米下院の中間選挙で注目されるのは、民主党が白人労働者階級の選挙区で大きく勝てるかどうかだ。トランプ大統領の2期目に対して労働者は不満を強めており、民主党には長らくなかった好機が訪れている。

「民主党が白人の非大卒有権者を取り込む上で、恐らく過去20年で最大の好機だ」と、民主党の下院多数派奪還を支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)「ハウス・マジョリティーPAC」のマイク・スミス代表は述べた。

筆者は昨年、ブルームバーグのキャロライン・シルバーマン記者と共に435の下院選挙区を4つに分類した。基準としたのは、白人住民の割合と、その白人住民のうち4年制大学を卒業して学位を取得した者の割合だ。

そこで共和党が最も議席を獲得していたのは、全米平均よりも白人有権者の比率が高く、その白人のうち大卒者の割合が低い選挙区だった。このカテゴリーの選挙区で共和党は圧倒的に強く、それが同党の下院支配をもたらした。

こうした選挙区を「ポピュリスト的周辺地域(Populist Periphery)」とわれわれは名付けた。このカテゴリーの選挙区では、共和党が140議席を取っているのに対し、民主党はわずか18議席に過ぎない。しかし2009年ごろまで、ポピュリスト的周辺地域の議席の45%近くは民主党が占めていた。

民主党が下院で過半数を奪還するために必要なのは、わずか3議席の純増でいい。選挙区の区割り変更を巡って最近の激しい動きが見られてはいるものの、高学歴層が多い、あるいは人種的に多様な選挙区で共和党から議席を奪えば、過半数は達成可能だろう。

だが、そのカテゴリーの選挙区で勝つだけでは、安定的な、ましてや持続的な多数派を築くことはできない。理由は単純だ。民主党はすでにこうした選挙区の多くを取っているため、共和党から奪える有力な議席があまり残っていない。

従って、民主党にとって11月が単なる良い結果となるのか、それとも最高の結果となるのかを分けるのは、ポピュリスト的周辺地域となる公算が大きい。

民主党はこうしたカテゴリーにある選挙区で共和党が保持する議席のうち、アイオワ、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどで20数議席の奪取を狙う。

ポピュリスト的周辺地域はまた、民主党にとって最も重要な防衛線でもある。共和党はこうした選挙区で民主党が持つ議席の半数を奪おうとしている。

2024年の大統領選挙では、民主党が今回狙っているポピュリスト的周辺地域の全ての選挙区、さらには民主党が守ろうとしている選挙区の大半で、トランプ氏が勝利した。だが、同氏の2期目に対する白人労働者層の支持は後退し、民主党に新たな突破口が開かれている。

家計不安

出口調査によれば、過去3回の大統領選の全てで、トランプ氏は大卒の学位を持たない白人有権者の3分の2の票を得ていた。しかし、最近行われた全国的な世論調査の約6件で、こうした層におけるトランプ氏の支持率が約50%にまで低下したことが明らかになった。

この層の有権者は、生活費の負担増という、トランプ氏に何よりも増して解決を期待した問題が緩和されたとは考えていない。

むしろ、トランプ氏の経済政策は助けになったどころか、自身の状況を悪化させたと話す白人労働者がはるかに多い。関税、連邦医療プログラムの削減、イラン戦争はいずれも、労働者階級の強い反発に遭っている。

ニューオーリンズ元市長で、労働者階級の意識を調査する民主党の研究プロジェクトを率いるミッチ・ランドリュー氏は、あらゆる人種の労働者階級に共通する見方は「自分は取り残され、自分の生活を良くするために使われるべき金で誰かが裕福になっている」というものだと指摘した。

こうした選挙区の多くで、民主党は下院選の候補に文化的には穏健で経済的にはポピュリストと党の戦略家が評する候補を擁立した。ペンシルベニアでは労組幹部の消防士、オハイオでは鉄工労働者を候補に指名。ウィスコンシンの有力候補はウェイトレスだった経歴を強調している。

11月に重要となるのは、社会問題を中心に民主党に根強い不信を抱く労働者層に対して、これらの候補者が党のイメージと自身を切り離すことができるかどうかだろう。

高学歴のない白人の間におけるトランプ氏の支持急落を示した最近の調査の一つでは、同時にその約3分の2が民主党を「リベラル過ぎる」と考えていることも明らかになった。世論調査では、白人労働者層は国境管理について依然としてトランプ氏の評価が高く、移民政策では民主党よりも共和党を信頼しているとの回答がはるかに多い。

ペンシルベニアを拠点とし、24年のトランプ氏の選挙運動に関わった共和党コンサルタントのジョン・ブラベンダー氏は、労働者層に民主党を嫌悪する理由を思い起こさせれば、票は共和党に戻ってくると予測する。

「まだ誰も相手側に対する攻撃を本格化させていない」と同氏は述べた。共和党にとって最大の課題は、24年に大挙してトランプ氏支持に回った労働者層を再び活気づかせ、今年の選挙で共和党候補に投票させることだと主張した。

一方のランドリュー氏ら民主党関係者の多くは、家計不安が広がっている今年は政党文化的な闘いを呼びかける共和党の主張が強い反響を呼ぶことはないと楽観している。労働者層は「腹を立て、裏切られたと感じている。その場合、怒りの矛先は現職に向く」とランドリュー氏は述べた。

この強い不満は、これまで閉ざされてきた労働者層への扉をこじ開ける強力なてこになる。もし、これでも民主党がこれらの選挙区で勝つことができないなら、どうすればそれが可能になるのか、もはや分からない。

(ロナルド・ブラウンスタイン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、政治と政策を担当しています。CNNのアナリストでもあり、これまでに7冊の著書を執筆または編集しています。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:Trump Is Losing Exactly the Voters He Needs: Ronald Brownstein(抜粋)

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