〈株式市場は金利上昇圧力を懸念〉

5月19日の米国株式市場は、軟調な地合いが継続した。金利上昇圧力が強くなっていることに加えて、トランプ大統領がイランに対する攻撃の再開を延期したとする自身の主張について「2~3日、あるいは来週初めくらい」(朝日)までの猶予を与えるものだ、と記者団に説明したことなどが懸念された。

もっとも、株式市場で懸念されているのは金利上昇だろう。

イラン情勢の進展やインフレ懸念の鎮静化が見込みにくい状況で、金利上昇リスクが高いと言わざるを得ない。

金利上昇を止めるのは株価の下落をともなったリスクオフしかないと言える状況であり、株式市場の警戒感は続く可能性が高い。

こういったケースでは雇用統計の悪化が景気悪化懸念の引き金になる可能性があるため、毎月の雇用統計に注目が必要である。

〈トランプ大統領がインフレを心配しているのは明らか〉

5月19日の米国債券市場は、利上げ観測の双方が高まる中で、金利が上昇した。

長期金利は前日差+7.9bp、2年金利は同+7.4bpだった。この日は10年実質金利が同+7.0bp、10年インフレ予想(BEI)が同+0.9bpとなっており、実質金利の上昇が目立った。

前日にはトランプ大統領が早期利下げを求めないことを示唆したことが注目されていたが、この日はトランプ大統領が金融政策をウォーシュ氏に任せるという趣旨の発言をしたことが注目された。

FF金利先物市場では、年内の利上げ確率が0.81回となり、前日の0.52回から増加した。利上げ観測が高まっていることが実質金利の上昇要因となっている。

もっとも、冷静に考えれば、原油高によるインフレ圧力が利上げによってすぐに弱まる可能性は低い。

また、トランプ大統領自身がインフレを懸念して利下げ要求を撤回したことは、裏を返せば原油高が続くという不安が高まっているというトランプ大統領の考え(焦り)があることの証左とも言える。

経済の下振れリスクが高まらない限りは、インフレ懸念と金利上昇圧力は続くだろう。

〈植田総裁は利上げに一段と踏み込んだが、6月か7月かは微妙な判断〉

パリで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議に出席していた植田日銀総裁はこの日、ベッセント米財務長官と会談を行った。

ベッセント財務長官との会談内容について直接言及しなかったものの、植田総裁は記者会見で足元の長期金利について「早いスピードで上昇している」(日経)との認識を示した。

具体的には、「背景として一番大きいのは市場参加者の間の認識(の変化)」(同)と説明し、「中東情勢を背景に、インフレ懸念の高まりが世界的に長期金利の上昇をもたらしている」(同)とした。

これまでよりも、インフレと金利上昇に対して警戒的な発言である。

また、植田総裁が「インフレ期待、短観や足元のBEIでは少し上振れているので注意してみていきたい」(ロイター)と述べたことは重要である。

日本の10年BEIは連日で上昇しており、1月27日につけた2.00%を大きく超え、5月19日には2.33%となった。

インフレ予想を目標(2%)にアンカーするためにも、行動が必要になっていることは明らかである。植田総裁は「持続的・安定的な2%のインフレ率の達成目指して適切な政策運営に努めることに尽きる」とも述べたが、インフレ予想の上振れは、十分な利上げの根拠になるだろう。

ただし、6月15-16日に利上げが決まるかどうかについては、微妙なところである。

植田総裁が言及した「短観」の最新のインフレ予想は7月1日に得られる予定である。

経済の下振れリスクも考慮するとすれば、短観の結果を待った上で、7月30-31日に利上げを決めた方が、説明がしやすいだろう。

現時点では、6月決定会合では7月利上げを条件付きで示唆した上で、7月利上げを前提に議論が進んでいくのではないかと、筆者は予想している。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)