「理論」から「現実」へ変わったサイバーリスク
しかし、光があれば影もあります。
一部では無権限のユーザーがモデルにアクセスしているという報告もあり、セキュリティー対策における初歩的なミスが露呈しています。
これまでAIの脅威は多分に「理論上の話」として語られてきましたが、ミュトスの登場によってその脅威は現実のものとなりました。
ミュトスが悪意のある者の手に渡れば、人類がかつて経験したことのない深刻なサイバーリスクを招く懸念があります。

事態を重く見た米財務省のベッセント財務長官と連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、ウォール街のトップを緊急会議に招集しました。
非公式ながらも、その要旨は「手遅れになる前に、銀行は今すぐ(ミュトスを用いた)テストを始めるべきだ」という、危機感に満ちたものでした。
毎日数兆ドルもの巨額資金が流れる銀行ネットワークにおいて、ミュトスの能力は諸刃の剣となります。
このモデルは、あらゆるブラウザやシステムの脆弱性を特定できる力を秘めています。
私たちが日常的に使うネットサービスやiPhone、AndroidのOS、そして銀行が長年放置してきた古いインフラの欠陥やバグを、自律的に見つけ出してしまうのです。
さらに恐ろしいのは、ミュトスがバグを見つけるだけでなく、それを悪用する方法まで熟知している点です。
高度なスキルを持たない者でも、短時間かつ低コストで大規模な攻撃を実行できる可能性が出てきました。
かつて国家が多額の資金と歳月をかけて組織した精鋭ハッカー軍団の役割を、このAI一つが代替できてしまうのです。
このリスクは米国に留まらず、カナダやイギリスの中央銀行も、企業を集めて協議を開始するなど、世界的な緊張が高まっています。