カー米連邦通信委員会(FCC)委員長とウォルト・ディズニーが再び対立しているが、今回は双方とも引き下がる姿勢を見せていない。

カー委員長は昨年、深夜番組司会者ジミー・キンメル氏の発言を巡ってディズニーと対立した後、最近になってディズニー傘下ABCのテレビ局8局の放送免許について、異例の前倒し審査に踏み切った。

表向きの理由はディズニーの多様性・公平性・包摂性(DEI)ポリシーだが、そのタイミングには不自然さがあった。

この動きは、トランプ大統領がキンメル氏による番組内でのトランプ夫妻への発言を理由に、再び同氏の解雇を求めた数日後に起きた。ABCはすでに、昼のトーク番組「ザ・ビュー」への選挙候補者出演に関する書類提出を怠った疑いで、FCCの調査対象となっていた。

さらに、FCCからの圧力を受け、ディズニーは昨年、保守活動家チャーリー・カーク氏殺害を巡るキンメル氏の発言を理由に、同氏を一時出演停止にしたことでも注目を集めた。ただ、8カ月後の今、ディズニーは異なる対応を取っている兆候がある。譲歩するのではなく、対抗姿勢を強めている。

ディズニーは先に提出した文書で、FCCが「保護された批判的言論を萎縮」させようとしていると非難し、メディアコンテンツを当局の意向に沿う形へ誘導しようとしていると主張。ザ・ビューを巡る調査に具体的に言及しつつ、FCCの強硬な手法全般を批判した。

ディズニーが強硬姿勢に転じる理由は幾つかある。まず、ABC系列局を保有する大手放送局グループから受ける圧力が以前より弱まっている。

キンメル氏を巡る今回の論争では、ABC系列局を持つネクスター・メディア・グループとシンクレアは、昨年秋にカーク氏関連発言への対応として行ったように、キンメル氏の深夜番組を編成から外す措置を取らなかった。

また、両放送グループとも現在は大型取引でFCCの承認を必要としていない点も重要だ。ネクスターはすでにテグナ買収に向けた連邦承認を取得済みで、この案件は政権の管轄を離れ、現在は裁判で争われている。

シンクレアはE.W.スクリップス買収提案を試みたが、不調に終わった。シンクレアは依然として企業の合併・買収(M&A)を模索しているとしているが、少なくとも現時点では、両社とも政権に取り入る動機は以前ほど強くない。加えて、放送局側は前回の段階で、すでにホワイトハウスへの忠誠姿勢を示している。

ABC側では、キンメル氏が出演停止から復帰した後に視聴者数が大幅に増加したほか、番組休止に反発した「ディズニー+(プラス)」視聴者の契約解約にも対応を迫られた。

現在のディズニーは、テーマパーク部門出身のジョシュ・ダマロ最高経営責任者(CEO)が率い、従来型テレビ視聴からストリーミング時代への移行を担っている。

この新たな局面で、ディズニーはより攻撃的な姿勢を取っており、波風を立てない対応がもはや有効ではないと認識している可能性がある。

FCCがディズニーの職場差別疑惑を巡る免許審査を開始したことで、ザ・ビュー調査など他の問題も審査対象に組み込まれる公算が大きくなっている。

専門家の間では、この免許審査が拡大し、政権側がディズニーとのあらゆる対立を持ち込む包括的な場になる可能性があるとの見方が出ている。そして、ディズニーはそうした事態を早期に封じ込めたい考えだ。

ディズニーにはFCC内部にも少なくとも1人の支援者がいる。FCC指導部で唯一の民主党系委員であるゴメス委員は先週、FCCによる対応を根拠のないものだと批判し、ダマロCEOに対して連邦政府による検閲の試みに屈しないよう促した。

依然として残る疑問は、ディズニーへの対応が氷山の一角に過ぎず、他のメディア免許保有者も警戒すべきかどうかだ。FCCはすでに別のテレビ局保有会社に対しても早めの更新審査を実施しており、FCC規則違反が疑われる小規模ラジオ局については短期更新しか認めなかった。

FCCは現時点で、放送業界全体に対し、これまでにない形で免許制度を通じた監視強化に踏み込む意思を示している。もっとも、ディズニーだけが厳しい制裁対象になる可能性もある。フォックス(FOX)は歴史的にトランプ氏と良好な関係を維持しており、CBSもエリソン家による新体制の下で同氏の信頼を得ている。

政権側が次に標的とし得るネットワークとしては、コムキャスト傘下NBCユニバーサルが挙げられる。同社についてはDEI調査が継続中だ。ただ、NBCユニバーサルにはザ・ビューのように報道とトークを融合させ、番組内容が規制上のグレーゾーンに踏み込む可能性のある番組は存在しない。

また、大統領や閣僚を頻繁に風刺する最も過激な番組とされる「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」も、風刺表現として合衆国憲法修正第1条の保護を明確に受けている。さらに、ニューヨーク出身のトランプ氏が過去にSNLの司会を2度務めている点も、無関係ではないかもしれない。

(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)

原題:Disney Digs In Against Pressure From Trump’s FCC: Tech In Depth(抜粋)

(最終段落に加筆して更新します。更新前の記事で6段落目の日付を訂正済みです)

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