中国はあらゆる手段で台湾に圧力をかけ続けている。そうした威嚇手法に今、ドローン(無人機)という新たな脅威が加わりつつある。

台湾も対抗する必要がある。中国と同等の軍事力を持てない以上、より安価で高性能なドローンに頼らざるを得ない。

台湾のドローン産業が、この戦略の中核を担うことになる。ロシアの侵攻を受けたウクライナは、国内ドローン産業を短期間で育成した。しかし、台湾が空の分野で中国に対抗できる水準に達するまでの道のりはまだ長い。

中国共産党の習近平総書記(国家主席)は5月半ばに予定している北京でのトランプ米大統領との会談を前に、台湾への圧力を一段と強めている。台湾外交部(外務省)の呉志中政務次長は4月下旬、トランプ氏が台湾を巡り危険な妥協を受け入れる可能性に懸念を示した。

台湾政府が危惧するのも無理はない。頼清徳総統の外遊計画が急きょ変更になった。頼氏は台湾と正式な外交関係を持つ12カ国の一国、アフリカのエスワティニを4月に訪れる予定だった。

台湾政府によれば、中国が搭乗機の飛行ルートに当たるセーシェル、マダガスカル、モーリシャスの3カ国に対し、領空通過許可を取り消すようプレッシャーを加えたという。中国側はこれを否定しているが、国名には言及せずこうした動きを評価した。

頼政権にはドローン計画があるが、規模とスピード、サプライチェーンの独立性が欠けている。これは重要な問題だ。現代の紛争は、安価なシステムを大量投入して相手を圧倒できるかどうかが勝敗を左右しつつある。イランが今回の戦争で、米国に対し効果的に用いた手法がそれを示している。

地対空誘導弾パトリオットや高高度防衛ミサイル(THAAD)といった迎撃ミサイルは400万ドル(約6億円)から1500万ドルのコストがかかる。一方、攻撃用ドローンの中には、そのごく一部の費用で製造できるものもある。中国が珠海航空ショーで公開した「飛竜300D」は1万ドル程度と報じられている。

価格の優位性は、中国がグローバルな「ドローン・エコシステム(生態系)」の大半を支配する理由の一つに過ぎない。中国は主要部品や素材の供給でも中核的な役割を担っており、低コストで大量生産する能力を持つ。さらに再利用も進めている。

米ミッチェル航空宇宙研究所が今年分析した衛星画像によると、中国人民解放軍は旧型の戦闘機をドローンに改造し、台湾海峡近くの空軍基地6カ所に200機以上配備している可能性がある。中国は有事の際、低コストのドローンのスウォーム(群れ)を投入し、台湾のはるかに高価な防空システムを消耗させる戦術を取り得る。

政治的意思

台湾のドローン産業の生産能力は年約1万機にとどまり、2028年までの目標である18万機には遠く及ばない。米国との協力は深化しているものの、生産はボトルネックに直面している。中国に依存しないサプライチェーンの構築には時間がかかり、コストも大幅に増える。

台湾政府は今後数年で20万機以上のドローンを調達すると表明し、ドローンシステムが防衛戦略に不可欠であることを示している。しかし、その進捗(しんちょく)は明らかに不十分だ。

米シンクタンクの新アメリカ安全保障センター(CNAS)が最近まとめたリポートは、台湾は自衛のためにさらに踏み込むべきだと指摘し、空と海上、海中に数千機単位のドローンを展開する「非対称ヘルスケープ(地獄絵図)」の防衛環境構築を提唱している。

その狙いは、中国による侵攻コストを極めて高くし、攻撃を思いとどまらせることだ。台湾は多層的かつ連携したドローン網を大量に配備することで、攻撃側の戦力を混乱させ、消耗させることが可能だ。

この構想は実現可能だが、実行するには、台湾政府が防衛支出の軸足を高価な装備から現地でのドローンの製造・調達へと移す必要がある。少数与党の頼政権では難しいとみられるが、焦点をシフトさせなければならない。

また、ポーランドなどの国々との連携を強化し、中国に依存しない強靭(きょうじん)なサプライチェーンを構築すべきだ。台湾は半導体や製造業で強みを持ち、拡大に必要な特性を備えているが、これらの目標を実現する政治的意思は見えてこない。与野党対立による政治の行き詰まりはすでに防衛支出の進展を遅らせている。

外交面での動機もある。ドローン能力の拡充は、台湾が自らの安全保障により大きな責任を負っていることを示す材料となり得る。これはトランプ氏が長年求めてきたことだ。

大国の侵攻勢力に直面した際の対応例として、ドローンの活用を急速に拡大し、防衛のほぼあらゆる面に組み入れたウクライナが参考になる。2025年には約450万機を生産。これにより侵攻コストが引き上げられ、ロシア軍の進撃を抑制できている。台湾もこの方向に動き始めており、技術交流や生産面でウクライナとの連携を模索している。

中国の戦術が常に成功するわけではない。頼氏は5月2日、エスワティニに同日到着したとSNSに投稿し、世界を驚かせた(頼氏がどのように移動したのか台湾政府は詳細を明らかにしていないが、中国外務省は「エスワティニ国王のプライベートジェット搭乗」と題した声明で頼氏を非難した)。

中国は、妨害はできるかもしれない。だが、台湾の対外関与を完全に遮断することは不可能だ。外交であれドローンであれ、中国は手段を選ばず圧力を強めている。台湾は早急な対応が必要だ。

(カリシュマ・ヴァスワニ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、中国を中心にアジア政治を担当しています。以前は英BBC放送のアジア担当リードプレゼンテーターを務め、BBCで20年ほどアジアを取材していました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:China and Taiwan’s Battle of the Drones: Karishma Vaswani(抜粋)

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