21日の米金融市場では、S&P500種株価指数が小幅続伸。イラン戦争を巡る外交的解決への期待から、原油価格が午後に入って下落に転じ、株式相場はマイナス圏からプラス圏に浮上した。ダウ工業株30種平均は最高値を更新した。原油価格の下落を受け、米国債利回りも低下した。

イランは米国から提示された最新の和平案について、両国の溝を一部埋める内容だとの認識を示した。一方で、イラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師による高濃縮ウラン備蓄維持を巡る発言や、ホルムズ海峡の通航料を巡る対立が、事態打開への期待に影を落としている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ルビオ米国務長官はイランとの合意について「前向きな兆候がある」と述べた。米国が提示した最新の和平案をイランが検討する中、交渉仲介国パキスタンの代表団がイラン入りする見通しだという。一方、イランのペゼシュキアン大統領は、自国が譲歩寸前にあるとの見方を否定。Xへの投稿で「強制によってイランを降伏させられると考えるのは幻想にすぎない」と述べた。

市場では、ホルムズ海峡の再開につながる協議の行方を巡り、神経質な状況が続いている。

イランは、ホルムズ海峡の通航に恒久的な課金制度の導入をオマーンと協議している。海峡を巡る実効支配を制度化する狙いがある。一方でトランプ米大統領は、同海峡について「自由に通航でき、通行料も課されない状態を望む」と述べた。

ホルムズ海峡の閉鎖が長引けば、エネルギー供給の混乱が深刻化し、インフレを加速させるとの懸念が投資家心理を冷やしている。インフレ圧力の高まりで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを迫られるとの懸念も根強い。借り入れコスト上昇によって、一部の国では景気拡大が止まるリスクも意識されている。

米国の製造業活動は5月に拡大して4年ぶりの高い伸びとなったものの、イラン情勢による価格上昇を見越した駆け込み需要で押し上げられたに過ぎないとの見方が多い。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は21日、「(金利が)今の水準よりはるかに高くなる恐れがある。貯蓄過剰の状態から貯蓄不足の状態に移行したのかもしれない」と債券投資家に警告を発した。

国債

米国債市場では長期債利回りが低下した。10年債利回りは早い時間帯には上昇していたが、原油価格の下落と歩調を合わせて低下に転じた。10年債利回りは19日には4.68%を上回り、2025年1月以来の高水準を付けていた。

ソシエテ・ジェネラルのスバドラ・ラジャッパ氏は「米国債利回りは今週、イランとの合意期待が高まったり後退したりするたびに乱高下している」と述べた。

2月下旬に始まったイラン戦争は原油価格急騰を招き、インフレ加速懸念から米利下げ期待は大幅に後退し、債券市場では売りが広がった。その後、米国債利回りは総じて原油価格に連動する形で動いている。

TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「金利がどこまで上昇するかは、最終的にはイラン紛争がどれだけ長引くかに左右される」とリポートに記した。

外為

外国為替市場では、ドルがほぼ横ばい。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は早い時間帯は0.4%上昇していたが、米国とイランが戦争終結で近く合意に達するとの楽観から原油価格が下落し、米長期債利回りが低下するなかで上げ幅を縮めた。

円相場は対ドルで一時159円34銭まで売られたが、その後は買いが優勢になる場面もあり、総じて159円ちょうどを挟んで推移した。

シティグループのマクロ戦略担当者らは、日本銀行が6月に開く金融政策決定会合を控え、対円でのドル・ショートを推奨している。円相場が再び介入警戒水準へ接近しているためだ。

同行のアナリスト、ジャマルコ・ミアーニ、アダム・ピケット、ダーク・ウィラーの3氏は「円を取り巻く環境は引き続きネガティブだが、ドルの対円相場は再び160円近辺の『介入水準』に達しつつある」とリポートで指摘。「加えて、6月の日銀会合も近づいている。シティでは利上げを予想している」と続けた。

シティは159円10銭でドル・円を売り持ちし、約2%下落となる156円を目標水準とする戦略を推奨。「警戒水準」は160円50銭としている。

原油

ニューヨーク原油相場は3日続落。米国とイランが和平合意に近づきつつあり、ホルムズ海峡を通じた原油輸送が再開されるとの見方が広がった。

ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=96ドル近辺と、約2週間ぶりの安値で引けた。恒久的な停戦とホルムズ海峡の通航再開に向け、進展の兆しが示されたと受け止められた。

