米国の労働市場が力強さを取り戻したことが、5日公表の5月の雇用統計で示された。インフレ再燃への懸念が強まるとともに、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の一部が主張する年内利上げ論を後押しした。

FRBの新議長に就任したケビン・ウォーシュ氏にとって、こうした見通し変化は早くも試練となる。ホワイトハウスから借り入れコスト引き下げを求める圧力をかわしながら、物価抑制に必要な手腕を備えていると市場に納得させる力量が問われる。

ウォーシュ氏の議長就任後初の連邦公開市場委員会(FOMC)となる6月16、17両日開催の会合後の声明で、早期利下げを示唆する文言を削除すること自体は比較的容易だとFRBウオッチャーらはみている。難しいのは、インフレをどう抑制する考えなのかを示すことだ。

ネイビー・フェデラル・クレジットユニオンのチーフエコノミスト、ヘザー・ロング氏は、「ウォーシュ氏はインフレに対して非常に強硬な姿勢を示さなければならない」と指摘。「そうでなければ債券市場の信頼を失うことになる」と述べた。

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ウォーシュ氏は2006-11年にFRB理事を務めていた当時、熱心なインフレ警戒派として知られていた。しかしFRB議長への指名を前にした数カ月間は利下げを支持し、低金利を正当化する要因がいずれ現れるとの見方を繰り返し示していた。トランプ米大統領は、同氏を議長に起用した理由の一つとして、利下げに前向きだったことを挙げている。

トランプ氏は5日に記者団から、新FRB議長は利下げすべきだと思うかと問われた際、その判断はウォーシュ氏に委ねると述べた。一方で、金融市場がインフレを過度に重視しているとの見方も示し、「成長はインフレを意味しない!」とSNSへの投稿で主張した。

しかし、見通しは数カ月前から大きく変化した。当時のFRB当局者はインフレよりも雇用市場の軟化を懸念しており、多くが年内追加利下げの可能性を見込んでいた。

雇用統計に先立ち発表された4月の物価指標では、FRBが重視するインフレ指標は前年同月比3.8%上昇と、2023年以来の高い伸びを記録した。主因はイラン戦争によるエネルギー価格上昇だった。

市場ではすでに、26年末までにFRBが少なくとも1回利上げを実施するとの見方が広がっている。エコノミストの予想も変化している。BNPパリバは、FRBが12月に利上げを開始し、その後数カ月にわたり追加利上げを実施して、2025年に行った0.75ポイントの利下げを巻き戻すと予想している。

BNPパリバのアナリストは顧客向けリポートで、「きょうの力強い雇用統計は、われわれの見方を後押しするものだ」と指摘した。

もっとも、エコノミストらは今回のデータの解釈に当たり一定の留意点も指摘する。6月から7月にかけて米国が共催するサッカーのワールドカップ(W杯)に関連した大規模採用が押し上げ要因となっており、大会終了後には雇用の伸び鈍化や反動減となる可能性もある。その場合、今回の雇用回復は一時的に終わるかもしれない。

それでも、堅調な雇用情勢を受けて市場の焦点はインフレに向かっている。

相次ぐ警戒の声

4月のFOMC議事要旨によると、インフレ率が目標の2%を持続的に上回り続ける場合、利上げを検討する必要が生じる可能性が高いと当局者の過半数が指摘した。同会合では政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.5-3.75%に据え置いた。

その後、こうした警戒感はさらに強まっている。

昨年の利下げ論を主導したクックFRB理事とウォラー理事は、それぞれここ数週間で、インフレは望ましくない方向に向かっており、利上げが必要になる可能性があるとの見方を示した。

クリーブランド連銀のハマック総裁も、5日の雇用統計発表を受けて、金融引き締めが必要になる可能性があるとの見方を改めて強調した。

ハマック総裁はSNSへの投稿で、「経済見通しを巡る不確実性を踏まえれば、現時点では金利を据え置くことが妥当だ」と指摘。「しかし最近の傾向が続けば、近く行動を起こすことが適切になる可能性がある」と述べた。

ウォーシュ氏に注目

先月の就任以降、金融政策について公の場で発言していないウォーシュ氏は、6月のFOMC会合後に記者会見を開く予定だ。経済見通しや今後数カ月の金利運営方針について自らの考えを示す最初の機会となる。

同時にFOMCは、政策当局者による最新の経済見通しも公表する。そこでは3月時点の予測と比べて、インフレ率や政策金利の見通しが上方修正される可能性が高い。

当局者はFOMC会合前に、来週発表される5月のインフレ指標も確認することになる。エネルギーや商品、肥料価格の急騰による影響が依然として続いていることが示される見通しだ。エコノミストは、5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比4.2%上昇し、3年超ぶりの高い伸び率になると予想している。

原題:Pressure Mounts on Rookie Chair Warsh as Jobs Fuel Fed-Hike Bets(抜粋)

--取材協力:Jonnelle Marte、Maria Paula Mijares Torres.

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