(ブルームバーグ):本来なら、比較的短期間で大きな利益を狙える投資のはずだった。歴史的な安値で取引されている長期物の英国債を買い、価格が反発するのを待って、非課税で巨額の利益を得る。そんなもくろみの取引だった。
数年前、ロンドンの多くのバンカーや運用者がこの取引に飛びついた。しかし、2061年償還債の価格は過去最安値を更新し続け、いま売却すれば損失を確定することになる。残された選択肢は、しばらく保有を続けるか、次の世代への持ち越しさえ視野に入れることだ。
BNPパリバ・アセット・マネジメントで約22億ポンド(約4700億円)を運用するニコラ・トランダード氏は、自身の個人口座でこの債券を購入した。「2022年当時は、価格は反発するという見方だった」と振り返る。短期の反発を見込んだこの取引は、いまや長期、「恐らく一生ものの取引」になってしまった。「こういうものは、あきらめずに持ち続けるしかない」と同氏は語った。
ロンドンの金融街シティーのパブでかつては話題をさらった61年債は、いまや仕事帰りのトレーダーらの愚痴の種でしかない。
預金よりも実効利回りが高い短期の英国債が同国富裕層の間で人気化する一方、61年債には別のタイプの投資家が集まった。オーストリア100年債のような超長期のニッチ債券と同様、この債券の価格は金利変動に極めて敏感に反応する。それが、景気予測に巨額の資金を賭ける投資家の関心を引き付けた。

しかし、61年債は反発して手っ取り早い利益をもたらすどころか、中東での戦争でインフレ圧力が高まる中で下落を続けている。英国の新たな政治混乱も状況を悪化させ、政府債務の急増による長期的な財政問題も重くのしかかる。
資金をすぐに必要としていない投資家は、35年後に額面で償還されるまで保有を続けることもできる。ただし、それは他で得られたかもしれない利益を諦め、低いリターンに固定されることを意味する。一方、いま売却すれば、保有損失を確定させることになる。
個人資産に関する話だとして匿名を要請したあるバンカーは、この債券を5万ポンド分購入し数年間保有していたが、住宅購入資金を捻出するため売却して、損失が出たと明かした。
レガシー投資
一部のトレーダーは、価格が25ポンドまで下落すれば、投資家が損切りするだろうと見ていた。それでも、61年債は非課税のキャピタルゲインを期待する底値買い狙いの個人投資家を引き付け続けている。
ハーグリーブス・ランズダウンの投資戦略ディレクター、アンナ・マクドナルド氏は、「2056年債と61年債は一貫して人気があり、過去1週間では当社で最も買われた英国債3銘柄のうちの2つだった」と述べた。
他の個人投資家向けプラットフォームでも同様の傾向が見られている。61年債は、4月にバークレイズのオンライン顧客が購入した債券のうち、2番目に高い人気を集めた。
ミラボー・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、アル・キャタモール氏は、「今後2年以内に住宅購入資金が必要なら、値動きの激しい資産になる」と語った。一方で、「子どもへの相続目的であれば」、税制上の利点もあり依然として魅力的な債券だと指摘した。
まだ実現してはいないが、この債券の保有を継続する理由はもう一つある。深刻な景気後退や大幅なインフレ低下が起きれば、利回りが急低下する可能性がある。
トランダード氏は「下値余地はかなり限られてきた」との見方を示し、「もはや、深刻な世界景気後退に対するヘッジとして扱うこともできる」と述べた。
原題:London Traders Are Stuck With an Ultra-Long Bond Bet Gone Bad(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.