(ブルームバーグ):人工知能(AI)スタートアップの米アンソロピックは1日、新規株式公開(IPO)を申請し、OpenAIに一歩先行する形となった。両社はAIの計算能力で優位に立つために、資金調達争いを繰り広げている。
非公開の資金調達を経て、どちらが上場に向けて先行するか。この競り合いは、単に先を争う見えの張り合い以上の意味を持っている。米市場から先に潤沢な資金を調達した企業は、AIモデル開発に必要な半導体やデータセンター、人材の確保で先行することができるためだ。
OpenAIとアンソロピックは、スペースXに後れを取るわけにもいかない。イーロン・マスク氏はすでに、半導体メーカーとの合弁事業を持つハイパースケーラーとの連携やIPOを通じて、スペースXの初期段階にあるAI事業の強化を図っている。
ただし、先に上場して手の内を見せることには潜在的なマイナス面もある。
S&P500種株価指数とナスダック100指数が今年10%超の上昇をみせていることから、「銀行家らは今が好機だと伝えている」とルネサンス・キャピタルのシニアIPO市場ストラテジスト、マシュー・ケネディ氏は話す。ただし、いったん両社が上場してしまえば、先に上場したことの利点は薄れる可能性があるとも警告した。
「先に上場する企業が流れを決める。後に続く企業は2番手と見られ、投資家への売り込みにおいては先行企業との比較を迫られる可能性がある」とケネディ氏は語った。
アンソロピックがIPOを申請したことで、同社の勢いが増しているとの見方は一段と強まった。AIモデル「Claude(クロード)」を手掛けるアンソロピックは売上高が急増しており、直近の非公開資金調達ラウンドで評価額が9650億ドル(約150兆円)に跳ね上がり、初めてOpenAIを上回った。またアンソロピックは、スペースXとの間でAI向け計算能力を増強するために提携するという、驚きの契約も結んだ。いずれかが契約を打ち切らなければ、2029年5月までに総額がほぼ450億ドルに達する可能性がある。
「アンソロピックの直近の資金調達ラウンドは、同社をOpenAIより1000億ドル超高く評価しており、主にフロンティアモデルでの優位を反映している。また、スペースXやアマゾン・ドット・コムのAWS、コアウィーブとの最近の契約は計算能力の差を縮めるのに役立っている」と、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マンディープ・シン氏とロバート・ビガー氏は5月時点で評していた。
両氏は「年間経常収益が約470億ドルへと急成長し、昨年12月比で約5倍となったことは、コーディングエージェントなどの分野で、大規模言語モデルの競合に対するアンソロピックのモデル面でのリードを示していると考える」と記した。
上場すれば、アンソロピックとOpenAIは、個人投資家を含むはるかに幅広い買い手にアクセスできる。上場は資本をもたらすほか、企業が自社株を買収に使ったり、従業員により売却しやすい株式で報酬を与えたりすることも可能になる。
AIブームは永遠には続かないとして、アンソロピックとOpenAIにとっては時間が極めて重要だと警告する声もある。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は今年83%上昇している。
フロリダ大学IPOイニシアチブのディレクター、ジェイ・リッター氏は、両社は巨額の設備投資と利益率がどうなるかについて、共通の課題に直面しているとみる。
「スペースXはユニークな事業だが、OpenAIとアンソロピックは互いに似ており、どちらか片方が大幅に高い株価売上高倍率で取引されれば驚きだ」とリッター氏は語った。
アンソロピックが先行しているとはいえ、OpenAIも大きく後れてはいない。ChatGPTを手掛けるOpenAIは今後数週間でIPO申請を行う準備を進めており、秋の上場の可能性に向けて、ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーと協力し、IPO申請を提出する作業を進めているとブルームバーグ・ニュースは報じている。
OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、株式公開の時期を重視していない姿勢を示した。
「最高の技術を提供し、最高の事業を築く競争はあると思う。ただ、上場は資金調達イベントであり、そのタイミングにわれわれが注力しているとは思わない」と、アルトマン氏は1日のCNBCとのインタビューで述べた。
両社の非公開評価額が1兆ドルに近づく中、アンソロピックとOpenAIのIPO申請書類が公開されれば、投資家からは厳しい目を向けられる公算が大きい。先行した企業が不発に終わった場合、2番手となる企業は、投資家が実際に何を求めているのかに合わせて売り込みを調整し直す機会になり得る。
「通常の見方をすれば、アンソロピックが先に申請することで主導権を握ったというものだ」と、ピッチブックのシニア・レイトステージ企業リサーチアナリスト、ハリソン・ロルフェス氏は電子メールでコメントした。「しかし逆の見方をすれば、OpenAIの方が得をしたとも言える。アンソロピックが開示リスクを先に引き受ける格好になったことで、OpenAIは自社の公開価格を決める前に、監査済みのAI企業の財務情報に対する機関投資家の反応を見極めることができる」と述べた。
原題:Anthropic’s First-Mover IPO Edge Set to Widen Lead Over OpenAI(抜粋)
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