ソフトバンクグループは今週、時価総額日本一の企業になった。トヨタ自動車より高い評価額を得たソフトバンクGだが、創業者の孫正義氏が直面している生き残りを懸けた新規株式公開(IPO)投資マネーの獲得競争を勝ち抜くには、なお十分な規模ではないかもしれない。

グーグル親会社の米アルファベットは1日の株式市場終了後、多様な株式発行を通じて800億ドル(約12兆8000億円)を調達すると発表し、集めた資金を人工知能(AI)向け計算インフラへの投資に充てると説明。前例のない顧客需要への対応が目的だという。

同社は1-3月(第1四半期)決算説明会で、2026年の設備投資額が最大1900億ドルとなり、前年の約2倍に達する見通しを示したほか、2027年にはさらに大幅に増加する見込みと明らかにしていた。

アルファベットによれば、株式による資金調達はAI競争の重要な戦場だ。これは、サム・アルトマン氏率いる米OpenAIの13%株式取得に646億ドルを投じることを約束している孫氏を悩ませそうだ。対話型AI「ChatGPT」を開発したOpenAIが将来上場する時が来たとしても、資金供給の蛇口はすでに閉まろうとしているかもしれない。

パブリック市場からの資金獲得競争は確実に激化している。イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXは今週、最大750億ドルの調達を目指して正式なマーケティング活動を開始する見通しだ。

一方、AIの「Claude(クロード)」を展開する米アンソロピックも非開示でIPO申請を行い、一歩先行している。同社はその直前の資金調達ラウンドで、OpenAIを上回る評価額となっていた。

さらに、グーグルやアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズといったクラウド大手、いわゆる「ハイパースケーラー」も見逃せない。これら4社は今年、AIインフラに合計で最大7150億ドルを投じることを目指している。

アルファベットが新株発行に踏み切った以上、他社も追随する可能性が高い。社債市場ではすでにその動きが見られる。アマゾンは先月、初のスイス・フラン建て社債を起債したが、アルファベットも今年先にフラン建て債を発行していた。

これら巨大企業が膨大な資本を吸収していることで、OpenAIが資金調達市場から締め出されるのではないかとの懸念が浮上している。また、IPO時の評価額が直近の資金調達ラウンドで記録した8520億ドルを下回る可能性もある。

その場合、ソフトバンクGの収益構造は大きく変わる。ソフトバンクGは2026年3月期決算で大幅な増益を報告したが、その主因はOpenAI持ち分に伴う約439億ドルの評価益だった。IPOが不調に終われば、この評価益の一部は減損処理を迫られることになる。

さらに重要なのは、資金余力の乏しいソフトバンクGがアルトマン氏への追加投資300億ドルを履行するため借り入れを行い、流動性の面で課題を抱えていることだ。この資金確保のために実施した400億ドルのつなぎ融資は来年3月に返済期限を迎える。

このため、OpenAIの早期IPOは孫氏にとって必須だ。ユニコーン企業のOpenAIが上場すれば、ソフトバンクGは保有株の一部を売却したり、その株式を担保にマージンローン(証券担保ローン)を調達したりして、銀行団への返済資金を確保できる。

もちろん、孫氏には他の資金調達手段もある。太陽光発電および蓄電事業開発会社として設立された米子会社SBエナジーは、IPOを目指しており、「Roze」と呼ばれるAI・ロボティクス企業を米国に設立し、上場させる計画もある。

しかし、ここでも同じ問題に直面する。巨大企業が市場から資金を吸い上げる中で、こうした専門性の高い企業に投資家の関心が集まるのだろうか。

アルファベットによる今回の株式を通じた資金調達は、戦略的な動きだ。まだ上場していない競合企業の資金調達ルートを先回りして封じ込めようとしているとの見方もできる。

しかし、同程度に説得力があるのは、ハイパースケーラー各社による今年のAI投資額があまりに巨額であるため、利用可能なあらゆる資金調達手段を使い尽くさざるを得ないと思われる市場環境だ。

各社は米国内のドル建て社債市場だけでは足りず、円やユーロ、カナダ・ドルなど外国市場でも起債を進めている。その流れで株式市場に向かうのも自然なことだ。

こうした巨大企業の圧倒的な存在感は、資本市場で同等の影響力を持たないOpenAIやソフトバンクGに影を落としている。IPOという夢を実現するためには、孫氏とアルトマン氏はこれまで以上に巧みな対応を迫られることになりそうだ。

(シュリ・レン氏はブルームバーグ・オピニオンのアジア市場担当コラムニストです。同氏は投資銀行に勤務した経歴もあり、米経済紙バロンズでは市場担当の記者でした。このコラムの内容は意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:Look Who Just Crashed OpenAI and SoftBank’s IPO Party: Shuli Ren(抜粋)

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