(ブルームバーグ):ウォール街の経営トップらは、人工知能(AI)の自行への影響を語る際、ディストピア(暗黒の世界)を示唆するようなトーンに言葉遣いが変化し始めた。
スタンダードチャータードのビル・ウィンターズ最高経営責任者(CEO)は19日、今後4年でサポート(後方支援)職8000人の削減を目指し、「付加価値の低い人的資源」を金融・技術資源に置き換えると述べた。
ゴールドマン・サックス・グループのジョン・ウォルドロン社長兼最高執行責任者(COO)はその1週間前、自行の従来の業務を自動化の機が熟した「人間の組立ライン」と表現した。
金融業界の経営幹部向けにリーダーシップとパフォーマンスの指導を長年行ってきたデニス・シャル氏は「実に恐ろしい表現だ。自分の子供らにそんな言葉を使うだろうか」と指摘。「How the Future Works」の著者で、職場コンサルタントのブライアン・エリオット氏は、人間性を否定するような表現を使うことで、「被雇用者に自分が置かれている立場を伝えることになる」と説明した。
ウォール街の生産性をAIが向上させるという期待は、記録的な業績を背景に銀行株が大幅上昇する一方、人員削減が進むという衝撃的な対比を生んだ。大手米銀は昨年、過去約10年で最大規模の人員削減を実施。今年1-3月(第1四半期)も上位6行のうち4行で合理化の動きが続いた。
経営幹部の強気の発言で知られる金融業界でさえ、雇用は扱いにくい問題だった。ウェルズ・ファーゴのチャールズ・シャーフCEOは昨年12月の会議で、「今後人員削減を行うべきだとか、行うつもりだと堂々と話したいと誰も思わない。口にするのは難しい」と語った。しかし、銀行の経営幹部による最近の発言は、もはやそうでない現状をうかがわせる。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、AIによる生産性向上に伴い、27年のグローバル銀行の税引き前利益は、AIが導入されなかった場合と比べ最大17%増加し、最終利益は全体で最大1800億ドル(約28兆6000億円)増えることもあり得る。
AIエージェントは既に決められたバックオフィス業務や若手バンカーが行う業務の一部さえ処理できるようになった。マッキンゼー・アンド・カンパニーの推計によると、2030年までに金融・保険業界の労働時間の約30%が自動化される可能性がある。シティグループの調査によると、銀行業界の職の半分以上がテクノロジーに置き換わる公算が大きい。
ヘッジファンド運営会社シタデルの創業者で、最高経営責任者(CEO)を務める資産家のケネス・グリフィン氏は最近、AI能力の「飛躍的な変化」により、高度な学位を持つスタッフが数週間かかっていた作業をAIエージェントが数時間でこなせるようになったと発言した。
原題:Bank Executives’ AI Talk Takes Frightening Turn for Workers(抜粋)
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