中国は企業に対し、米国の制裁を無視するよう命じた。前例のない対抗措置で、世界の二大経済大国の緊張が高まる中、中国の銀行セクターが板挟みとなる恐れがある。

中国はこれまでも一方的な制裁を批判し、その正当性を否定してきたが、自国経済への影響を回避し、米金融システムへのアクセスを維持するため、大手企業には制裁に従うことを事実上容認してきた。

トランプ米大統領と習近平中国国家主席の会談を数週間後に控える中での今回の発表は、中国政府のより強硬な姿勢を示すものだ。中国政府はイラン産原油取引に関係する民間精製業者に対する米制裁に従わないよう企業に指示しており、先月制裁を受けた恒力石化などが対象となる。

中国共産党の機関紙、人民日報のアプリに掲載された論評は、今回の発表を「重要な一歩」と位置付けた。

今回の措置は、ロシアやベネズエラ、イランを巡る制裁で米政府の対応が揺れる中、既に圧力がかかっている米制裁システムを試すことになる。トランプ政権の対イラン政策により米国の信頼性が揺らいでおり、中国は自国の経済システムの重要部分を守るとともに、経済的な対抗手段を拡充する機会を捉えた形だ。

中国はレアアース(希土類)から、最近ではテクノロジー分野まで、他の対抗手段の活用を段階的に強めている。先週にはメタ・プラットフォームズによる人工知能(AI)スタートアップ、マナスの20億ドル(約3140億円)での買収を、取引成立後に阻止した。

シンガポール国立大学のジャ・イアン・チョン准教授(政治学)は「できるだけ多くの手段を持とうとしている」と述べ、「今回の措置は統制強化の文脈で捉えるべきで、一時的なものではない」との見方を示した。

中国は不当とみなした外国の法律から自国企業を守るために2021年に導入したブロッキング措置を発動している。恒力石化や、その他の民間系精製業者は資産凍結や取引禁止に直面していた。

恒力などの民間精製業者と取引関係にある金融機関は、今回の決定への対応を急いでおり、銀行規制当局に説明を求めている。今週は中国で祝日が続き業務が停止しているほか、米財務省外国資産管理室(OFAC)が設けた猶予期間もあるため、一定の時間的余裕がある。

ブロッキング措置が首脳会談を頓挫させる可能性は低いものの、米国の対応次第で事態がエスカレートするかが左右されると、ユーラシア・グループのアナリストは指摘する。

ドミニク・チウ氏らはリポートで「これらの精製業者は主に、まだ直接制裁を受けていない中国の銀行と取引している」と述べ、「米国がこれら金融機関や主要な国有企業に二次制裁を拡大すれば、中国はより強力な対抗措置を講じる可能性が高い」と分析した。

原題:China’s Rare Sanctions Pushback Leaves Banks Caught in Crossfire(抜粋)

--取材協力:Clara Ferreira Marques.

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