ベッセント米財務長官とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、アンソロピックの最新人工知能(AI)モデルを巡り、米銀大手の最高経営責任者(CEO)を招集して緊急会合を開催した。サイバー攻撃リスクが劇的に高まるとの懸念が背景にある。事情に詳しい関係者が明らかにした。

ベッセント、パウエル両氏は7日にワシントンの財務省本部で会合を開き、アンソロピックの「Mythos(ミトス)」および同様のモデルがもたらし得るリスクについて銀行側が認識しているか、またシステム防御に向けた対策を講じているか確認した。非公開の協議であることを理由に関係者は匿名を条件に語った。

CEOの多くは大手金融機関で構成される業界団体、金融サービス・フォーラムの会合出席のため、ワシントンを訪れていた。財務省の担当者はコメント要請にすぐに応じなかった。FRBの報道官はコメントを控えた。

これまで報じられていなかったこの会合は、新種のサイバー攻撃が金融業界にとって最大級のリスクと規制当局が見なしていることを改めて示している。招集された銀行はいずれも主要な規制当局からシステム上重要と分類されており、その安定は世界の金融システムにとって優先課題となっている。

パウエル議長の参加は、懸念がシステミックリスクに関わるものであり、トランプ政権とアンソロピックの対立に起因するものではないことを示唆していると、一部の関係者は述べた。同社は国防総省からサプライチェーン上のリスクと指定されたことを受けて、政府を提訴した。またFRBは検査官のネットワークを通じて銀行業務に精通している。

ミトスは、ユーザーの指示に応じて主要な基本ソフト(OS)やウェブブラウザーの脆弱(ぜいじゃく)性を特定し、それを悪用する能力があるとアンソロピックは説明している。

このモデルがハッカーの手に渡った場合の影響力に対する規制当局の懸念は、アンソロピックの警戒スタンスと一致する。同社は当面、公開対象を一部の大手テクノロジー企業および金融機関に限定している。

対象企業にはアマゾン・ドット・コムやアップル、さらにはJPモルガン・チェースが含まれている。アンソロピックはミトスのサイバー攻撃および防御能力について、最近の限定公開に先立ち米当局と協議してきたとしている。

サイバー攻撃、米銀の大きなリスク

アンソロピックは限定公開にあたり、ミトスがテスト中に脆弱性を特定して悪用できた可能性のある複数の事例を挙げた。いずれも金融機関に特化したものではないが、あるケースではウェブブラウザーに不正侵入し、ハッカーが設置したウェブサイトが別のサイトからデータを読み取れる状態にできたと同社は説明。銀行がデータ流出の被害者になるリスクを指摘した。

同社セキュリティーチームの投稿によると、ミトスは「複数の異なるウェブブラウザー」に保存された情報を読み取る方法について「完全に自律的に発見」し、その上で悪用する手法を見いだしたとしている。

関係者によると、FRBと財務省との会合に招かれたCEOはシティグループのジェーン・フレイザー氏やモルガン・スタンレーのテッド・ピック氏、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハン氏、ウェルズ・ファーゴのチャーリー・シャーフ氏、ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン氏ら。

JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは出席できなかったという。各行の広報担当者はコメントを控えた。アンソロピックの担当者からも現時点でコメントは得られていない。

規制当局は近年、サイバー攻撃や訴訟、社員の不正行為といった業務上のリスクに関連して、一定の資本を保有するよう銀行に求めている。だが、銀行の資本水準に織り込まれる市場リスクや信用リスクなどに比べて、業務上のリスクは測定が難しいため、銀行側がこうした要件に不満を示すこともある。

原題:Bessent Urgently Summons Bank CEOs Over Anthropic’s New AI (1)(抜粋)

(会合の詳細などを追加して更新します)

--取材協力:Lydia Beyoud、Nancy Cook、Josh Wingrove、Katherine Doherty、Yizhu Wang、Shirin Ghaffary.

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