準国営イラン学生通信はこの日、イランが米国から提示された文書への回答作成を進めていると報じ、米国の提示案は「ある程度の隔たりを縮めるものだ」と伝えた。

トランプ米大統領は4月上旬に停戦が始まって以降、合意は近いと繰り返し話しているが、事態打開には至っていない。

原油相場は時間外で下げを一部縮小した。イランのペゼシュキアン大統領が協議において「譲歩しない」と述べたと伝わった。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)が今月実施した調査によると、市場参加者の過半数は、原油には今後何年にもわたり1バレル=5-15ドルの地政学的リスクプレミアムが上乗せされ続けるとみている。

そうした構造的変化を示す一例として、イランがホルムズ海峡の通航に恒久的な課金制度を導入することをオマーンと協議していることが分かった。

コンサルティング会社エナジー・アスペクツの共同創業者で調査ディレクターのアムリタ・セン氏は、原油相場の大幅上昇を防ぐには、同海峡が6月末までに再開される必要があると述べた。

ゴールドマン・サックス・グループによれば、世界の原油・石油製品在庫は今月、過去最大のペースで取り崩されている。

原油相場は21日、イラン最高指導者が兵器級に近いウランを国外に持ち出さないよう指示したというロイター通信の報道後に、上げ幅を拡大する場面もあった。

それによると、イラン側はウランを国外に持ち出せば、米国やイスラエルからの将来的な攻撃に対し、より脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれることになると考えている。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比1.91ドル(1.9%)安い1バレル=96.35ドル引けた。北海ブレント先物7月限は2.44ドル(2.3%)安の102.58ドルで終えた。

金スポット価格はほぼ変わらず。米国とイランの停戦合意への期待を背景に、日中の下げを埋める展開となった。インフレ抑制のため中央銀行が政策金利を長期にわたって高水準に維持する必要があるとの見方は後退した。

スポット価格は一時プラス圏に浮上する場面もあった。日中には1.2%安まで売られていた。

ルビオ米国務長官がイランとの合意に「前向きな兆候がある」と述べたというFT報道が材料視された。

ケニー・フー氏らシティグループのアナリストは「ホルムズ海峡を巡る状況が最終的に緩和すれば、金相場を圧迫しているマクロ経済面の逆風が和らぎ、金価格は底打ちする可能性が高い」とリポートに記した。

また、海峡封鎖がさらに長期化した場合は、市場の懸念がスタグフレーションへと移り、歴史的に見て貴金属は堅調に推移する傾向があると指摘した。

スポット相場はニューヨーク時間午後4時5分現在、前日比2.29ドル(0.1%未満)下落し、1オンス=4541.90ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は7.20ドル(0.2%)高の4542.50ドルで引けた。

欧州

21日の欧州市場は、株式が小幅高。人工知能(AI)関連の話題やホルムズ海峡再開に向けた外交努力がトレーダーの間で注目された。

ストックス欧州600指数は一時0.6%下げる場面もあったが、0.1%未満の上げで取引を終了した。今週に入り値動きがさえなかった鉱業が上げを主導。公益やヘルスケア、生活必需品などのディフェンシブな業種も買われた。

一方、原油価格が1バレル=108ドルを超え、国債利回りが上昇する中で、旅行や銀行が売られた。

ユーロ圏国債は下落。ユーロ圏の5月総合購買担当者指数(PMI)が低調だったことから朝方には上昇したが、原油価格の上昇とともに上げを失った。

ドイツ2年債利回りは一時3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して2.63%となったが、2.69%に上昇して引けた。主要な問題でイランと米国の対立が解消されず、原油価格が上昇したためインフレ懸念が再燃した。

英国債は比較的堅調で、2年債利回りは1bp上昇の4.38%、10年債利回りは2bp低下して4.97%となった。

原題:Stocks Rise, Oil Falls on Hopes for US-Iran Deal: Markets Wrap

Treasuries Erase Drop as Oil Prices Signal Progress on Iran War

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