プライベートクレジット(ノンバンク融資)はここ数年、「ジャンク(投機的格付け)」債革命の最新形態として脚光を浴びてきた。この革命は1980年代にマイケル・ミルケン氏のドレクセル・バーナム・ランバートで始まり、レバレッジドローンという広大な世界を生み出した。

当時も今も、その中核にある考え方は、債務を抱える企業向け高利回りローンは全体で見ればリスクがそれほど高くなく、長期的にはリターンの上乗せをもたらすというものだ。

ただ、カリフォルニア州ビバリーヒルズで今週開かれたミルケン研究所のグローバルカンファレンスで金融関係者が口にした言葉は、「革命(revolution)」というより「再評価(revaluation)」だった。

1兆8000億ドル(約282兆円)規模のプライベートクレジット市場が投資家からの信頼危機に初めて直面する中ではもちろん、弱小プレーヤーをターゲットとするチャンスについても取り上げられた。

ブラックストーンのクレジット・保険部門グローバル責任者ジル・デラート氏は「一部の債務は再編が必要になる」と予想。「大手スポンサーは成功するだろうが、そうでないところもある」と率直に述べた。同社は世界最大のオルタナティブ資産運用会社だ。

プライベートクレジットが最大級の試練に直面している理由とは

参加企業の幹部らがパネル討論で強い関心を示したのが、ブラックロック傘下HPSインベストメント・パートナーズの創業パートナー、プルニマ・プリ氏が「プライベートクレジットにおける全面的な個人投資家の撤退」と表現した動きが生む機会だ。

投資家は今年、プライベートクレジットの投資商品から約200億ドルを引き揚げようとしている。引き受け基準やローンの質に加え、人工知能(AI)の進展により、新型コロナ禍後のブーム期にファンドから借り入れを膨らませたソフトウエア企業が壊滅的な打撃を受ける可能性を懸念しているためだ。

テクノロジー特化型プライベートエクイティー(未公開株、PE)投資会社のトーマ・ブラボーにとっては、逆張りの好機だ。他社が投資家を安心させるため保有を減らそうとするソフトウエア分野に倍賭けする方針だ。

トーマ・ブラボーのパートナーでクレジット責任者を務めるジェフ・レヴィーン氏は4日、「われわれはほぼ全社のバランスシートを精査し、投資可能な案件を一つ一つ見ている。特にソフトウエア分野では、われわれに最も優位性がある」と述べた。

陳腐化リスクの低いハード資産に投資する「HALO(Heavy-Asset, Low Obsolescence=重厚資産・低陳腐化)」戦略を取り入れる運用会社もある中で、AIインフラブームへの投資も話題になった。

アポロ・アセット・マネジメントのジョン・ジト共同社長は、「資産を厚くすることこそが、プライベートクレジットの魅力的な部分だ」と述べた。

ジト氏によれば、「本当の魅力」は、データセンター建設資金を支援するため、より安全な投資適格級のローンを提供する機会にある。

これは、プライベートクレジット業界の特徴として最もよく知られる戦略、つまりリスクが比較的高い企業に直接融資する手法とは対照的だ。

より安全な格付けのプライベートクレジットの方が、この資産クラスの急成長をここ数年支えてきた富裕層投資家に適しているのではないか、との見方も一部で出た。

一方で、そもそも個人投資家が資金を長期引き出せない商品に投資すべきかを疑問視する声もあった。運用担当者らは今年これまでの経緯を踏まえると、この資産クラスに「半流動性(semi-liquid)」という言葉は最適ではないとのコンセンサスに至った。

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は6日、「半流動性というのは、かなり悪魔的な名前だ」と述べ、「資金が不要なときは流動的で、本当に必要なときには非流動的になる」と説明。「ここで損失を被る人々が出る」と警告した。

ゲッコーの独白

ミルケン氏は1980年代に頭角を現した。ウォール街が繁栄した時代だ。株式市場は活況を呈し、モーゲージ債市場が花開き、レバレッジド・バイアウト(LBO)は一大ビジネスとなった。利益が増えるにつれ、バンカーらは自信を強めた。

当時著名な裁定取引家だったアイバン・ボウスキー氏は1986年、カリフォルニア大学バークリー校ビジネススクールの卒業式で、「ところで、強欲は問題ない」と語ったことで有名だ。「そのことを知っておいてほしい。強欲は健全だと思う。強欲であっても、自分自身に満足することはできる」と付け加えた。

その後間もなく、同氏はインサイダー取引で訴追された。オリバー・ストーン監督の映画「ウォール街」(1987年)では、ボウスキー氏の発言が、マイケル・ダグラス演じる企業乗っ取り屋ゴードン・ゲッコーの独白に影響を与えた。

ゲッコーは「要するに、皆さん、ほかに良い言葉がないので言えば、強欲は善だ」と述べた。「強欲は正しい。強欲は機能する。強欲は物事を明確にし、切り込み、進化の精神の本質を捉える」と言い放った。

今年のミルケン会議では、米証券取引委員会(SEC)のアトキンス委員長がプライベートクレジット会社における不正疑惑をSECは調査していると出席者に語った。SECは米財務省や米連邦準備制度理事会(FRB)と共にこの業界を監視している。

シカゴに本社を置き約910億ドルを運用するGCMグロブナーのフレデリック・ポロック最高投資責任者(CIO)は、多くの企業の考えを代弁した。

資産価値に広範なシステム上の問題はないものの、ソフトウエア融資のように人々が安全だと考えていた一部の投資が、そうではないことが明らかになりつつある。従って、これらについては「適切な再評価」が必要だ。

原題:Private Credit’s Birthplace Gives New Rise to 1980s-Style Greed(抜粋)

--取材協力:Aaron Weinman、Rene Ismail、Dan Wilchins.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.