメントはエクスポージャーを縮小し、デリバティブ(金融派生商品)による下落リスクへの備えを強化してきた。一方、M&GインベストメンツはAIサプライチェーンの川下に位置する企業へ投資対象を広げるため、メモリー株やファウンドリー株の保有を減らした。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がiシェアーズMSCI韓国上場投資信託(ETF)のオプション取引を分析したところ、投資家が下落への備えを求めていることが示された。同ファンドは5日の米国市場で14%下落した。
こうした動きは、世界の資産運用会社が直面する課題を浮き彫りにしている。韓国総合株価指数(KOSPI)の大幅上昇に寄与したサムスン電子とSKハイニックスに対する強気姿勢は依然として維持されているものの、多くの投資家は新たな資金の投資先をより慎重に選別し、他市場での機会に備えて現金を温存している。
5日の米ハイテク株売りは、金利上昇への懸念が引き金となったもので、投資家心理が変化すれば人気の取引がいかに急速に巻き戻され得るかを示した。このリスクは週明けの韓国市場に波及する可能性がある。
ゴールデン・ホース・ファンドのマネジングパートナー、イー・リン・オン氏は「ここ数週間、エクスポージャーを段階的に縮小し、デリバティブによるヘッジを積み増してきた」と述べた。
同氏によると、今月予定されているスペースXの上場を含む複数の大型新規株式公開(IPO)に参加するための資金確保を目的に、投資家の間でポートフォリオの入れ替えが進む可能性がある。
過去1年間、韓国株はAIブームと政府による企業改革の成功を背景に世界の注目を集め、指数は過去最高水準へ押し上げられた。堅調な利益成長期待が依然として強気心理を支えているが、長期化した上昇相場により一部の主要銘柄への資金集中が進み、市場は急激な反転に対して脆弱(ぜいじゃく)になっている。主要指数は5日、一時7%下落した。
こうした警戒感はデリバティブ市場にも表れている。
BIのグローバル・チーフ・デリバティブ・ストラテジスト、タンビール・サンドゥ氏は「論点はKOSPIの投資ストーリーに魅力があるかどうかではなく、これまでの利益の一部を失うことなく、どう投資を継続するかだ」と述べた。同氏によると、iシェアーズMSCI韓国ETFのオプション取引では投資家の慎重姿勢が強まりつつあり、上昇余地を狙う需要から、下落リスクに対する備えへと需要がシフトしているという。
一部の投資家は、サムスン電子やSKハイニックス以外にも機会を探している。両社は株価急騰によって時価総額1兆ドルクラブ入りを果たし、韓国市場が一時的にインドを抜いて世界第6位の株式市場となる一因となった。
M&Gのポートフォリオマネジャー、ビカス・パーシャド氏は、アルファ(超過収益)の源泉はバリューチェーンのさらに下流、つまりAIインフラ投資の恩恵を受けながらも、取引の中心には位置していない企業群にあると述べた。
弱気転換ではない
もっとも、こうした資金シフトは投資家が韓国市場に弱気になったことを意味するわけではない。バリュエーションは競合するハイテク拠点である台湾より依然として割安であり、投資家は韓国市場が世界株式市場の中でも有力なAI関連投資テーマの一つだと見ている。
ブルームバーグが集計したデータによると、KOSPIの予想株価収益率(PER)は8.6倍で、過去5年平均の10倍を下回るほか、約20倍で取引されている台湾の主要指数と比べても割安だ。
利益予想の上方修正も市場全体へ広がり始めている。ゴールデン・ホース・ファンドによると、サムスン電子とSKハイニックスを除くKOSPI構成銘柄の利益成長率見通しは今年50%超となり、1月時点の20%から大きく上昇した。

ガマ・アセット・マネジメントのグローバル・マクロ担当ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は「上昇ペースは目まいがするほど急だが、この種の市場では上昇が続くならその流れに乗りたい」と述べた。その上で「今ここで市場から退出すれば、その後市場が調整しなかった場合に再投資するのは非常に難しくなる」と語った。
それでも、海外投資家の資金流出は懸念材料となっている。世界のファンドは今年、過去最大となる760億ドル(約12兆2000億円)を引き揚げており、過去1カ月にわたって毎営業日売り越している。この資金流出の一部は個別銘柄の保有上限に関する技術的制約によるものだが、その売りを吸収しているのはより短期志向の個人投資家であり、こうした構図は市場の変動性を高める可能性がある。
同時に、一部の投資家は個人投資家のレバレッジ拡大を警戒し始めている。レバレッジ型ETFの人気や、導入予定の個別株ウィークリーオプションによって、もともと変動の大きい市場の値動きがさらに増幅される恐れがあるためだ。
オプティバーのアジア地域デリバティブ機関投資家営業責任者、ステファン・マルタン氏は先週開催されたブルームバーグのボラティリティ・フォーラムのパネル討論で、「これらの商品は非常に興味深く、個人投資家の参加拡大を示している」と述べた上で、「相場が反転した場合、市場はやや不安定な状況に置かれる可能性がある」と警告した。
原題:World’s Hottest Market Has Korea Bulls Reaching for Protection(抜粋)
--取材協力:Bernadette Toh、Bing Hong Lok.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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