(ブルームバーグ):米連邦地検のピロ検事正が連邦準備制度理事会(FRB)を巡る刑事捜査を打ち切る決定を下したことで、トランプ米大統領の指名候補が中銀トップに就く道が開ける可能性がある。しかし、パウエル現議長がFRBを去ることを確実にするものではない。
パウエル議長は、FRB本部改修費の超過に関連する司法省の捜査について、「透明性と最終的な決着」をもって完了するまでFRBにとどまる考えを示している。今回のピロ氏の決定は調査をFRBの監察総監室に委ねる内容であり、この条件を満たすかは不透明だ。ピロ氏は24日の発表に際し、「事実関係を踏まえて必要と判断されれば、刑事捜査の再開も辞さない」とも述べた。
こうした状況は、トランプ政権からの圧力が続く可能性を示唆しており、後任議長候補のケビン・ウォーシュ氏が上院で承認された場合でも、パウエル氏がFRBにとどまる動機となり得る。パウエル氏の議長任期は5月15日に終了するが、理事としての任期は2028年まで残っている。
ドイツ銀行のシニアエコノミスト、ブレット・ライアン氏は、今回の発表がパウエル氏の引退を促す可能性について「現時点で確実とは言えない」と指摘。「ピロ氏は再捜査の可能性を残しており、それがパウエル氏に理事職退任をためらわせるかもしれない」と語った。
ウォーシュ氏は今週、上院銀行委員会の指名承認公聴会に出席し、共和党議員から幅広い支持を得ている。ただ、有力共和党上院議員(ノースカロライナ州選出)のトム・ティリス氏は、司法省の捜査が打ち切られるまで承認を阻止すると表明している。
ティリス氏は24日のピロ氏の発表以降、公のコメントを出していないが、26日午前にNBCの番組「ミート・ザ・プレス」に出演する予定となっている。
通常、FRB議長は任期終了後に中銀を去る。112年の歴史で任期後も中銀に残った例は1件にとどまる。パウエル氏が残留すれば、トランプ氏が7人で構成される理事会メンバーの1人を新たに指名する機会は失われ、組織改革に向けた同氏の取り組みは制限される。
また、金融政策の重要局面においてFRB内部で影響力の軸が複数生じ、世界最強の中銀を誰が実際に指揮しているのかについて、金融市場や一般の混乱を招く恐れもある。
トランプ氏はこれまで、利下げを速やかに行わなかったとしてパウエル氏を繰り返し批判し、次期議長には迅速な利下げを求める考えを示してきた。ただ、政策金利を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)は12人で構成され、ウォーシュ氏が承認された場合でも、同氏の票は1票にとどまるため、他の委員の支持を取り付ける必要がある。
パウエル氏が理事にとどまる状況では、ウォーシュ氏にとって合意形成は一段と難しくなる可能性がある。特にパウエル氏と見解が一致しない場合、その傾向は強まる。
サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「首都ワシントンの政治の世界では通常の、連携の変化や水面下の交渉のように見えるが、FRBではこれまでにない状況であり、混乱を招きかねない」と指摘した。
原題:DOJ’s Partial Reversal on Powell Probe Keeps Fed Drama Alive(抜粋)
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