イラン情勢の改善期待で原油価格が下落
5月25日の米国株式市場・債券市場は休場だった。
この日、イラン情勢の改善期待が続き、原油価格がまとまった幅で下落した。WTI原油先物価格は、90.88ドルと、前日から6.30ドル下落した。先週末から米国とイランの停戦延長(60日間)を含む合意の交渉が進展している模様で、この日もトランプ大統領がSNSで交渉が順調に進んでいると述べた。協議が失敗した場合は新たな攻撃があるともされたが、進展期待が高まる内容だった。他にも、ロイターは「イランの首席交渉担当者と外相は、3ヵ月間に及ぶ戦争を終わらせるための米国との潜在的な合意について、カタールの首相と会談するためドーハを訪れていた、とこの訪問について事情通の当局者が月曜日に語った」と報じており、イラン側の動きにも進展がみられた。
「アクシオスによると、この60日間の期間中、ホルムズ海峡は通行料なしで開放され、イランは海峡に設置した機雷の除去に合意する」(ロイター)とされている。すぐに各国の原油供給が回復するという見方は少ないものの、原油価格には下落圧力が高まる可能性が高い。筆者は、原油価格が市場の想定よりも下振れる可能性があると予想している。各国の節約要請などによって原油の依存度を減らす動きが生じているとみられ、需要が落ちている可能性がある。むろん、各国が放出した備蓄の復元需要はあるものの、今回のイラン情勢の悪化によって定常状態における原油需要が減少したという見方が強くなれば、長期的には原油価格は抑制されるという分析が生じる可能性がある。その場合、言うまでもなく、かなりタカ派方向に傾いている各国中銀の利上げ観測は後退していくことになるだろう。
供給制約への社会の対応の「ラグ」が後から価格下落に作用する可能性
供給制約に人々が対応した結果、需要が減り、気がついたら需給が緩むことになるという展開は原油に限ったことではないだろう。この日、共同通信は「飲料大手、代替飲料の販売相次ぐ 高騰のオレンジやコーヒー」との記事を配信し、「飲料大手が、本来の原料を使わずにオレンジジュースやコーヒーの味わいを再現した代替飲料の新製品を相次いで打ち出している」とした。記事では、カゴメが3月に「フルーツのような甘さを持つニュージーランド産の『黄にんじん』をベースに、リンゴとパイナップルなどを組み合わせて味を調整」することでオレンジを使っていないオレンジジュースを発売したことを紹介した。この背景には「2025年のオレンジ果汁の輸入単価は16年比で約3.5倍になった」ことがあるという。
このように、コストが上がれば社会が対応していく。もっとも、24年10月にかけて高騰が続いていたオレンジジュース先物価格は、25年前半には急落し、その後26年は22年を下回る水準で推移している。価格にすると、22年12月は206.40ドルだったが、24年10月には529.75ドルとなり、足元(26年4月)は167.30ドルという数字の並びである。
供給ショックに対して社会が対応するのには一定のラグがある。このラグによる需給の歪みが、引き締まる方向にも緩む方向にも作用する可能性があることには注意が必要である。インフレ懸念が強い現状では、予期せぬ需給の緩みによって、意外にインフレ率が高まらない可能性を考えておくべきだろう。