(ブルームバーグ):19日の米金融市場では、S&P500種株価指数が3日続落した。年初来の安値圏から急反発してきた株式相場に高値警戒感が強まった。イラン戦争に伴うインフレリスクを背景に、債券相場は下落(利回りは上昇)した。
米国債利回りは全年限で上昇。30年債利回りは一時、7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して5.195%と、金融危機直前の2007年以来の水準に達した。円は対ドルで7日続落。日米の双方の高官の発言を巡って乱高下したのち、円相場は再び下落に転じた。原油先物は小幅安で取引を終えた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、「債券利回りの上昇は、現在の割高な株式市場にとって依然として問題になる可能性がある」と指摘した。
人工知能(AI)ブームを背景に最高値更新が続いていた半導体分野では、売りが優勢となった。フィラデルフィア半導体株指数は一時3.6%下落する場面もあった。ただ、その後は持ち直し、ほぼ変わらずで終了した。
アンドリュー・タイラー氏率いるJPモルガン・チェースのマーケット・インテリジェンス部門は、「戦術的には引き続き強気を維持しているが、ハイテク株主導で相場が調整する可能性が高まっているため、ポジションを極端に積み増すことには慎重だ」と述べた。その上で、相場下落局面では押し目買いが入る可能性が高いとの見方を示した。
グラナイト・ベイ・ウェルス・マネジメントのポール・スタンリー氏は、債券利回り上昇やインフレ再燃に伴う米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測への懸念が強まり、市場にやや疲労感が見られる中で、半導体メーカーの決算の重要性が高まっていると指摘する。そして、「投資家は、AIを巡る成長ストーリーがなお健在で、現在の高い株価評価を裏付けるだけの売上高成長が続いていることを確認したいと考えている」と述べた。
その上で、「エヌビディアは現在の株価評価を正当化できる内容の決算を発表するとみており、それこそが株式市場が求めているものだ」と指摘した。エヌビディアは20日に決算発表を予定している。
国債
米国債利回りは全年限で上昇。30年債利回りは一時、7bp上昇して5.195%と、金融危機直前の2007年以来の水準に達した。
イラン戦争によるエネルギー価格上昇でインフレ懸念が強まり、米国を含む各国中銀が利上げを迫られるとの見方から、ここ数週間で世界的に国債利回りが急上昇している。さらに、拡大する財政赤字も、投資家に長期債保有の対価としてより高い利回りを求めさせている。
バークレイズのグローバル調査部門会長、アジェイ・ラジャディアクシャ氏は18日付のリポートで、「債務が成長率を上回るペースで増加し、インフレ環境も悪化する一方で、財政改革に向けた政治的な意欲もない」と指摘。その上で、 「長期債に積極的に投資する理由はほとんどみあたらない」と記した。
米国債先物の活発な取引も相場変動を加速させた。とりわけ5年債および10年債の先物契約で動きが目立った。利回り上昇が続く中、複数の大口ブロック取引が行われた。ニューヨーク市場午前の10年債先物の取引高は、直近平均のほぼ2倍に達した。
バークレイズとシティグループのストラテジストは、米30年債利回りが2004年以来の水準となる5.5%を突破する可能性があると顧客に警戒を促している。ブラックロックの調査部門トップは、投資家に対し、米国債を含む先進国の国債の保有比率を引き下げ、株式への配分を増やすよう推奨している。
シティのジム・マコーミック氏は、市場の関心は5.5%に移る可能性が高いと指摘。バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した調査では、回答したファンドマネジャーの62%が、今後1年で30年債利回りが6%を超える可能性があると予想した。
外為
外国為替市場でブルームバーグ・ドル指数は上昇し、6週間ぶり高値を付けた。米国債利回りの上昇を背景にドルが買われた。ドルは主要10通貨(G10)に対して全面高となった。
円は対ドルで7日続落。ニューヨーク時間午後4時28分現在、円は対ドルで前日比0.2%安の1ドル=159円近辺で推移している。
取引時間中は、米国と日本の両方の高官の発言を巡って、値動きが激しくなる場面もあった。朝方には、一時158円67銭まで上昇した後、急速に上げを消して下落に転じた。ベッセント米財務長官の発言に反応する動きとなった。
ベッセント氏は同日、日本銀行の植田和男総裁と会談したとし、植田氏が日本の金融政策を導くことに確信を持っていると表明した。また、「過度な為替変動は望ましくない」とも述べた。
午後には、片山さつき財務相が主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、為替動向について「断固たる措置を取るときは取る」と述べたと伝わると、下げを削った。
ドル・円相場の予想変動率は、依然として低水準圏にある。だが、円安進行や為替介入再開への警戒感を背景に、ドル・円オプション市場では相場急変に備える動きが強まっている。
原油
原油相場は総じて方向感に欠ける中で、小幅安。トランプ米大統領が対イラン攻撃再開をあらためて示唆したが、その意図を見極めたいとのムードが強かった。トランプ氏は前日には予定していた攻撃を中止したと述べていた。
ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=104ドル近辺で引けた。トランプ氏は19日、「戦争をしたくはないが、彼らに再び大きな打撃を与えなければならないかもしれない」と記者団に述べた。
戦争に起因する高いボラティリティーが続く中、こうした発言に市場関係者は慣れてきている。ただ、多くの投資家は、戦闘再開のより確かな証拠が示されない限り、原油のロングポジションを積み増すことには慎重だ。
北大西洋条約機構(NATO)はホルムズ海峡の封鎖が7月初旬までに解除されない場合、船舶の海峡通過を支援する可能性を検討している。原油相場はこの報道が伝わった後、下げ幅を拡大した。
SEBのチーフ商品アナリスト、ビャーネ・シールドロップ氏は「トランプ氏によるこうした口先介入は、以前は相場に強い下押し圧力を与えていた。しかし今では、実態を伴わない限り、その影響力が次第に薄れているようだ」と指摘。
「われわれがみる限り、米国とイランの交渉に実質的な進展はない。双方とも従来の要求を維持している」と述べた。
イランはこれまでのところトランプ氏の要求に屈しておらず、ホルムズ海峡の航行も大部分阻止している。
ペルシャ湾にあるイラン最大の石油輸出拠点カーグ島では、少なくとも10日間にわたってタンカーが確認されていない。米軍による港湾封鎖が、イランへの圧力を強めている実態を浮き彫りにしている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比23セント(0.2%)安い1バレル=104.15ドルで終了した。取引がより少ない6月限は89セント(0.8%)安。6月限はこの日が最終取引日。
北海ブレント先物7月限は82セント(0.7%)安の111.28ドルで終えた。
金
金スポット価格は反落。根強いインフレ懸念を受け、世界の中央銀行が利上げを迫られる可能性があるとの見方が強まった。利息が付かない金は通常、高金利下では投資妙味が低下する。
スポット価格は一時、前日比2.2%下落し、その後やや下げを縮小した。イラン戦争に伴う物価上昇圧力への懸念を背景に、債券売り(利回り上昇)が世界で広がっている。
オーバーシー・チャイニーズ銀行のストラテジスト、バス・メノン氏は、中東情勢を巡る不安定さに加え、原油価格と債券利回りが引き続き金相場への短期的な重しとなる可能性があると指摘した。
その上で、「世界的な政治・経済の大きな変化が今後数年で加速するとみられることを踏まえると、金はなお世界の不確実性に対する有用なヘッジ手段だと考えている」と述べた。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時22分現在、前日比75.64ドル(1.7%)安の1オンス=4491.03ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は46.80ドル(1%)安の4511.20ドルで引けた。
欧州
19日の欧州市場では、英国債が反落。実質金利の上昇で、中期債を中心に売られた。
ドイツ債の利回り曲線はベアフラット化。米国の超長期債利回りは約20年ぶりの高水準に上昇した。
英国の4月の就業者数が低調だったことからイングランド銀行(英中央銀行)の利上げ見通しが一時後退したが、取引終盤には前日比ほぼ変わらずに戻した。20日は取引開始前に、同国の4月のインフレ統計が発表される。
株式は続伸。相次いだ好決算が後押しした。
ストックス欧州600指数は0.2%高で取引を終了。英家電小売りのカリーズは15%高と、昨年9月以来の大幅上昇。通期利益予想の上方修正が好感された。
1-3月の収入がアナリスト予想を上回り、通期業績見通しを引き上げたオンライン証券会社IGグループは11%高と急伸し、過去最高値を付けた。
5月19日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Stocks Fall as Fed-Hike Anxiety Lifts Bond Yields: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Fall as Fed Tightening Wagers Grow; Futures Weigh
US 30-Year Yield Hits Highest Since 2007 as Selloff Deepens (4)
Dollar Gains Against G-10 as US Yields Extend Surge: Inside G-10
Oil Creeps Lower as Traders Weigh Trump’s Threats to Strike Iran
Gold Declines as Inflation Fears Fuel Interest Rate Hike Bets
European Stocks Gain on Strong Earnings With Iran War in Focus
Bunds, Gilts Fall as Real Yields Lead Selloff: End-of-Day Curves
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