デジタルカメラやゲーム機といった日本の民生電子機器株の低迷は、メモリー価格の上昇が世界の電機業界にとって大きなリスク要因になる可能性を示唆している。

人工知能(AI)インフラへの旺盛な需要を背景にメモリーチップがハイパースケーラー(大手クラウド事業者)に優先的に振り向けられ、家電やゲーム機メーカーは重要部品の確保に苦慮している。キヤノンや任天堂といった優良銘柄も業績の下振れを受け足元の株価は市場平均を下回っており、ストラテジストからは一段の下落を見込む声も上がる。

任天堂の「スイッチ2」

「在庫を積み増す余力に乏しいメモリーチップの顧客は、既にインフレ環境にある日本市場でさらなる利益率圧縮に直面する」と、ヴァンエックのクロスアセット投資ストラテジスト、アンナ・ウー氏は予想。「民生用テクノロジー分野は魅力に欠ける」との見方を示す。

電子機器メーカーへの圧力は、AIブームによって株式市場が二極化している現状を浮き彫りにしている。需要拡大を背景に半導体メーカーの株価が過去最高値圏へと上昇する一方、その下流に位置する顧客企業は上昇局面から取り残されている。

こうした現象は世界の民生機器セクターに広がっているが、とりわけ韓国などの競合企業に市場シェアを奪われてきた日本メーカーへの打撃は大きい。

岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは、日本のテクノロジーセクターはAIの勝者と敗者で完全に分断されていると指摘。これほど急速にメモリー価格が上昇している中で、投資家が任天堂といった民生機器株の購入に慎重になるのは当然だと話す。

ブルームバーグの集計データによると、今決算シーズンの説明資料で東証株価指数(TOPIX)採用企業が「メモリー」に言及した回数は前年同期比で9割超増えた。多くの企業が利益率の低下や業績見通しの下方修正の理由としてコスト上昇を挙げている。

キヤノンの株価は4月、今期(2026年12月期)営業利益見通しの引き下げを受けて約1年ぶりの大幅安となった。家電のシャープやプリンターのブラザー工業、自動車製品メーカーのJVCケンウッドなども決算でメモリー高騰のリスクに警戒感を示した。これらの銘柄はいずれも年初来の株価騰落率が日経平均株価を下回っている。

メーカーは製品価格の引き上げでコスト上昇を相殺できる可能性もある。任天堂は先週の決算発表で新型ゲーム機「スイッチ2」の値上げを発表した。メモリーや原材料費の上昇による収益への圧力を認めた形だ。

ただ、ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、マイケル・パクター氏はイラン情勢を背景としたインフレで消費者の購買意欲が鈍る中、値上げはリスクを伴うと警告する。「家計が圧迫される中で、部品コストの上昇が追い打ちをかけている」として、民生機器メーカーは苦しい立場にあると分析している。

任天堂が値上げと同時に示したスイッチ2の販売見通しは弱い内容だった。同社の株価は年初来で3割超下落し、月間ベースでは16年以来の長期下落局面にある。

ヴァンエックのウー氏によれば、メモリー供給の逼迫(ひっぱく)は当面解消しそうにない。「少なくとも年内は世界のメモリー需要が減少するシナリオは想定しにくい」と同氏は指摘。年後半にかけてメモリーメーカーや半導体セクターは株高が続く余地がある一方、民生機器やゲーム関連株はさらなる圧力に直面する可能性があると述べた。

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