(ブルームバーグ):片山さつき財務相の円安けん制発言や、ベッセント米財務長官から日本銀行の政策運営を擁護する発信があっても、円相場の上昇は一時的なものにとどまっている。
片山氏は19日、パリでの主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、為替動向について「断固たる措置を取るときは取る」と改めて市場に警告を発した。日本の為替政策の姿勢については、「総じて理解された」との認識も示した。
ベッセント氏はX(旧ツイッター)に「日本経済のファンダメンタルズは強固であり、為替相場の過度な変動は望ましくない」と投稿した。「植田総裁が日本の金融政策を成功裏に導くとの確信を持っている」とも述べた。
ベッセント氏の発言後、円は対ドルで一時上昇に転じ、この日の高値である158円67銭を付けた。その後は急速に上げ幅を縮小し、159円付近で推移している。
片山氏の警告や、ベッセント氏による日銀の政策運営を支持する発言があっても円安基調に変わりがない状況は、市場参加者がなお、円売りの持ち高を解消するには相場を動かす決定的な材料を待っていることを示唆している。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、片山氏は断固たる措置を取ると発言しており、近日中に介入する可能性があると指摘。「159円を超えればいつあってもおかしくない」との見方を示した。その上で、「介入を始めた4月末以降、ファンダメンタルズは変わっておらず、介入しなければ一段の円安が進むだろう」と語った。
政府は為替介入の有無についてコメントを控えているが、4月30日以降、政府・日本銀行は断続的に為替介入を実施したとみられている。日銀のデータなどに基づくと、5月6日までの期間に合計で最大10兆800億円の円買い介入があったと推定される。
今回のG7会議は、日本が一連の為替介入を実施したとみられて以降で初めて開催された。共同声明は、為替政策について、過度な為替変動が経済に悪影響を及ぼし得ることなどに言及した「2017年5月の為替相場についてのコミットメント」について再確認するとの文言が盛り込まれ、為替介入に対する日本の姿勢を一定程度容認する内容となった。

緊密連携
日銀の植田和男総裁は19日、会議の傍らで米国のベッセント財務長官と意見交換した。
植田総裁は、世界的に債券安が広がっている現状について、「長期金利が速いスピードで上昇していると認識している」と述べた。中東情勢を背景にしたインフレ懸念の高まりや、国内の物価情勢の見通しなどが影響しているとの見方を改めて示した上で、「政府と緊密に連携していきたい」と語った。
19日に発表された日本の1-3月期の国内総生産(GDP)統計については、日銀の見通しとおおむね一致していると評価した。また、エネルギー価格の上昇については、「影響が徐々に出てきている」として、企業短期経済観測調査(短観)などを踏まえて、「川上から川中にかけての価格転嫁がやや速めと思っている」との見方を示した。
中東情勢の混乱が早期に収束する見通しが立たない中、高市早苗首相は補正予算を含めた対応を片山財務相に指示したが、債券市場では18日、新発30年国債や40年債の超長期金利が過去最高に達した。
投資家は、金融緩和を志向する首相が利上げを容認するかを注視している。ベッセント氏は昨年、日銀にインフレ抑制に取り組むための裁量の余地を与えるよう、日本政府に呼び掛けている。今回の発言も従来の主張に沿うもので、適切な金融政策運営を継続すれば、円相場は適正な水準に落ち着くとの考えを反映している。
金利スワップ市場が織り込む6月の日銀金融政策決定会合での利上げ確率は足元で78%程度まで上昇している。
ベッセント氏は19日のロイター通信とのインタビューで、植田氏は「優れた中央銀行総裁だ」と発言。「必要な対応を取るための余地が与えられれば、日本は優れた金融政策を実現すると確信している」と語った。
木原稔官房長官は20日午前の会見で、6月の日銀会合で利上げを決める是非について問われ、「金融政策の具体的な手法については日銀に委ねられるべきだ」と従来の見解を繰り返した。その上で、2%物価安定目標の実現に向けて適切な政策運営を期待すると語った。
イラン情勢により、世界経済の成長とインフレへのリスク懸念が高まる中、G7財務相・中銀総裁会合は、財政支援を過度に拡大しないことなどをまとめた共同声明を採択した。会議では、中東情勢の影響を受けた金融市場の動向や世界的な経常収支の不均衡(グローバル・インバランス)、米アンソロピックの最新モデルを含めた最新人工知能(AI)、重要鉱物などが主な議題だった。

(市場関係者のコメントと背景情報を追加して更新します)
--取材協力:日高正裕.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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