AI・半導体株の転換点は読みにくい上に、その後も展開は変わりにくい

5月26日の米国株式市場は、米国とイランの戦闘終結に向けた交渉に大きな進展はなかったが、AI・半導体関連株の期待が続き関連株の株価が上昇した。ダウ平均は小幅に下落したが、ナスダック指数は上昇し、S&P500も上昇した。ホルムズ海峡の通航再開を期待して原油価格が下落していることを背景に、長期金利が安定していることも、株式市場には追い風である。むろん、株価が上昇して市場全体に楽観論が台頭すると、①経済見通しが強気化して金利上昇圧力が再び高まる可能性があり、②イラン情勢などに対してトランプ大統領が態度を硬化させる可能性もある。市場はその可能性を認識しているため、金利上昇やイラン情勢の悪化に影響を受けにくい論点を探す。足元では、その対象はAI・半導体関連株となっている。この構図が変わるタイミングが次の転換点になる可能性が高く、ホルムズ海峡の封鎖が終わることが、(経済にとっては本来好材料であるにもかかわらず)AI・半導体関連株の調整のきっかけになるのではないかという考察も存在するようである。

もっとも、その場合でも株価の調整によって資産家や富裕層の消費も抑制されるという見方が生じ、景気悪化不安にもつながる可能性が高い。結果的に、やはりAI・半導体関連株の方が相対的にダメージは少ないとして、一旦調整しても再びこれらのセクターに投資資金が向かうという展開も想定される。

利上げ観測は後退しやすいが、利下げ観測のハードルは高い

5月26日の米国債券市場は、インフレ懸念が後退し、長期金利が低下した。長期金利は前営業日差▲7.3bp、2年金利は同▲8.9bpだった。イラン情勢の改善期待によって前週末から原油価格が下落し、利上げ観測が後退した。FF金利先物市場が織り込む年内の利上げ回数の見通しは約0.66回となっている。FRBの政策金利は少なくとも中立金利よりは高いという見方が一般的であると考えられる中で、インフレ懸念が弱くなれば、利上げ観測は後退しやすい。むろん、その先に利下げ観測が強まるためには、(1)ディスインフレ懸念が生じるか、(2)労働市場の悪化懸念が生じるか、のいずれかが必要になる。このうち、少なくとも現時点では(1)ディスインフレ懸念は生じにくいと考えられるため、当面は雇用統計の重要性が高まるだろう。なお、筆者は年後半の雇用統計はやや悪化し、利下げ観測が生じるとみている。その上で、徐々に需要の弱さから消費者物価の上昇率が限定的だという認識が広がり、ディスインフレを指摘する声も増えていくとみている。年内は1~2回の利下げが実施され、来年も複数回の利下げが実施されるだろう。

国債買い入れ減額は27年4月以降に停止の見込みで、円相場の反応が重要

時事通信は5月26日、日銀は6月15-16日の金融政策決定会合で行う予定の国債買い入れ減額の中間評価について、「現在、明らかになっている計画が終了する来年3月でいったんテーパリングを停止することも視野に入っているようだ」と報じた。「最近の国債市場のボラティリティの高さを考慮すれば、テーパリングを停止するメリットが大きいと判断することは十分考えられる」(同)というのが背景のようである。すでに決まっている計画(26年4月から27年3月まではそれまでよりも四半期ごとに2,000億円減額する)を修正すると、想定外のことが起きているという印象を与える(日銀の政策が上手くいっていないと批判される)リスクがあるため、新たな計画として国債需給を改善させる方向性を示すというのが、落としどころとなりそうなのだろう。

ただし、今回の決定がハト派的だと捉えられて円安圧力が強くなる場合、かえって債券市場が不安定化する可能性がある。「来年6月に再び中間評価を行う選択肢もありそうだ」(同)とされているように、ハト派的な対応ではないというメッセージとセットになる見込みである。基本的には国債買い入れの中間評価は無風で終わりそうな情勢だと筆者はみているが、仮に円安圧力が強まる場合は、利上げの判断にも間接的に影響を与える可能性がある。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)