(ブルームバーグ):ホワイトハウスから数ブロックのオフィスで、元ウォール街関係者のグループが、重要鉱物を巡る中国の支配力の打破を目指し、米国防総省の計画を最前線で進めている。
グループの目標は、電子レンジからミサイルに至る広範な製品に使われるレアアース(希土類)と磁石について、独立した供給源を構築することだ。中国が昨年、供給を一時停止し、トランプ大統領が貿易戦争で譲歩を余儀なくされた事態の再来を防ぎたい考えだ。

このグループは国防総省内で「ディール・チーム6」として知られている。海軍特殊部隊「シール・チーム6」を半ば冗談交じりにもじったものだ。数十億ドル規模の出資、長期的な価格の下限の設定、購入保証、融資などの金融手法を組み合わせた創造的な取引の構築を急いでいる。
バイデン前政権で国家安全保障会議(NSC)の中国担当ディレクターを務めたラッシュ・ドシ氏は、「われわれは緊急事態の段階にある」とし、「純粋な市場メカニズムの手法で進めた方が良かったのではないかと考えている時間的余裕はないとの感覚だ」と説明した。
中国が数十年かけて築き上げたレアアース事業支配に対抗することは、米国の長年にわたる目標だが、成果は限られてきた。国防総省のこのグループによる最も楽観的な見通しでも、米国の生産拡大には少なくとも2020年代末までかかるとみられている。

このグループによる積極的なディール推進は、過去10年間の米国の対応とは一線を画すものだ。米国はこれまで、中国向け輸出の制限や中国企業による米国内取引の阻止、中国のスパイやハッカーの摘発に重点を置いてきた。
同グループの正式名称は経済防衛ユニット(EDU)で、海底データケーブルや医薬品製造に必要な化学物質など、脆弱(ぜいじゃく)な分野にも新たな手法を適用する計画だ。
一部の業界関係者は、国防総省が取引を急ぐあまり、実績のない企業を支援し、利益相反の可能性を見過ごしていると警告。また、目標は非現実的であり、政府主導の手法が資金獲得を目的とした企業側の能力誇張を助長しているとも指摘する。
保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のシニアフェロー、デレク・シザーズ氏はトランプ政権について、「独立したサプライチェーンを構築することよりも、財務上の利益を目的に意思決定を行うと事実上公言している」との見方を示した。

国防総省はこうした批判を否定している。パーネル報道官は同省として、「厳格な中立性を維持し、兵士に直接利益をもたらす解決策を優先している」とコメント。「われわれは提携候補となる全企業に対して厳格な審査手続きを実施しており、各社が約束した能力や掲げた内容を実際に提供できることを確認している」と話した。
国防総省の同グループは、今後3年間で2000億ドル(約31兆7000億円)の資金力を確保しているとする。ただ、こうした取引推進策が政府投資に関する法律とどのように整合するのかを巡っては疑問が残っている。
上院軍事委員会のウィッカー委員長(共和)は2月の公聴会で、特に出資案件の急増を規律する法律は「現時点ではほとんど存在しない」と指摘。同氏は議会との連携強化を求めた。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)によると、レアアースは使用量自体は少量にとどまるものの、最大1兆2000億ドル規模の付加価値生産を支える重要資源となっている。
トランプ政権は、30年までに世界需要の半分を賄える規模の磁石生産能力の確立を目指している。国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国は24年時点でレアアース磁石の94%を生産していた。

EDUの設立は4月だが、現在の取り組み自体はトランプ政権2期目発足初期にさかのぼる。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の米サーベラス・キャピタル・マネジメント共同創業者で資産家のファインバーグ国防副長官の指揮下で、EDUは国防総省内の他部門や商務省、米国際開発金融公社(DFC)などの機関と連携し、各種取引の組成を進めている。
中国が昨年、トランプ政権の関税措置への報復としてレアアースや磁石の供給制限を開始すると、その影響はほぼ即座に顕在化し、自動車メーカーなど大口ユーザーは生産停止を余儀なくされる可能性があると警告した。中国はその後、対中関税や中国向け技術輸出規制の一部緩和に米国が同意したことを受け、制限を緩和した。

トランプ政権はそれ以降、レアアースを用いる永久磁石について、中国に依存しないサプライチェーン構築を急いできた。
ファインバーグ氏は昨年7月には、米国唯一のレアアース生産企業であるMPマテリアルズとの取引を主導した。この合意には4億ドルの出資が含まれ、現代の国防総省史上初の事例となる。
これにより、米政府は同社の筆頭株主となる。国防総省はまた、同社の一部レアアース製品の価格に下限を設定し、新設施設で生産される磁石について、10年間にわたり防衛・民間顧客が全量を購入することを保証した。
その後、国防総省はレアアース磁石の生産を手掛ける米バルカン・エレメンツとリエレメント・テクノロジーズにそれぞれ6億2000万ドル、8000万ドルの条件付き融資パッケージを供与することで合意するなどした。

批判派は、国防総省が汚職や利益相反の有無について十分な審査を行っていないと非難。具体的には、サーベラスが同省の投資対象と同じ分野で主要プレーヤーとなっている点を指摘しているほか、トランプ氏の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア氏がバルカンに投資した企業のパートナーを務めていることも問題視している。

国防総省の報道官は、ファインバーグ氏について「誠実な人物であり、キャリアを通じて倫理的に行動してきた」と説明。ファインバーグ氏は連邦政府の倫理規則に従うため、就任後に自身の事業の持ち分を売却した。
トランプ・ジュニア氏の報道担当者は同氏について、ファンドを通じた形でのバルカンへの受動的投資家に過ぎず、「投資先や助言先企業を代表して連邦政府と接触することは一切ない」とコメントした。
国防総省の考え方に詳しい関係者の話では、EDUは取引当時、トランプ・ジュニア氏の持ち分を把握していなかった。審査過程で表面化しないほど小規模だったためだとしている。この関係者は、仮に持ち分を把握していたとしても、バルカンのような事業を手がける企業は多くなく、同省としては市場の現実に対応する必要があると話した。
BEのエコノミック・ステートクラフト担当アナリスト、クリス・ケネディ氏はEDUに関し、「彼らが支援しているのは、防衛面のニーズを補強するだけでなく、広範な産業基盤を支えることを目的としたプロジェクトだ」と指摘。それは過去には「ほぼ不可能」だったと述べた。
原題:Pentagon’s ‘Deal Team Six’ Takes Aim at China’s Rare Earth Power(抜粋)
--取材協力:Joe Deaux、Gabrielle Coppola.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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