米連邦準備制度理事会(FRB)と米通貨監督庁(OCC)が、大手銀行に対する一部のサイバー関連検査を見合わせていることが分かった。米アンソロピックの最新人工知能(AI)モデル「Mythos(ミュトス)」で浮き彫りになったリスクについて、銀行側が分析を進める時間を与える狙いがある。

事情に詳しい関係者によると、ミュトスによって明らかになったサイバー関連の脅威に対応できるよう、銀行側にシステム強化の時間を与えたい考えだ。当局と銀行の双方がミュトスの検証を進めているという。非公表情報を理由に関係者は匿名を条件に語った。

OCCの担当者はコメントを控え、FRBからは直ちにコメントが得られなかった。

アンソロピックは先月、サイバー攻撃に悪用される恐れがあると警告し、ミュトスへのアクセスを制限すると発表した。その一環として、アップルやJPモルガン・チェースなど一部企業と共同で「プロジェクト・グラスウィング」と呼ばれる取り組みを立ち上げ、各社が自社のサイバー防御を検証できるよう、ミュトスの先行利用を認めた。

関係者によると、4月にはベッセント米財務長官とFRBのパウエル議長(当時)がウォール街の金融機関トップを招集し、ミュトスのようなAIモデルがもたらすサイバーリスクについて警告した。その後、銀行と当局は、ミュトスによって露呈した脆弱(ぜいじゃく)性への体系的な対応策を協議しているという。

Photographer: Gabby Jones/Bloomberg

ミュトスはコードを高速で解析し、ハッキング上の弱点を特定できるため、米大手銀行ではミュトスの能力に強い警戒感を抱く幹部もいた。ただ、数週間にわたる検証を経て、当初の動揺は一服し、取り組むべき課題の多さが浮かび上がってきた。

サイバー検査の日程先送りによって、銀行側はミュトスの能力をより深く理解できるようになる。また、規制当局がミュトスを踏まえたサイバー防御の検証を進める上でも役立つ。関係者の1人によると、OCCもミュトスを用いた試験運用を進めているという。

もっとも、当局はサイバー問題を巡って引き続き銀行と協議しており、検査日程の先送りは監督の緩和を意味するわけではないという。

関係者によると、JPモルガンやモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス・グループなど、ミュトスにアクセスできる米大手銀行は、ミュトス対応で専門チームを水面下で立ち上げている。多くの銀行が脅威の把握に向け、連邦情報機関と直接連携しているという。

この技術の検証では、銀行、規制当局に加え、外部ベンダーとの協力も必要になっている。ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は4月、防御体制強化に向け、セキュリティー関連企業とも連携していると述べた。

JPモルガンは同業他社やベンダーと協力し、システムの備えを進めているとジェイミー・ダイモンCEOが明らかにした。

先週のブルームバーグテレビジョンのインタビューで「本格的な取り組みだ。現時点で数百人規模が専従していると思う」と語った。

原題:Wall Street Watchdogs Pause Some Cyber Exams After Mythos Shock(抜粋)

(8段落目に関係者の話を追加して更新します)

--取材協力:Katherine Doherty.

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