イラン情勢の改善期待、金利低下が株価を押し上げる展開

5月21日の米国株式市場は、イラン情勢の改善期待が続き、楽観論が広がった。パキスタンの仲介によって米国とイランが戦闘終結のための合意最終案を完成させたと中東メディアが報じたと伝わった。原油先物価格が下落し、金利が低下したことも、株価の押し上げ要因となった。

米企業は売上への悪影響を懸念し、価格転嫁には消極的となる公算

この日、米小売大手ウォルマートが決算を公表したが、ジョン・デイビッド・レイニーCFOは決算後の電話会見で「現在のコスト高の環境が続けば、第2・四半期および下半期には小売価格のインフレがやや加速すると予想される」(ロイター)と述べ、通期の純売上高成長率目標が据え置かれた。事前の想定では「2月に示した初の通期見通しを控えめなものと評価し、同社が年間を通じて業績予想を引き上げると予想していた」(同)という。原油高が家計を圧迫する中、節約志向が一段と強くなることが予想される。企業は価格転嫁を進めれば売上が減少するとの見方を持たざるを得ないため、厳しい状況にある。この状況は、ペントアップ需要が旺盛だったことで便乗値上げと呼ばれる動きによってマージンを押し上げることも可能だったコロナ後のインフレ局面とは大きく異なる。今後は、一定の価格転嫁が行われる一方で、企業がコスト高を飲み込む分も少なくないと予想される。コスト高によって消費者物価が多少上がったとしても、全体としては需要の弱さがディスインフレ圧力として作用していると解釈され、FRBによる利上げの必要性は低いという見方が広がっていくだろう。

金利は低下しているが、株高による楽観論で金利が上昇するリスクは残存

5月21日の米国債券市場は、原油価格が下落したことで、インフレ懸念が後退し、長期金利が低下した。前日に公表されたFOMC議事要旨がタカ派的だったこともあり、利上げ観測が高まったことも、インフレ抑制期待につながった模様である。長期金利は前日差▲2.4bp、2年金利は同+2.8bpだった。FF金利先物市場が織り込む年内の利上げ回数は約0.82回となり、前日の約0.65回から増加した。

原油価格が下落し、FRBのタカ派姿勢が意識されている状況では、インフレ懸念は高まりにくい。そのため、長期金利の上昇圧力は一旦弱まっていく可能性が高い。もっとも、債券市場が落ち着きを取り戻す中で、株価が再び上昇している。5月の金利上昇は株高によって景気見通しが強くなり、原油価格の高止まり状況と相まってインフレ懸念が醸成されてきた感がある。そのため、金利低下がこの流れを再び引き起こす可能性がある。本格的に金利が低下するには、株価を調整させるような景気不安の発生が条件になりそうである。マクロ経済指標では、雇用統計に注視が必要である。