アジアの戦略的要衝に位置する台湾は、米国と中国の関係において長年にわたり最大の不安定要因になっている。

台湾はアジア有数の民主主義を築き、半導体製造の世界的中心地として経済的にも豊かになった。米国は台湾の防衛力を支援し、バイデン前政権下では、中国による侵攻があれば、米国が台湾防衛に動くと明確に示していた。

トランプ大統領は一時、米国による台湾支援に疑念を生じさせたものの、昨年11月には中国人民解放軍が台湾の掌握を試みれば、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は「何が起きるかを理解している」と述べていた。

その間、中国は台湾周辺での軍事演習を強化。習氏は台湾を、統一されるべき中国の失われた領土と見なしている。中国国営の新華社通信によれば、習氏は北京でトランプ氏と5月14日に会談した際、台湾問題が「誤って扱われれば」、米中は「衝突に至る」と率直な表現で警告した。

「台北101」展望台から台北市内のビル群を臨む

台湾はなぜそれほど重要なのか

台湾はスペインとオランダ、中国の清朝に統治された歴史を持つ。日清戦争に敗れた清は1895年、台湾を日本に割譲。台湾を統治したことのない中国共産党だが、列強の支配を受けた中国の「屈辱の世紀」を覆すという目標を完遂する上で、台湾との「祖国統一」を不可欠と見ている。

2012年に党総書記に就いた習氏は南シナ海からヒマラヤ高原、香港に至るまで、そうした主権の主張を押し通す姿勢を示してきた。

米国と日本にとって台湾は、中国を封じ込め、通商航路を守る上で極めて重要だ。台湾は米国の保護の下で発展し、半導体をはじめとするハイテク製品の重要な供給元となった。

現在2350万人が住む台湾は、アジアで最も活気ある民主主義の一つでもあり、西側の政治制度は中国文化と相いれないとする共産党の主張への反証となっている。

台湾はなぜ係争の対象なのか

この対立は1949年にさかのぼる。辛亥(しんがい)革命で12年に清朝が倒れた後、中国を統治した国民党の指導者、蔣介石が国共内戦で毛沢東率いる共産党に敗れ、中国大陸から台湾に敗走したことが発端だ。

米国は70年代に当時のニクソン大統領が中国との関係樹立を目指すまで、蔣氏を中国の正統な指導者として支持していた。その結果生まれたのが「一つの中国」政策で、米政府は中華人民共和国を「中国の唯一の合法政府」と認める一方、台湾の主権に関する立場は明確にしなかった。

中国は一定の条件下での武器売却を含む非公式な米台関係を容認することで合意したが、その後、台湾の正式な独立を阻止するためには武力行使も辞さないと表明している。

台湾の世論調査では、独立を支持する割合が着実に上昇している。これが台湾に対して中国が軍事行動に踏み切る可能性を最も高める要因だ。2025年6月の調査によると、人口の約4分の1が即時または将来的な台湾独立を支持しており、中国との統一支持は7%未満だった。

Photographer: Lam Yik Fei/Bloomberg

台湾を巡る緊張はなぜここ数年高まったのか

1949年から80年代後半まで、中国と台湾の関係は軍事対立や限られた接触が続き、中台当局が自らを中国唯一の正統政府と主張する状況にあった。その後の数十年で、敵対的関係は慎重な関与へと変わり始め、貿易や投資も進む中で、緊張期と関係改善期が交互に訪れた。

だが、2016年の台湾総統選で民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が当選すると、中国がそれまで進めてきた台湾との経済・社会的結び付きの深化は覆された。

民進党は台湾が中国の一部だという考えを拒み、対中依存を減らすため米国との関係強化を目指した。中国は総統選の結果を受け、対話を断ち、台湾と中国本土の往来を制限し、台湾と正式な外交関係を持つ国々の切り崩しを再開し、多国籍企業に対して台湾を国家として扱わないよう方針の見直しを迫った。

民進党は20年と24年の総統選も制した。蔡政権で副総統だった頼清徳氏は24年5月に総統に就いた。頼氏はかつて自身を「台湾独立のための政治工作者」と表現していたが、その後はこうした立場を軟化させている。

