(ブルームバーグ):ウォール街では11日午前、米グーグル親会社のアルファベットによる総額170億ドル(約2兆6830億円)の大型社債発行の最終調整を銀行団が進めていた。そのさなかに、同社が追加の社債発行に動いているとの情報が広がり始めた。
今回は円建てだ。アルファベットの幹部は東京の投資家とオンラインで接続し案件を売り込むため、夜通し対応した。その前の週はユーロ建てとカナダ・ドル建て、その数カ月前にはドル、ポンド、スイス・フランの各通貨建てで起債していた。
円建ての発行が完了すれば、同社の調達額は4カ月間で総額600億ドル近くに達する見通しで、企業による借り入れラッシュとしては過去最大級の規模となる。
資金調達の規模は、創業から最初の26年間でアルファベットが発行した社債総額の4倍に達するなど突出している。
さらに、世界各地の市場を活用する手法も相まって、同社は2030年末までに約5兆ドルの費用が見込まれる人工知能(AI)投資競争の最前線に立っている。テクノロジー企業はこれまでに、AI関連支出を賄うため、米投資家向けに計3000億ドル超の社債を発行している。
ウォール街の複数の銀行関係者は、資金調達コストの急上昇を招かずに、こうした巨額資金の調達を米国内だけに依存することはできないとして、各社が順次アルファベットに追随し、国外市場での起債に踏み切るとの見方を示す。
既にストレスの兆候も顕在化しつつある。テクノロジー株が上昇を続け、主要株価指数を押し上げる一方で、同セクターの社債リターンは投資適格級市場全体のリターンを下回っている。
カナダロイヤル銀行のプロジェクトファイナンス部門グローバル責任者、ナンダ・カマット氏は「実際のところ、これほどの資金需要に対応するには市場の厚みが不可欠で、利用可能なあらゆる流動性の源泉にアクセスせざるを得ない」と指摘した。同行は先週、85億カナダ・ドル(約9790億円)のアルファベット債発行を主導した。
米国以外の債券市場にとっても、こうした案件は混乱要因となる可能性がある。クラウドサービスを提供する「ハイパースケーラー」が世界各地で資金調達の機会を求め、外貨建て市場で社債発行の波が広がれば、自国市場で安定的に資金を調達してきた企業を圧迫するリスクがあると、一部のアナリストや投資家は警告している。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツの米投資適格級リサーチ責任者、ジム・フィッツパトリック氏は「これだけAI関連の起債が増えると、どの時点で社債が過剰になるのか考えさせられる。失敗に終わる案件を手がけたい者はいない」と話した。
こうした世界的な流動性を取り込む必要性は、今週のアルファベットの円建て社債発行の動きで鮮明となっている。前例のない8本立ての起債を実現するため、銀行団は24時間態勢で対応している。
15日にも発行条件を決定する見通しで、アルファベットにとって今年だけで新たな通貨での起債は4回目、全体では6回目となる。最終的な発行規模次第では、同社は半年間の企業による資金調達として、アンハイザー・ブッシュ・インベブを上回り、過去最大規模となる可能性がある。
野村証券の荻野和馬シニア・クレジット・アナリストは、日本のクレジット市場にとって画期的な動きが起きているとみている。
「これまではAI関連でのブームは海の向こうで起きていて、直接関係ないと思っていた日本の投資家が、米国のハイパースケーラーが出てきたことで新たな投資判断をするということが起きてきた」とし、市場に新たな息吹が生まれていると述べた。
その上で、利益水準が高く「勝ち組」となる企業への需要はあるとして、今後も米企業による円債発行という動きが広がる可能性があるとする。
また、これまでこうした高い収益性の企業は借り入れの必要がなかったが、「AI関連の投資競争に直面し、先行した企業が勝ち残り、最後の勝者が総取りするということで、ドルだけでなく調達を拡大している。円も分散先の一つとして必要になってきている」と説明した。
原題:AI Bond Binge Overwhelms Wall Street, Pushing Alphabet Overseas(抜粋)
--取材協力:間一生、Michelle Cheng、Dan Wilchins、Yue Qiu、Michael Gambale、Ronan Martin、Chunzi Xu、日向貴彦.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.