(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインはここ1年で36%下落し、今週は7万ドルを割り込んだ。仮想通貨を金融の主流へと押し上げた複数の投資論拠を揺るがす値下がりが続いている。
投資家がビットコイン上場投資信託(ETF)から資金を引き揚げる一方、地政学的緊張が伝統的な安全資産への需要を押し上げている。インフレ懸念が再燃する中で、ビットコインはこうした圧力から恩恵を受けるどころか下落基調をたどり、仮想通貨の投資妙味を巡る主張の一端が説得力を失いつつある。
そうした議論の中で、ビットコインがインフレヘッジとして機能するとの見方ほど繰り返し試されてきたものは少ない。米国の人工知能(AI)ブームに伴う電力需要の急増が送電網に負荷をかけ、エネルギーコスト上昇への懸念を強める中、投資家は再びインフレ長期化の可能性に直面している。
こうした危惧はビットコインの追い風になっていない。ビットコインはむしろ逆方向に動いている。
ビットコインを保有することで、物価上昇と購買力低下をヘッジできるという考え方は、ビットコインの供給量が限定されていることに基づく。中央銀行が供給を拡大できる法定通貨と異なり、ビットコインは2100万枚しか存在しない。支持者らは長年、インフレが加速すれば希少性によってビットコインは金のデジタル版になると主張してきた。
この理論は実際に試されると、揺らぐことが多かった。そして今、再び試練が訪れている。米クリーブランド連銀のハマック総裁は2日、他の金融当局者に続き、インフレリスクが高まっていると警告。最近の物価圧力が続けば当局は近く対応する必要があるかもしれないと述べた。
投資家がビットコインを物価上昇に対するヘッジではなくリスク資産のように扱い続ける中、同総裁の発言は米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレとの闘いが終わっていない可能性への懸念を強めた。
リサーチ・アフィリエーツの調査責任者でデューク大学フュークア経営大学院の金融学教授カム・ハーベイ氏は「短期的なインフレヘッジだと考えてビットコインをポートフォリオに加えているなら、見直す必要があると思う」と述べ、「ランダム性の度合いが非常に高く、失望につながる可能性がある」と指摘した。
米国の消費者はコスト圧力の高まりに直面しており、原油・ガソリン価格の上昇が家計をさらに圧迫している。先月発表された4月の米個人消費支出(PCE)総合価格指数は前年同月比3.8%上昇と2023年以来の大きな伸びとなり、変動の大きい食品とエネルギーを除いた指数は3.3%上昇した。
ここ数週間、ビットコインはリスク資産全般の上昇にも追随できていない。株式相場が過去1カ月に相次いで最高値を更新する一方、ビットコインは約14%下げ6万7500ドル前後で取引されており、昨年10月に付けた過去最高値12万6000ドルを大きく下回っている。
物価高騰の環境でビットコインが持ちこたえられないことは、著名投資家マーク・キューバン氏の怒りを買った。同氏は最近、価値の保存手段として機能しなかったとして保有分の大半を売却したと明らかにし、注目を集めた。
キューバン氏はポッドキャストで「一部の人を怒らせるかもしれないが、ビットコインは筋書きを見失ったと思う」と述べ、イラン戦争勃発後にビットコインが上昇すると見込んでいたと説明した。だがビットコインは逆に動き、金は上放れた。「期待していたヘッジはなく、本当に失望した」と打ち明けた。
失望は広がっているようだ。暗号資産市場のデータを提供するコイングラスによると、デジタル資産の清算額は過去24時間で約15億ドル(約2400億円)に達し、ビットコインがその中心となっている。暗号資産市場でこれほどの清算が発生したのは、相場が直近安値に下落した2月前半以来だ。
一方、暗号資産に批判的な人々は、ビットコインを巡って構築された多数のETFやデリバティブ(金融派生商品)、さらにそうしたデリバティブの上に構築されたデリバティブといった商品が、ビットコインの供給量は限定的との主張を損なっていると論じている。
採掘されるコインは2100万枚に限られるかもしれないが、ビットコインに関係するさまざまな先物や派生商品は永続的に取引されることになる。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「そもそもインフレヘッジだったのか」と問いかけ、「ビットコインには投機や価値の保存以外に説得力のある用途がない。少なくとも現時点ではそうだ。比較的固定された供給量は、需要が増えている時にははるかに魅力的だが、需要が停滞または減退している時にはそうではない」と語った。
原題:Bitcoin’s Inflation-Hedging Promise in Tatters After Plunge (1)(抜粋)
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