イランは、米国・イスラエルとの紛争が終結すれば、重要な海上輸送路であるホルムズ海峡の航行は正常化するとの考えを示した。ただ、双方の溝は埋まっておらず、その実現に向けた道筋も見えていない。

トランプ米大統領は中国の習近平国家主席との2日間の首脳会談を終えて帰国した。ホルムズ海峡は再開されるべきだとの認識で両首脳は一致したものの、その実現に向けた具体的な進展は見られなかった。

イランはホルムズ海峡への支配を緩める姿勢をほとんど示しておらず、戦争終結後も一定の統制を維持したい考えを示している。イランによるペルシャ湾での船舶への威嚇は、産油地域からの輸出をほぼ停止状態に追い込み、エネルギー価格を急騰させるとともに、対米協議でイラン政府に大きな交渉力を与えている。

イランの政府系メヘル通信によると、ペゼシュキアン大統領は「現在の不安定な状況が解消されれば、ホルムズ海峡の航行条件は当然正常に戻る」と述べた。

同大統領は、国際法の枠組みの中でイランはホルムズ海峡における効果的かつ専門的な監視・管理体制を導入すると述べたが、詳細には触れなかった。紛争の外交的解決に引き続き取り組む姿勢も示した。

中国国営新華社通信によると、王毅外相は15日、可能な限り早期にホルムズ海峡の航行が再開されるべきだと述べた。米国はイランによる船舶航行妨害への対抗措置として、同国の石油輸出を封鎖。経済的生命線を断つことで、イラン側に米国の和平条件受け入れを迫っている。

トランプ氏と中国の習近平国家主席の14、15両日の会談で、米中は中東紛争を巡る一致点を強調しようと努めた。もっとも、中国は同盟国イランに対する米国・イスラエルの攻撃を繰り返し批判しており、米中は実質的に対立する立場にある。

米中首脳会談について語るトランプ大統領

トランプ氏は中国からの帰路、イラン産原油を購入する中国石油会社への制裁解除の可能性について習氏と協議したことを記者団に明らかにした。米財務省は、イランとの協議で同国への圧力を強めるため、過去数週間に制裁を強化。一方、中国政府は国内企業に対し、制裁を無視するよう指示している。

トランプ大統領は、大統領専用機「エアフォースワン」の機内で、制裁解除を検討するかとの記者団の質問に対し、「今後数日以内に判断するつもりだ」とコメント。「その件について協議した」と語った。

トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、今週ホルムズ海峡を通過した中国のタンカー3隻がイラン産原油を積載していた件について、米国が容認したためだと説明した。これに先立ち、イラン国営テレビは革命防衛隊海軍当局者の話として、13日夜以降、30隻余りの船舶にホルムズ海峡の通航を認めたと報じていた。

ホワイトハウスは難しい対応を迫られている。11月の中間選挙を前に、ホルムズ海峡を再開し、世界のエネルギー価格を引き下げるとともに、国民の支持を失いつつある紛争をどのように縮小させるかが課題となっている。

現物原油市場もここ数日で再び引き締まっており、世界の石油市場で広がる供給逼迫(ひっぱく)を改めて浮き彫りにしている。

北海ブレント原油先物は戦争開始以降、約50%上昇。トランプ大統領の中国訪問でもホルムズ海峡再開に向けた具体的な進展が見られなかったため、市場では米国とイランの軍事衝突が再びエスカレートすると懸念されている。

パキスタンのナクビ内相は16日にテヘラン入りし、イラン側のカウンターパートと会談した。準国営タスニム通信によると、両者は2国間関係に加え、パキスタンが主な仲介役を担ってきた米国とイランの和平交渉再開の可能性について協議した。

今週は船舶航行がわずかに回復したが、船主側が慎重な姿勢を維持しており、その動きは弱まっている。

ブルームバーグ・エコノミクスの防衛問題担当、ベッカ・ワッサー氏は15日のリポートで「交渉は行き詰まり、散発的に交戦が発生し、ホルムズ海峡閉鎖の長期化の経済的コストは増大している」と指摘。「攻撃再開の脅しは続いており、現状維持はますます持続不可能になっている。BEは軍事衝突への回帰の公算が大きいとみている」との分析を示した。

短期的な合意に向けた現実的な可能性は、イランが保有する高濃縮ウラン備蓄を巡る協議を先送りすることに限られそうだ。トランプ大統領はイランの核開発計画を戦争の主な正当化理由として挙げているが、双方ともこの問題は後の段階で扱うべきだと示唆している。

イランのアラグチ外相は15日、インドでの記者会見で、高濃縮ウラン問題について「非常に複雑だ」とし、イランとして「米国側と交渉後半まで先送りするとの結論に達した」と説明した。

一方、トランプ大統領は大統領専用機内で、「適切な時期」に米軍を派遣し、イランのウランを除去する用意があると語った。ただ、これに先立つFOXニュースのインタビューでは、そのような任務について、実質的な意味合いというより「広報向けの側面が強い」とも述べていた。

昨年6月の米国とイスラエルによる爆撃以降、所在不明となっているイランの高濃縮ウランは、和平合意に向けた多くの障害の一つとなり続けている。

原題:US, Iran Stall on Hormuz Reopening as Oil Supplies Tighten(抜粋)

--取材協力:Josh Wingrove、Patrick Sykes.

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