(ブルームバーグ):トランプ米政権は2日、日本を含む計60に及ぶ貿易相手国・地域からの輸入品に少なくとも10%の関税を課す案を発表した。連邦最高裁が従来の関税措置を違憲と判断して以来、トランプ大統領による関税政策の立て直しに向けては最大の動きとなる。
米通商代表部(USTR)の声明によると、貿易相手国・地域による強制労働で生産されたとされる製品への対応を調査した結果、カナダやメキシコ、欧州連合(EU)、台湾、英国などからの輸入品には10%の関税が適用される。
一方、日本や中国、インド、韓国、ブラジル、スイスを含むその他の主要貿易相手からの輸入品には、より高い12.5%の関税が課される見通しだ。
USTRは、強制労働による製品の輸入を禁止、あるいは禁止を約束している経済圏からの製品には低い税率を適用すると説明した。一方で、そうした措置を「導入せず、効果的に執行することにも失敗している」とされた国・地域には高い税率を適用するという。
今回の措置は、トランプ氏が昨年導入したものの、違憲と判断された国別関税を復活させるための大きな前進となる。今回提案された関税は、1974年通商法301条による調査に基づいており、当初の関税とは別の枠組みとなっている。

「非常に大きな影響がある。301条は極めて強力な手段であり、覆される可能性は低いためだ」と、シンガポールのヒンリッヒ財団で通商政策責任者を務めるデボラ・エルムズ氏は指摘。「これによって多くの新たな関税・非関税措置への扉が開かれた」と述べた。
株式市場は関税案の発表後も上昇基調を維持した。世界株の指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド指数は0.1%上昇して過去最高値を更新し、アジアと米国の株価指数も史上最高値を付けた。
この関税措置は、世界経済にとっても重要な局面で打ち出されたものだ。金融市場はすでにイラン戦争と、それに伴う原油・天然ガス価格の上昇によって不安定になっている。エネルギー価格の上昇はインフレへの新たな懸念を招いており、米国では有権者の生活費負担への不安が、11月の中間選挙でトランプ氏率いる共和党にとって逆風となる可能性がある。
関税は直ちに発効するわけではなく、導入前にパブリックコメント募集と審査期間が設けられる。その過程で内容が変更される可能性もある。公告によると、書面による意見提出の期限は7月6日で、301条委員会による公聴会は7月7日に始まる見通しだ。

グリアUSTR代表は声明で、「われわれの最も重要な貿易相手が、強制労働によって生産された物品輸入の問題に対処していないことは容認できない。この状況により、米国の労働者が不公平な競争条件の下で世界的な競争を強いられる構図が生じている」と指摘。その上で、「われわれはもはやこうした格差を容認しない」と強調した。
今回の措置は、これまでトランプ関税に対する報復措置をおおむね控え、輸入関税率の引き下げや市場アクセス確保に向けて米国との交渉を選択してきた各国・地域の忍耐力を試すことになる。
オーストラリアの外務貿易省は「オーストラリアから米国への輸出に対するいかなる関税も不当であり、われわれの自由貿易協定に反する」とコメントした。インドの商工省は声明で、「この問題について米国と引き続き協議している」と述べた。
尾﨑正直官房副長官は3日午後の記者会見で、日米政府は緊密に連絡を取っていると発言。今回の発表は最終的なものではないためコメントは控えるとした上で、昨年の合意が引き続き「強固かつ有効であることを再確認している」と述べた。
中国外務省の毛寧報道官は3日の定例会見で、「中国はあらゆる形態の一方的な関税措置に反対する」と発言。「中国にはいわゆる強制労働は存在せず、これを政治的操作の口実とすることに反対する」とした。
関税復活に向けた他の取り組みも
強制労働に関する調査は、トランプ関税の復活を目指す政権の取り組みの一部に過ぎない。米政権はこれとは別に、貿易相手国の過剰生産能力を対象とした一連の301条調査も進めている。
また、今回提案された関税制度には複数の例外措置も提案されている。
一部の国からの衣料品・繊維製品については、より低い関税率で米国市場に輸入できるようになる可能性がある。割当枠は、米国からそれらの国への繊維輸出量に応じて設定される。
また、牛肉、トマト、バナナ、コーヒー、オレンジジュースなどの食品は関税の適用対象外となる。既に別の関税措置の対象となっている金属も除外されるほか、一部の燃料や化学製品も免除される。
1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を無効とした最高裁の判断は、政権にとって大きな痛手となった。通商法301条を根拠とする関税は、トランプ氏が活用を検討してきた他の権限と比べて法的な安定性が高く、柔軟性もあるとみられている一方、発動までにより多くの時間を要する。
トランプ氏はつなぎの措置として、1974年通商法122条に基づき日本を含む広範な国・地域を対象に一律10%の輸入関税を新たに課したが、この関税は7月に失効する予定だ。また122条関税についても現在、司法での争いが続いている。
ヒンリッヒ財団のエルムズ氏は、新たに発表された関税は、パブリックコメント募集や公聴会の終了後、122条関税の失効時期に合わせて導入される可能性が高いとの見方を示した。
グリア氏は、一連の調査を完了させることで、現行措置の失効後にトランプ氏が速やかに新たな関税を発動できるようにすることが目的だと説明している。
今回の措置はまた、米国と中国の間での貿易休戦の安定性にも疑問を投げかける。トランプ氏と中国の習近平国家主席は5月に行われた首脳会談で、世界2大経済大国の関係を管理するため、貿易・投資に関する新たな委員会を設置することで合意していた。
南京大学国際関係学院の朱鋒院長は「今回の措置は中国だけを標的にしているわけではないため、米中間には依然として意思疎通と対話の余地があると考える」と述べた。その上で、「301条に基づく追加措置が相次いで打ち出されれば、『北京コンセンサス』に新たな課題をもたらすことになるだろう」と指摘した。
原題:Trump Begins Rebuilding His Tariff Wall With Proposed New Levies(抜粋)
(第13段落に、尾崎官房副長官の発言を加えて更新します)
--取材協力:Catherine Lucey、照喜納明美.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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