小枝審議委員は6月利上げを求めず、判断は執行部に委ねられた
この日、日銀の小枝審議委員が講演を行った。小枝氏は「今後は政策金利を適切なペースで引き上げて、経済へのトレードオフにも配慮しつつ、物価高への対応を進めていくことが適切であると思います」(日銀資料)と述べた。日銀の審議委員がタカ派的な発言をしていることに注目が集まっているが、今回の小枝氏の発言は、5月14日に増審議委員が述べた「景気下振れの兆しがはっきりとした数字で表れないのであれば、できる限り早い段階での利上げが望ましいと考えております」(同)よりは慎重な印象を受ける。増氏は「できる限り早い段階で」と、6月決定会合における利上げを意識させるものだったが、小枝氏は「適切なペース」という発言にとどめた。
仮に、小枝氏が6月利上げを求めるような発言をしていたら、4月決定会合で利上げを求めた3票に増氏と小枝氏の2票を加えて5票となり、執行部(総裁、副総裁)が現状維持を求めても、利上げが決まるという見方が広がっていただろう。小枝氏は、①事前に6月利上げが市場で確実視される(日銀の自由度が低下する)こと、②審議委員が執行部の判断に抗って利上げを実施する流れを作ったという事実を作らないこと(後から判断を批判される可能性がある)、を懸念したのだろう。
6月利上げを実施するか否かの判断は、引き続き執行部の意向が重要である。この点、植田総裁は5月19日にインフレ予想(BEI)が上昇していることに言及し、利上げに対して前向きになっている印象を強めている。審議委員の発言よりも、植田総裁のスタンスの変化の方を考慮し、6月利上げの可能性は高まっていると、筆者は判断している。
もっとも、植田総裁を中心とした執行部が利上げを決断できるかどうかは、高市政権との間合い次第だろう。高市政権は景気のダウンサイドリスクを懸念していると思われるため、日銀としては、7月1日に公表される予定の日銀短観で企業のマインドを確認してからの方が利上げに踏み切りやすいだろう。このところの高市政権の動きをみていると、判断が後手に回っている印象が強い。少なくとも、補正予算編成の判断については、ギリギリまで遅らせた上で、結局は編成せざるを得なくなったようである。日銀の利上げについても、ギリギリまで判断を遅らせることを望んでいるのだろうと思われるが、補正予算案のように突如として判断が変わる可能性がある。引き続き、筆者は6月利上げはなく、あったとしても7月になると予想しているが、利上げのタイミングを予想することは難しくなっている。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)