頼氏は現状維持に向け、米国や他の民主主義国との協力を続けると表明するとともに、中国がもたらす課題に立ち向かう姿勢を示してきた。

頼氏に対する中国側の深い不信は、前例のない圧力につながっている。中国は頼氏の就任1年目に台湾周辺で大規模軍事演習を3回実施した。

中国はまた、米国が台湾海峡に引いた事実上の中台境界線である中間線を越える軍事侵入も大幅に増やした。頼政権1年目のこうした侵入の1日平均件数は、前年の2倍超となった。

台湾は24年10月中旬、中国が中間線を越えて過去最多の111機の軍用機を飛行させたと発表した。これは中国が台湾周辺で大規模軍事演習を実施した時期と重なった。

中国当局は米側との会合で、台湾海峡は「国際水域」に属さないと主張しており、米海軍の台湾海峡航行を阻止しようとして、中国がより強硬になるのではないかとの懸念が高まっている。

中国はまた、台湾を支持した元米下院議員に制裁を科し、台湾と関係や投資を持つ米防衛企業にも象徴的な制裁を発動した。

北京での米中首脳会談を前に、中国当局は台湾独立に関する米国の立場を示す数十年来の表現を変更するよう米側に改めて求めた。中国側はトランプ政権に、台湾独立に「反対する」よう要求。バイデン政権時の台湾独立を「支持しない」とのスタンスから踏み込むよう促した。

米台関係はここ数年どう変わったのか

トランプ氏は政権1期目、台湾政府との関係を劇的に拡大させた。186億5000万ドル(現在の為替レートで約3兆円)の武器取引を主導し、30年ぶりとなる米戦闘機の台湾への売却を承認した。トランプ氏は、高官級の米当局者による訪問を認める法整備も進めた。

その後のバイデン政権は、この関係の変化をおおむね維持した。バイデン前大統領は、中国が侵攻した場合に米国は台湾を防衛すると繰り返し明言。これは、米国の意図を曖昧にすることで中国の抑止を狙った米国が従来取ってきた「戦略的曖昧さ」政策からの大きな逸脱だった。

トランプ氏の政権2期目における台湾巡る立場は

トランプ氏のディール(取引)重視の外交姿勢によって、米同盟国の立ち位置はしばしば不確実なものとなっている。

トランプ氏は政権2期目、台湾防衛に対する米国の関与に疑問を呈した。25年2月に記者に問われた際、中国が武力で台湾を支配下に置くのを阻止することがトランプ政権の政策かどうかについてコメントを拒み、24年の選挙戦中には、台湾は「防衛のための費用をわれわれに支払うべきだ」と話していた。

頼氏は25年半ばに台湾と外交関係のある中南米諸国を訪問しようとしたが、外遊を中止した。ニューヨークへの立ち寄りの要請をトランプ政権が承認しなかったためだとみられており、米台関係の強さに対する疑念がさらに浮上した。

トランプ氏はその後、同年11月2日放送のCBSの番組「60ミニッツ」におけるインタビューで、中国が台湾侵攻を試みた場合、習氏は「何が起こるかを理解している」と示唆する発言をした。

トランプ氏は、自分が大統領である間は台湾に対して決して行動を起こさないと習氏や他の中国当局者がトランプ氏に伝えているとも明言。「彼らは結果を承知しているからだ」と語った。

トランプ政権は翌月、110億ドルの台湾向け武器売却パッケージを承認した。台湾に対する米国の武器売却としては過去最大級で、中国の強い反発を招いた。

同時に、トランプ政権は議会が25年に認めた別の140億ドル規模の武器売却承認を遅らせている。トランプ氏は習氏との会談後、FOXニュースに対し、それを「保留」しており、台湾への武器売却は中国との「交渉材料」として使える可能性があると語った。これは、台湾への武器売却について中国政府と協議しないという1982年以来続く米国の政策を損なう恐れがある。

原題:Why Taiwan Is the Hottest Issue Between the US, China: Explainer(抜粋)

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